タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

バッヂ売りの少年

21世紀の初頭,ニポーンという国で,バッヂを売る少年がいました。

このバッヂを身につけた人は,これを見せるだけで裁判所に入れるし,法律絡みの紛争の代理人となれるという,それはそれは大層ありがたいバッヂでした。

これまで少年は,何十年の間,将来有望な若者を厳選し,僅かな実費手数料だけで毎年500個のバッヂを売っていました。

ところが,「シホウセイドカイカク」と叫ぶ偉い人たちが表れ,少年に対し,バッヂを与える相手を,160万円〜1000万円の『バッヂ取得権』を購入した人たちの中から選ぶことと,与えるバッヂの個数を毎年3000個にすることを要求しました。

少年は困りましたが,言われるままに,バッヂを与える相手を『バッヂ取得権』購入者とし,また,バッヂの個数については,なんとか毎年2000個まで増やすことにしました。

これで,「ホウノヒカリ」が社会をあまねく照らすことになり,「ホウカシャカイ」が実現され,ニポーン国の国民は皆ハッピーになる・・・はずでした。

ところが,実際はそうなりませんでした。

『バッヂ取得権』を余りに多くの人に売りすぎてしまったために,その購入者の中でバッヂをもらえる人が,購入者全体のわずか2割強に留まることになってしまったのです。

しかも,幸運にもバッヂをもらえた人も,バッヂ保持者があまりにも増えてしまったためインフレ化し,社会の中での価値が下がってきました。

このような状況で,世の中の人が皆バッヂを欲しがらなくなり,『バッヂ取得権』購入希望者が激減してしまいました。

さらに,そのような少ない『バッヂ取得権』購入希望者の中から選んで,毎年2000個ものバッヂを与え続けたので,一部のバッヂ保持者の質が著しく低下するという問題も出てきました。

バッヂ取得制度に対して重大かつ回復困難な損害を被らせてしまい絶望した少年は,ある年の雪の降る大晦日に,残ったすべてのバッヂに火を付けました。

バッヂの炎は暖かく少年を包みこんで彼岸へ運んでゆき,少年は喜んで成仏していきました。

※このエントリーはフィクションです。登場する人物,団体,司法制度などは,実在の人物,団体,司法制度などとは一切関係ありません。