タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

「ロー未来の会セミナー『“弁護士就職難”の謎を解く』」の謎を解く

書き起こされた方がいらっしゃいましたので、見に逝って参りました。

2015.3.5ロー未来の会セミナー「“弁護士就職難”の謎を解く」書き起こし
高瀬文人2015/03/07 06:29
https://note.mu/pointscale/n/ne6dd91b9cb77

未登録者について

就職難の根拠のひとつとされる統計に「修了者の進路別人数の推移」がある。
これは法曹養成制度顧問会議で事務局が用意した。これによると、確かに67期で550人がで就職できていない。
だが、これは12月1日の一斉登録時のもので、日弁連の資料によれば、月を追うごとに減って行き、64期の新司法試験受験者からは、一年後には2%台まで減少している。

これについては、資料があります。
第16回 法曹養成制度改革顧問会議の【資料4−3】弁護士未登録者数の推移に、60期から67期までの弁護士未登録者数の表があります。

これを見れば、60期の102人(新旧合計)から67期の550人まで、顕著な増加傾向にあるのは明らかです。
結局は登録できている、などとのんきなことを言っていられる状況では、到底ないと思われます。

【資料4−3】 弁護士未登録者数の推移
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/hoso_kaikaku/dai16/siryou04-3.pdf

第16回 法曹養成制度改革顧問会議(平成27年2月24日開催)
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/hoso_kaikaku/dai16/index.html

所得について

業種別所得階級別人員数の「所得階級別構成比推移」を見てみる。
2008年から2009年にかけて100万円以下が急増しているが、2010年にピークアウトした後は減っている。
注目すべきは300万以上600万以下で、ここのボリュームが膨らんでいる。
600万以上1000万以下も増えている。
減っているのは1000〜2000万、5000万以上、1億円以上も減っている。
(中略)
600万が膨らんでいるのは健全ではないか

膨らんでいるのは「600万」ではなくて、「300万以上600万以下」ですね。
300万と600万では、大分違うと思います。

仮に300万、400万とすると、ロースクールの学費、修習中の借金(貸与制)、この間の生活費といった経済的負担を負ってまで追い求めるインセンティブはまったくないでしょうね。
さらには、この間無職でいることによる逸失利益も多額に上るでしょう。

こうした状況なら、選択肢の多い優秀な人ほど法曹になるのを回避すると思います。

不合格リスクについて

法科大学院の修了者、司法試験合格者は5割に満たず - 斎藤剛史
http://blogos.com/article/107367/

このセミナーは「就職難」がテーマなので触れられていませんが、不合格リスクについてこのような記事がありました。

ロースクールと修習で多額の借金を負い、1日の大半を勉強に費やすような猛勉強を数年間して、その上で5割の不合格リスクがあり、晴れて弁護士になっても年収が300万、400万である可能性が十分にある、という状況であるなら、そのような職業にどうして優秀な若者が集まるなどということがあるでしょうか。

懲戒について

次に、懲戒について調べてみた。
法曹人口の増加に反対する人は、「食い詰めた悪徳弁護士が増える」という。
「4万番台の懲戒が増えている」という話があり、驚いたので『自由と正義』で調査してみた。
 懲戒対象者で一番多いのは1万5000番台だが、3万番代もいる。
しかし、有意に多いとは読み取れない。
懲戒処分には申立てから時間がかかり、まだ処分に至っていない場合があることには留意したい。

弁護士の懲戒処分件数については、以下のような記事もありましたので、参考まで。

「弁護士の懲戒処分件数」が過去最多の101件に!司法制度改革が影響か?
http://irorio.jp/nagasawamaki/20150305/211047/