タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

法曹養成制度の立て直しを急げ(法科大学院の立て直しを急げ,日本経済新聞2014/9/10)

法曹養成制度の立て直しを急げ
2014/9/10付


 今年の司法試験の合格者のうち法科大学院の修了生は1647人だった。
前年より282人減り、合格率はいまの制度になって最も低い21.2%に落ち込んだ。

 このままでは法曹界に人材が集まらなくなってしまう。
受験者への負担の少ない予備試験ルートを拡充するなど、法曹養成制度改革を急ぐ必要がある。

 法科大学院は司法改革の目玉として2004年に開校した。当初は74校が乱立し、7〜8割と見込んだ司法試験の合格率はここ数年2割台に低迷したまま。
受験資格がある3回までの累積合格率も、4割台にとどまっている。

 予備試験ルートを拡充するためには、不要となる法科大学院の廃止による減少が避けられない。
これまでに20校が学生の募集停止を発表しているが、国は適正な地域配置や社会人学生への対応などを考慮しながら、
さらに廃校を推し進めていくべきである。

 そのうえで法科大学院に通いながらの予備試験受験の便宜を図るなどして法科大学院の魅力を高めていかなければならない。

 一方で、法科大学院を修了せずに司法試験を受けられる予備試験の人気が高まっている。
11年に制度が始まった予備試験を通過して司法試験に合格する人は増え続け、今年は合格者総数1810人のうち9%を占める163人にのぼった。

 予備試験は本来、経済的な理由で法科大学院に通えない人などに門戸を開く例外的なコースである。
それが法科大学院が不人気のため「代替ルート」として利用され、法曹界への優秀な若手人材の流入の唯一のルートとして,法曹人気の凋落をかろうじて食いとどめているのが現状だ。

 お金や時間による目に見えないハードルではなく、「法曹となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定する」(司法試験法1条1項)という司法試験法の趣旨に叶った流れといえる。
若者が金銭的負担のために法曹となることを諦めないように,修習中の給費制の復活
を検討する必要もあろう。

 とはいえ、改革の裏の目的が法科大学院の創設,維持であることを忘れてはならない。
法科大学院を名目上は形式的に存続させながら,うまく形骸化させる一方,予備試験ルートを通って優秀な若者が広く集まる法曹養成制度になっているのかどうかも、検証しなくてはならない。

元ネタ

日本経済新聞2014/9/10
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO76876300Q4A910C1EA1000/

法科大学院の立て直しを急げ
2014/9/10付
 今年の司法試験の合格者のうち法科大学院の修了生は1647人だった。前年より282人減り、合格率はいまの制度になって最も低い21.2%に落ち込んだ。

 法科大学院離れが加速しかねない事態だ。このままでは法曹界に人材が集まらなくなってしまう。教育機能を高めるなど、法科大学院改革を急ぐ必要がある。

 法科大学院は司法改革の目玉として2004年に開校した。当初は74校が乱立し、7〜8割と見込んだ司法試験の合格率はここ数年2割台に低迷したまま。受験資格がある3回までの累積合格率も、4割台にとどまっている。

 教育の質を維持するためには、法科大学院の統廃合が避けられない。これまでに20校が学生の募集停止を発表しているが、国は適正な地域配置や社会人学生への対応などを考慮しながら、さらに再編を推し進めていくべきである。

 そのうえで法科大学院相互の連携や、民間との協力を深めるなどして、法科大学院全体のレベルを高めていかなければならない。

 一方で、法科大学院を修了せずに司法試験を受けられる予備試験の人気が高まっている。11年に制度が始まった予備試験を通過して司法試験に合格する人は増え続け、今年は合格者総数1810人のうち9%を占める163人にのぼった。

 予備試験は本来、経済的な理由で法科大学院に通えない人などに門戸を開く例外的なコースである。それが「近道」として利用され、大学や法科大学院に在籍しながら受験する人が増えている。

 試験による一発勝負ではなく、じっくりと創造力や法的な分析力を養う、という司法改革の理念に逆行する流れといえる。法科大学院在籍中の受験を制限することを検討する必要もあろう。

 とはいえ、改革の本筋が法科大学院の機能強化であることを忘れてはならない。法科大学院で学んだことが生かされる司法試験の内容になっているのかどうかも、検証しなくてはならない。