タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

一発試験に回帰する法曹養成制度(法科大学院特別委員会(第68回))

プロセスによる教育と一発試験の矛盾

試行段階ではありますが、共通到達度確認試験(仮称)が実施される方向のようです。

法科大学院特別委員会(第68回)配付資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/012/siryo/1357974.htm

資料6-1 共通到達度確認試験(仮称)の試行試験の実施について (PDF:155KB) PDF
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/012/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/05/18/1357974_8.pdf

しかし、プロセスによる教育の中に、一発試験の契機を入れるのは、矛盾しているような気もします。

プロセス教育自体が、勉強ばかりしていると視野が狭くなり、人格に問題がある人間になる、くらいの勢いで一発試験を批判して、その反省として一般教養科目をてんこ盛りにして設立された、という経緯がありますが、これと矛盾します。

結局、プロセスによる教育によっては、基礎的な学力に欠けた未修者が出てきてしまうから、ペーパー試験によるチェックが必要となるのでしょう。
そうすると、「プロセスによる教育」とは一体何なのだ、という疑問も生じてきます。
1年も学生を抱え込んで、多額の学費や補助金を費やしながら、基礎的な学力さえ身につけさせられない、と非難されても仕方ないでしょう。

また、共通到達度確認試験(仮称)の結果によって、「厳格に進級判定を行う」として未修者を進級させないくらいなら、そもそも未修者コースはなくして、現在の既習者コースに一本化して、その入学試験に、共通到達度確認試験(仮称)を使えば足りるようにも思います。

現状の制度を前提として、不具合が出てくると弥縫策を繰り返すということをすると、増築に増築を重ねた山の旅館のように、全体としてどこかいびつな制度ができてきてしまいます。

法曹を養成すること、という最終的な目標のために、何が必要か、合理的かをシンプルに考えるべきではないでしょうか。

暗躍する御用学者

資料7 第8期における審議の基本的な方向性について(案) (PDF:91KB) PDF
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/012/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/05/18/1357974_10.pdf

審議に当たっての基本認識
プロセスとしての法曹養成制度をこれからも発展させていくことが必要

記載順を、発言順とあえて変えておらず同じとすると、冒頭にいきなりロー批判派を牽制するような発言がされていますが、これはおそらく井上委員の発言でしょうね。

「法曹養成制度をこれからも発展させていく」とのことですが、ロー制度がいつ発展したことがあったのか、と小一時間問い詰めたい衝動にかられますが、それは別としても、相も変わらず利害関係者によるロー体制護持の茶番劇が繰り広げられ、抜本的な改革はなされないことになるおそれが感じられます。

第8期中央教育審議会大学分科会
法科大学院特別委員会委員名簿
(臨時委員) 3名
有 信 睦 弘 国立研究開発法人理化学研究所理事、東京大学監事
井 上 正 仁 早稲田大学大学院法務研究科教授
土 井 真 一 京都大学大学院法学研究科教授
(専門委員) 17名
磯 村 保 早稲田大学大学院法務研究科教授
上 田 信太郎 北海道大学大学院法学研究科教授
大 貫 裕 之 中央大学大学院法務研究科教授
笠 井 治 弁護士
樫 見 由美子 金沢大学人間社会学域法学系教授
片 山 直 也 慶應義塾大学大学院法務研究科(法科大学院)委員長・教授
鎌 田 薫 早稲田大学総長・法務研究科教授
木 村 光 江 首都大学東京大学院社会科学研究科法曹養成専攻教授
杉 山 忠 昭 花王株式会社執行役員 法務・コンプライアンス部門統括
土 屋 美 明 一般社団法人共同通信社編集委員兼客員論説委員
西 山 卓 爾 法務省大臣官房司法法制部司法法制課長・内閣官房
曹養成制度改革推進室副室長
長谷部 由起子 学習院大学大学院法務研究科教授
日 吉 由美子 弁護士
松 下 淳 一 東京大学大学院法学政治学研究科教授
山 本 和 彦 一橋大学大学院法学研究科教授
山 本 弘 神戸大学大学院法学研究科教授
吉 崎 佳 弥 司法研修所事務局長
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/012/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/05/18/1357974_2.pdf