タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

法曹養成制度検討会議,第2回会議 議事録

が公開されていました。

法曹養成制度検討会議,第2回会議 議事録
http://www.moj.go.jp/content/000103552.pdf

1つ1つについては色々思うところもありますが,全体を見ての感想としては,悠長だなあ,といったところです。


現状で弁護士があぶれているのに,合格者2000人を維持すれば,さらに毎年1500人(2000人−500人(←引退される予想の弁護士))ずつ弁護士が増えていくわけです。

1800人,または1500人にして様子を見る,というのなら,まだ分かりますが。

仮に弁護士はまだ足りないとして,その活用を考えるなら,いまあぶれていて就職できない人,または不本意ながらも食うためにノキとして低収入で働いている人,への働きかけをしたらどうなのでしょうか。

社会の資源の有効活用という点からは,良いと思うのです。


個別の発言で気になったのはこの点。

井上委員

少なくとも今のような試験でも2,000人強は資格があるとされている。それを,では今度は,弁護士の就職難なので,あるいは今日出されたペーパーの言葉ですと,弁護士の経済的価値が下がるので,それを維持しあるいは高くするために,人為的に合格者数を削り,本来資格を与えてもよい人に資格を与えないでおこうという,そんな議論が通るのだろうかと思います。

いやいや(笑),2000人は,かなり無理をして合格させていると思いますよ。
法務省が発表している採点実感を見れば分かります。

私の環境では,下位合格者の基礎知識の不足,ていたらくを,よく見ることがあります。
正直,「そんなことは受験勉強の中でマスターしておけよ」と内心思うことがあります。
「お客様を抱えて,忙しい中でそんな基礎的なことを勉強するなよ。合格までに勉強しておけよ」と思います。
「旧司法試験であれば,この人はもう2〜3年合格できずに,もまれて勉強したのではないかな」と思うこともあります。

井上委員は,「本来資格を与えてもよい人」とおっしゃっておられますが,私見からは,「本来資格を与えてはならない人」に弁護士資格を与えています。

評価の問題なので,どちらが正しいかは一概に言えないかもしれませんが,個人的には上記のように感じます。

そうした「本来資格を与えてはならない人」に弁護士資格を与えた結果として,就職難を招き,弁護士の経済的価値を下落させ,職業として魅力のないものにして,志願者が激減させ,即独・ノキの発生によりOJT不足を生じさせ,ひいては国民に法務リスクの不利益を被らせている,それが現状です。

弁護士も「淘汰」されうることを前提とするなら,例えば仮に合格者を1500人にしたとして,順位が1500位以下の人は,司法試験で「淘汰」されればいいのです。
それで落ちたとしても,基本的には本人の自己責任なので,不平も出ないでしょう。
一方,制度設計が悪いために,学費,貸与制による借金,就職難,経済的リターンの低下の影響を受けた人は,不平を抱くでしょう。
(1500位から2000位までの人は,「2000人時代でなければ弁護士になれなかった」と喜ぶかもしれませんが)

貸与制を含めて,様々なひずみを生じさせながら強いて2000人を弁護士にして,上位1500位までの人や,潜在的な法曹志願者に迷惑をかけるのは,何とも不合理だと感じます。