タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

青い鳥

「二割司法の病んだ日本社会のために,理想の法曹養成制度を探してきておくれ。

理想の法曹養成制度さえあれば,日本社会は幸せになれるのだからね。」


司法制度改革が始まる前年,貧しい木こりの息子チルチルと妹のミチルは、魔法使いのおばあさんにたのまれ、犬やネコのほか、少子化に悩む大学関係者や世間知らずの学者,省益拡大を狙う文科省の役人などのふしぎなお供をつれて、市場経済とは関わりのない夢の中の世界へ,理想の法曹養成制度を探しにでかけます。

しかし,法科大学院を創設して,多大なコストをかけて学生を教育しても,

法科大学院の赤字の穴埋めのために修習中の給費制を廃止しても,

人間的な教育をすると言って一般教養の科目の履修を強制してみても,

択一の科目数を3科目から両訴,商法,行政法を加えた7科目に増やしてみても,

三振制を導入してなかなか受からない受験生の受験機会を奪ってみても,

適性試験出願者は激減し,弁護士の質の低下がささやかれ,理想の法曹養成制度はどうしても手に入れられません。



やがて、朝になり、ふたりは目をさましました。
するとどうでしょう、理想の法曹養成制度は、木こり小屋の鳥かごの中にいるではありませんか。


受験するのに費用と時間がかからず,誰でも少ない負担でチャレンジすることができ,

修習中の給費制により,修習生が修習に専念することができて

学部時代のそれの焼き直しのような,試験にも実務にも役立たない一般教養科目の履修にわずらわされることがなく,

択一の科目数は3科目で,

三振制などの受験制限はなく,受験生が望めば何回でも受験することができ,

出願者は数万人を数え,厳しい選抜試験により弁護士の質が確保されている司法試験が。


かつて,弊害が多いとして廃止した旧司法試験こそが,探し求めていた理想の法曹養成制度だったのです。

ほんとうの理想の法曹養成制度は、すぐそばの、自分たちの生活のなかにあったのです。


元ネタ

オンラインブック せかい伝記図書館 巻末小伝
メーテルリンク(1862−1949)

「病気のむすめのために、青い鳥をさがしてきておくれ。青い鳥さえあれば、あの子はしあわせになれるのだからね」

クリスマスの前の晩、貧しい木こりの息子チルチルと妹のミチルは、魔法使いのおばあさんにたのまれ、犬やネコのほか、光の精や水の精などのふしぎなお供をつれて、夢の中の世界へ青い鳥をさがしにでかけます。

しかし、思い出の国へ行っても、幸福の国へ行っても、未来の国へ行っても青い鳥はみつかりません。やっと青い鳥をつかまえたと思うと、すぐ色がかわってしまいます。

やがて、朝になり、ふたりは目をさましました。するとどうでしょう、青い鳥は、木こり小屋の鳥かごの中にいるではありませんか。ほんとうの青い鳥(しあわせ)は、すぐそばの、自分たちの生活のなかにあったのです。
http://www.izumishobo.co.jp/onlinebook/c02_denki/99shoden/shoden14-3.html

あとがき

受験回数制限の緩和と同時に,択一の科目数も3科目に戻すらしいですが,旧司法試験に先祖返りしているかのようです。

多額のコストをかけている分,法科大学院を中核として現司法試験は,旧司法試験より優れている,違いがあるのが当然だと思うのですが,その違いがあいまいになっているような気がします。

試験にあまり違いがないし,弁護士の質も確保できないのであれば,旧司法試験のまま合格者を増やせば良かったではないか,という話に当然なっていくと思います。



司法試験、「5年で3回」から「5年で5回」に 政府が改正法案提出へ

改正法案には、短答式試験を現行の7科目から3科目(憲法民法、刑法)に減らすことも盛り込まれる。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140108/trl14010819400002-n1.htm