タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

「文科省、法科大学院教育のICT活用のための協力者会議始まる」(ICT教育ニュース)

少し前の記事ですが,文科省で「協力者会議」があったとのことで,見に逝って参りました。

文科省法科大学院教育のICT活用のための協力者会議始まる | ICT教育ニュース

文部科学省は22日、10日に開催した「法科大学院教育におけるICT(情報通信技術)の活用に関する調査研究協力者会議(第1回)」についての情報をWebで公開した。配付資料等はWebから閲覧することができる。
http://ict-enews.net/2016/06/24mext-go/

法科大学院教育におけるICT(情報通信技術)の活用に関する調査研究協力者会議(第1回) 配付資料:文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/075/gijiroku/1372336.htm

会議の構成員は「偉い人」だけ

はじめに驚いたのが,この「調査研究協力者会議」の構成員に,IT関係者がいなかったことです。

資料1 法科大学院教育におけるICT(情報通信技術)の活用に関する調査研究協力者会議の開催について

朝田 良作  島根大学大学院法務研究科長
石井 徹哉  千葉大学大学院専門法務研究科長
宇加治 恭子 弁護士
大石 和彦  筑波大学大学院ビジネス科学研究科法曹専攻長
樫見 由美子  金沢大学人間社会学域・研究域長
土田 伸也  中央大学大学院法務研究科教授
恒川 隆生  静岡大学大学院法務研究科長
中川 丈久  神戸大学大学院法学研究科長
藤本  亮 名古屋大学大学院法学研究科教授
吉粼 敦憲  琉球大学大学院法務研究科長
米田 憲市  鹿児島大学大学院司法政策研究科長

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/075/attach/1372572.htm

てっきり,半分くらいはIT関係者が参加しており,技術的,費用的・コスト的な意見を出すのかと思いました。

この中のロースクール関係者が,ITにも詳しければいいのですが,見るところ「長」と名のつく肩書の方も多く,いわゆる「偉い人」,お年を召した人のようですので,一般的には,若い人以上にIT技術にはうといのではないでしょうか。

と言いますのも,ニーズに対して,IT技術的な解決策(ソルーション)とそのコスト観がわからなければ,ITの活用の検討のしようがないと思うのです。


例えば,ビジネスのインフラであるメールを例に考えます。

仮に,新しく会社を設立した場合などで,「会社でメールを送受信できるようにしたい」という新たなニーズがあるとします(法人なので,自社ドメインでやりたいとします)。
これには,様々な解決策があります。

自社でサーバー用のパソコンを購入して,メールサーバーを立ち上げる,という方法もあります。
これには,パソコン購入費の初期費用がかかります。
また公開サーバーを所有するということなので,ハッキングに対するセキュリティ対策をしなければなりません。
さらに,基本的にサーバーが止まらないようにしなければならないので,データのバックアップや,停電対策をしなければなりません。
自社内でそのような技術者がいればいいですが,いなければ業者に保守業務を発注することになり,コストがかかります。

他には,レンタルサーバーを借りて,そこのメールサーバーを借りて使う,という方法があります。
保守の手間がないので,一般的な中小企業であれば,レンサバを借りることが多いでしょう。

また,最近は,AWS(アマゾン ウェブ サービス)などのIaaSもあります。
このようなクラウドでサーバーを借りて,メールサーバーを運用する方法もあります。
もっとも技術力が必要なので,あまり一般的ではないでしょう。

IaaSとは|HaaS|Infrastructure as a Service - 意味/定義 : IT用語辞典
http://e-words.jp/w/IaaS.html

さらに,GmailなどのいわゆるWebメールのサービスを使う,という方法もあります。
法人ですと,Google Apps for Workを1アカウントにつき500円で利用することになります。
高機能で費用もそれほど高くありませんが,クラウドサービスでありアクセスが容易な反面,不正なアクセスがされないようにセキュリティにも一定の気を配らなければならないでしょう。

Google Apps for Work - Googleクラウドグループウェア
https://apps.google.com/intx/ja/?utm_medium=cpc&utm_source=google&utm_campaign=japac-jp-ja-apps-bkws-all-trial-e&utm_content=gafb&utm_term=43700006482824377&KWID=43700006482824377&gclid=CKH5r6GH3s0CFYLVvAod1CAPbQ&gclsrc=ds

このような4つの方法がありますが,費用はまったく異なります。またそれぞれの方法に,メリット,デメリットがあります。
このような場合に,技術にまったく暗い人間が何人集まって会議をしても,妥当な解決策が出せないと思うのです。
普通に考えれば,会社の担当者が,業者の技術者に対して,自社のニーズと予算を伝えて相談して,条件に見合った案をいくつか提案してもらうことになるでしょう。

「調査研究協力者会議」においても,今後,技術者が参加するのかもしれませんが,少なくとも3人くらいは常に参加する構成員がいてもいいのではないかと思います。

googleハングアウトを利用した筑波ローの試み

この中で面白かったのは,googleハングアウトを利用した筑波ローの試みです。

資料7 土田委員提出資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/075/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2016/06/22/1372336_6.pdf

弊ブログでも,Google ハングアウトについては以前触れたことがありました。

法科大学院におけるオンライン授業実施の模索が始まる - タダスケの日記

また,入札するとのことですが,「同時性・双方向性を確保したサテライト形式等によるオンライン授業」をやりたいだけなら,Googleハングアウトのテレビ会議・テキストチャットを使えば,システム部分は格安でできます。
天下のgoogleの製品であれば,システムの安定性は折り紙つきでしょう。
Google ハングアウト - ビジネス用のテレビ会議・テキストチャット

https://www.google.com/intx/ja_jp/work/apps/business/products/hangouts/
これら1から作ったら,莫大な費用がかかるのではないかと思います。

http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20150821/1440162664

結局,勉強するのも教育するのも人間であり,システムは要は音声と映像を伝達さえしてくれればいいので,安価(というか無料)かつ高品質のgoogleのサービスを利用してこれをクリアできるのであれば,利用してしまえばいいでしょう。
あえて,「遠隔授業」をプロジェクトとして大きく取り上げて,FUJITS◯やNE◯の高価で残念なシステムを購入する必要はありません。

おまけ,司法制度改革カルタ

「い」 「1500人(いっせんごひゃくにん)は合格者を確保したい」

「ろ」 「ロースクール 諸悪の根源」

「は」 「犯人は本当に予備試験なのだろうか?」

弁護士イロハ、カルタで学ぶ : 地域 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE
http://www.yomiuri.co.jp/local/osaka/news/20160706-OYTNT50000.html?from=ycont_top_txt

2016/07/07追記

みずほ銀行次期システム

みずほ銀行のシステム一新プロジェクトが崩壊しているそうです。
正確には,前々から崩壊していたのですが,それが最近ネットで話題になっています。

みずほ銀行次期システム関連のまとめ - Akio’s Log
http://d.hatena.ne.jp/elwoodblues/20160706/1467806420

お金を預かる銀行の重要なシステムと,たかだか音声と映像を送受信するだけの遠隔授業システムでは,スケールが何百倍,何千倍も違いますが,IT技術に疎いお偉いさんが適当なことをやって,膨大なコストが垂れ流される,というのは似ている気がします。

(遠隔授業システムについて,〜コストが垂れ流される,というのは私の予想です。なぜなら,IT技術者が「協力者会議」の構成員にいないこと1つを見ても,偉い方々が,自らがITに無知なことに気付いていない,その判断能力すら欠けている,と見えるからです)