ロースクールの校数を制限し、限られた少数の学校に対し,経営を維持するのに足りる学生数を入学させることで、ロースクール制度の維持を図ろうとしたある時代の話。
有識者会議に属する二人の学者の男が車に乗って、あるロースクールを目指していた。
目的の学校に着いた二人は,事務局の職員に「ロースクール維持省」から来たと告げ、学長はどこにいるかと尋ねる。
それを聞いた職員は血相を変えて「地域適正配置の理念に応えるべく,こんなに努力しているロースクールを潰すのか」と詰め寄る。
ロースクール数を制限する方法とは、政府のコンピュータが,司法試験合格率を基準として選抜したロースクールに対し,廃校宣告するというものであった。
その業務を遂行するのがロースクール維持省である。
今回は,鹿児島の国公立大ロースクールが対象に選ばれ、二人の学者はロースクール維持省の執行人だったのだ。
学者のうち一人は「皆で決めた方針なのだから従わなくてはならない。守らなければ定評ある学校までもが経営難に陥り、やがてはロースクール制度そのものの廃止につながる」と説明。
愕然とする職員をよそに、二人は学長への廃校宣告に向かう。
執行を終えた二人は、次の対象校の元へ出発する。
すると片方の学者が「どこか景色の良い場所がいいな」と言いだした。
もう一人の学者が訝しんでいると、その学者は,自分のロースクールが執行対象に選ばれたことを静かに告げた。
ロースクールの不人気はとどまることを知らず,ついには定評校の一角を占めるこの学者が在籍する学校までもが,廃校の対象となったのだ。
そして学者は、こんな矛盾,弊害だらけの制度の中で,10年も存続できて良かった方だ、と呟くのだった。
元ネタ
鹿児島大が法科大学院の募集停止へ
YOMIURI ONLINE
http://www.yomiuri.co.jp/kyushu/news/20140425-OYS1T50046.html?from=sytop_main1
生活維持省
「生活維持省」(せいかついじしょう)は、星新一が発表した短編SF小説である。
あらすじ
人口を制限し、国民ひとりひとりに充分な土地を与えることで、戦争も犯罪も公害もなく恒久的な平和を実現したある時代。二人の公務員の男が車に乗って、ある母子の家を目指していた。目的の家に着いた二人は母親に「生活維持省」から来たと告げ、子供はどこにいるかと尋ねる。それを聞いた母親は血相を変えて「まだあんなに小さな子を殺すのか」と詰め寄る。人口制限の方法とは、政府のコンピュータが年齢・性別・職業に関係なくランダムに選抜した人間を殺処分するというものであった。その業務を遂行するのが生活維持省である。今回はその家の子供が対象に選ばれ、二人は生活維持省の執行人だったのだ。
男のうち一人は「皆で決めた方針なのだから従わなくてはならない。守らなければ公害や交通渋滞など様々な問題が再発し、やがては戦争につながる」と説明。愕然とする母親をよそに、二人は子供をレーザー銃で撃ちに向かう。
執行を終えた二人は、次の対象人物の元へ出発する。すると片方の男が「どこか景色の良い場所がいいな」と言いだした。同僚が訝しんでいると、男は自分が執行対象に選ばれたことを静かに告げた。そして、こんな平和な時代にこれだけ生きられて良かった、と呟くのだった。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E6%B4%BB%E7%B6%AD%E6%8C%81%E7%9C%81