タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

新潟大学法科大学院の募集停止に関する会長談話と法科大学院について考える若手弁護士

新潟大学法科大学院,募集停止関連として。

新潟県弁護士会 会長 味岡申宰−彼の場合

新潟県弁護士会
新潟大学法科大学院の募集停止に関する会長談話
http://www.niigata-bengo.or.jp/about/statement/index.php?id=143

新潟大学法科大学院がやむなく募集停止に至った背景には法曹志願者の激減がある。その原因として、法科大学院構想が立ち上がった時、国は法科大学院の設置数・配置・定員等について適正な制度設計を描けず、地域適正配置の理念も無いまま、あまりにも多くの法科大学院の設立と定員を認めたことにある。それとあいまって、国は国民の法的需要に見合わない急激な弁護士増加政策をとったことにより、司法試験に合格しても就職できない者が急増している。また、法曹になるまでの経済的負担とリスクがあまりにも大きく、そのことも法曹を魅力のないものとしている司法試験に合格しても就職先が無く、また司法修習生の給費制が廃止されたことにより、大学卒業後の法科大学院及び司法修習における学費や生活費を奨学金(借金)により賄わざるを得ないことから、一人当たりの経済的負担は数百万円から一千万円にのぼっているのが実情である。

短い文章の中に,司法制度改革の失敗の原因が説得力をもってコンパクトに論じられており,感心しました。



一方,こちらはやや残念な例。

弁護士 鈴木麻理絵−彼女の場合

新潟合同法律事務所
法科大学院について考える
http://www.niigatagoudou-lo.jp/?p=1344

私は新潟大学法科大学院の出身ではありませんが、法科大学院で学んだ者として新潟大学法科大学院のニュースは非常に残念でした。

法科大学院の制度については、批判も多々ありますが、私自身は法科大学院が出来て良かったと思っています。なぜなら、法科大学院が出来ていなければ、弁護士を目指そうと思うこともなく、弁護士として新潟で働くということもなかったからです。ですので、今の私があるのは、法科大学院制度のおかげです。

あなた自身が良ければ,他のロースクール生,法曹を断念した潜在的な法曹志願者,貸与制のため修習に行くのを断念した合格者,就職難に苦しむ修習生,ワーキングプアと化した若手弁護士,過当競争に巻き込まれた既存の弁護士,弁護士の質に不安を持つようになった国民などの利害は,眼中にないのでしょうか。

制度論を語っているのですから,「制度として,こういう長所があります」と客観的,一般的な根拠を言わないと,議論がかみあわないのではないでしょうか。

例えば,TPP加入について議論をしていて,「私はTPPで得をするから,賛成でいいです」などと言ったら,反対派からだけでなく,賛成派からも疑問の目で見られると思います。

続けて,

私自身、「基本的人権の擁護と社会正義の実現」に向けて日々の活動を行っているつもりです。

と語っておられますが,それが「個人的正義の実現」に向かっていないことを祈るばかりです。

法科大学院出身というだけで「社会にとって有益とは思われない弁護士」と評価されるのは、非常に残念でなりません。

法科大学院出身というだけ」という表面的な形式面だけでネガティブな評価をする人は,その程度の人ですので,ほおっておけばいいと思います。

それより,発言内容のクオリティが低いために「これだから法科大学院出身はダメだ」とネガティブな評価をされている可能性はないのでしょうか。