タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

法曹養成制度検討会議,第2回会議 議事録,その2

志願者激減だろうと何だろうと,まずは法科大学院ありきで考えろ,とおっしゃっています。

田中委員

まず,法科大学院志願者が大きく減少しているという,そのことをもって現在の法曹養成の制度そのものが崩壊しつつあるといった意見も出されておりますけれども,この点はやや性急な考え方であると思っております。

法科大学院の実情等については第4回以降の会議で検討されることになりますので,ここでは詳細を述べませんけれども,この社会の様々な領域で法の支配を担う法曹を養成するための社会的インフラとして設立された法科大学院の果たすべき役割が大変重要なものであるという基本的な考え方は,現在も全く変わっていないのではないかと思われます。

この考え方の基本的な方向性の是非といった大きな問題については,制度として導入後わずか8年余りで結論を出せるかというと,そういう性質のものではないと思っております。
http://www.moj.go.jp/content/000103552.pdf


いくら理念が正しくても,現実の結果が良くなければ見直すべきです。
「手術は成功したが患者は死んだ」(物事の本末を取り違えること)というのでは,仕方ないでしょう。
(法科大学院の設置が「手術の成功」にあたるのかも疑わしいですが)

法科大学院の理念は通したが司法は死んだ」とならないことを祈ります。

ところで,前回のエントリーでとりあげた井上委員と,今回の田中委員は,見事にロースクール関係者でした。

監査対象となっている組織の利益代弁者が,問題の改善,対応を話し合う会議に出席すること自体,いかがなものかと思います。

ポジショントーク全開もたまにはいいですが,コトは一国の司法制度の危機にまで至っているので,ロースクールの利益だけでなく,弁護士,学生,潜在的な法曹志願者,さらに利用者である国民のことまで考えて,大所高所の見地から司法制度を良くする対策を考えて頂きたいと願うばかりです。

法曹養成制度検討会議 構成員名簿

1 構成員
【関係政務等】
竹歳 誠 内閣官房副長官
大島 敦 総務副大臣
松野 信夫 法務大臣政務官
武正 公一 財務副大臣
笠 浩史 文部科学副大臣
岸本 周平 経済産業大臣政務官
有識者】 (敬称略)
座長 佐々木 毅 学習院大学法学部教授
(五十音順)
伊藤 鉄男 弁護士(元次長検事
井上 正仁 東京大学大学院法学政治学研究科・法学部教授
岡田 ヒロミ 消費生活専門相談員
翁 百合 株式会社日本総合研究所理事
鎌田 薫 早稲田大学総長・法学学術院教授
清原 慶子 三鷹市
久保 潔 元読売新聞東京本社論説副委員長
国分 正一 医師・東北大学名誉教授
田島 良昭 社会福祉法人南高愛隣会理事長
田中 康郎 明治大学法科大学院法務研究科教授
(元札幌高等裁判所長官)
南雲 弘行 日本労働組合総連合会事務局長
萩原 敏孝 株式会社小松製作所特別顧問
丸島 俊介 弁護士
宮脇 淳 北海道大学公共政策大学院長
山口 義行 立教大学経済学部教授
和田 吉弘 弁護士
【関係機関】
小林 宏司 最高裁判所事務総局審議官
2 オブザーバー
林 眞琴 最高検察庁総務部長
橋本 副孝 日本弁護士連合会法曹養成制度改革実現本部委員
http://www.moj.go.jp/content/000103614.pdf

一方,この会議の中で「インフラ」という言葉を使ったもう1人である松野法務大臣政務官は,以下のように至極まともなことをおっしゃっていました。

「インフラ」だから,とにかく残せ,と「インフラ」だから,実質的に機能するように変革が必要だ,という2つの発言のうち,後者の意見がまともなのは当然です。

松野法務大臣政務官

これは言うまでもなく,司法というのは法治国家の中の非常に重要なインフラでありますので,ここはやはりしっかりインフラを整備するということが必要であります。
例えば,お医者さんであっても,政府の方で一定,ある意味では数はコントロールをするというような仕組みで制度設計をしているわけでありますので,法曹についてもそういう意味できちんとした制度設計というものはやはり必要であって,余りに市場原理に委ねるというのは正直いかがなものかという思いがしております。

しかも,法科大学には相当な額の公費を投じて,それで法曹の養成をしているということであります。
せっかくの公費を投じておきながら,たくさん法曹を生み出すけれども,中には法曹という資格を生かさないで別の職業にたくさん就いてしまうと,こういう結果を生じさせるというのは,せっかく公費を投じておきながら一体何だろうかなということにもなりかねないと思いますので,やはりできるだけ法科大学院の質を高める,法科大学院を卒業するということであれば,ある程度かなりの部分,当時7割,8割という数字も挙がっておりましたが,それくらいの人はせっかくの法曹の道で頑張っていただくということが必要でないかと思います。

ですから,今,現在2,000人ぐらいというのが一つの現実の数字としては出ているわけですので,これはこれで尊重をすべきではないか。