タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

なぜ法科大学院による司法制度改革ができないのか

法務省有識者会議では、法科大学院によって司法制度を改革するなどというとんでもないことが言われています。

しかし、法科大学院による司法制度改革は、現状では進めようとしても進められないのが現実です。

なぜ、法科大学院による司法制度改革を進められないのか、ひろく大勢の皆様と問題意識を共有していきたいと思います。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

本音と建前の乖離

まず、なぜ有識者会議は、破綻しているのが明白な法科大学院による司法制度改革を強引に進めようとしているのでしょうか。

もし、法科大学院をやらないことになると、法科大学院の教授ポストはただのゴミになってしまいます。そうなると多くの学者の職が失われてしまいます。

そのため、法科大学院関係者は、法科大学院の継続を前提とし、司法制度改悪の問題を先送りする道を選び続けてきました。

しかし、そのために莫大なコストを支払って法科大学院の継続する、あるいは継続するふりをしなければなりません。

司法制度改悪の問題と向き合わないために法科大学院制度を継続するという馬鹿なことはやめるべきではないでしょうか。

法科大学院制度が引き起こした司法制度改悪の是正について、逃げずに真正面から徹底的な議論・合意形成を進めることが必要です。

そのためには、法科大学院ありきの議論ではなく、法科大学院の存続を白紙にした場合の議論が必要です。


当初の目的の消滅・二割司法のうさんくささ

そもそも法科大学院制度による司法制度改革は、二割司法と呼ばれる弁護士不足による司法の機能不全の解消が目的でした。その二割司法と呼ばれる状態が実体のないものと分かりつつある今、法科大学院制度を継続する意義はありません。

潜在的な弁護士需要の見込みがなくなる中で、法科大学院関係者は就職できない合格者を法曹有資格者として、弁護士資格のないまま社会へ普及させる方向に転換しました。しかし、問題だらけです。

まず、社会が求めているのは端に資格のある者ではなく実社会で戦力となる法曹であり,そうした法曹有資格者は,前職や他の専門的資格を有するわずかな割合の人たちにすぎません。

残りの新卒同然の法曹有資格者は、そのままでは再利用できません。

ですからほとんど法科大学院修了者のリサイクルにはならないのです。

企業としては,法務部員として,年齢の上がった法曹有資格者を雇うならば、頭の柔軟な新卒の若者を雇って法務部で育ててしまったほうが確実です。


コスト高

法科大学院があると、将来法曹になる法曹の卵に加え、最終的に法曹にならない者に対しても教育を施す追加コストが発生し、国民の負担が増加します。


供給多様性

法科大学院の経済的,時間的な負担により,法曹への道を断念する者は当初の想定よりも多いとみられ、その内訳も社会人、他学部出身者など多様です。仮に供給多様性を図るなら、法科大学院を廃止した一発試験のほうが安価で合理的です。


耐震性

相次ぐ廃校,給費制廃止と貸与制への移行,受験回数制限の緩和,択一試験科目数の変更など,崩壊しつつある法科大学院制度の下では,特に受験生が制度の変更による激震に見舞われています。

これに対して利害関係者が少ない一発試験制度の下では,こうした制度変更による震災は発生しません。


稼働の実現可能性

合格者3000人の目標が廃止され,さらに有識者会議は,今後修了者が3000人となったときに合格者2000人を目指しています。

しかし,現状25%の合格率を66%にするということは,およそ非現実的であり,実現することはないでしょう。
このままでは数年後のさらなる混乱が生じ,合格者数の見直しが議論されることが必至であり、法科大学院制度はいつまでも順調な稼働が見込まれません。

将来的な展望

予備試験制度が法曹志願者にも,弁護士事務所を含んだ社会にも受け入れられている中で、法科大学院制度を推進することは無意味であり、限られた資源を集中するべき対象は給費制の復活のはずです。
 

これでも本当に法科大学院制度やりますか?


元ネタ

河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり なぜ核燃料サイクルはできないのか
http://www.taro.org/2014/03/post-1460.php