タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

司法修習の抜け道を模索する法科大学院教授(後藤昭、青山法科大学院教授)

法学セミナー2015/01の「特別企画」です。

以下は見出しです。

法学セミナー2015/01 p32

法曹と法学教育の未来

青山法科大学院法務研究科教授 後藤昭

1 法科大学院と私の関わり
2 法科大学院の成果
3 法曹養成制度の課題
4 法曹という仕事の魅力

これほどのロースクール推進派をして、「法曹養成制度の課題」を語らせるというのが、ロースクール制度の末期的状況を表しているでしょう。

司法修習をショートカットして経済的負担を軽減しよう

他方で、法曹養成制度の現状は、理想的とはいえません。明らかに多くの課題があります。
 第1に、司法試験合格率が低く止まっていることです。
(中略)
 現在の法曹養成制度のもう1つの大きな問題は、予備試験制度の運用です。
(中略)
 法科大学院にとっては、入学志望者が減少していることが深刻な問題です。

この中の、「入学志望者の減少」に対する解決策として、司法修習の抜け道を通ることが検討されています。

 法科大学院にとっては、入学志望者が減少していることが深刻な問題です。

かつて数万人まった延べ出願者数は、2014年度には11450人まで減っています。2014年の第2回の適性試験出願者は4070人に止まります。とくに、未修入学者課程、社会人、他学部出身者の出願者が大きく減っています。

 これを改善するためには、法科大学院に入学することのリスクを減らす対策が必要です。先ほど述べたように未修入学者の選抜方法や教育方法を改善することがその対策になります。

もちろん、司法試験の合格者を当初の方針のとおり3000人まで増やせば、法科大学院に入るというという選択がしやすくなり、進路としての法曹界の魅力を回復する効果が大きいでしょう。その他に、法曹という職業の魅力を若い人たちに伝える努力がもっと必要だと思います。

 法曹志願者の経済的負担を軽減するためには、給付型奨学金を増やすことや、司法試験合格後、司法修習を経なくても法曹資格を取りやすくすることが対策になります。弁護士法5条2号によって、司法試験合格後、司法修習を経なくても、7年間一定の法律職を経験すると、研修を経て弁護士資格を得ることができます。この期間をたとえば3年に短縮すれば、働きながら弁護士資格を得るという選択肢が現実的なものになります。

7年間一定の法律職を経験することで、司法修習をショートカットして、経済的負担を軽減しよう、とのことです。
しかも、7年間の期間を、法改正するということなのでしょうか、「3年に短縮すれば」という仮定の話まで検討されています。

ここでまず不思議なのが、司法修習を「法律職の経験」で代替することで、法曹養成にどのような影響があるのか(またはないのか)がまったく検討されていないことです。
ただ、経済的負担を軽減するからショートカットしよう、という単純な理由しか読み取れません。

制度には費用と効果、コストと効用の2面があり、両者の相関関係で制度の有用性は検討されるものです。
コストが低いから、というだけでは、真面目に検討しているとは思えません。

それから、7年間の期間を3年間と半分以下にするというのは、現実味のある話なのでしょうか。
また、そのような短縮をした場合に、法曹養成への影響の有無は、やはり検討されていません。

予備試験を「抜け道」と批判しながら、このようなろくに検討もしていない司法修習のショートカットを提案するのは、明らかにおかしいでしょう。

そもそも、司法修習で借金が増えるのは、給費制が廃止されて貸与制(借金制)になったからであって、その原因はロースクールの赤字です。
そして司法修習の有用性はほとんど疑問が持たれることはありませんが、ロースクールの評価は、実務にも試験にも役立たないと悪評ふんぷんたるものがあります。

つまり、効用のない割にコストばかりかかるロースクールを廃止して、浮いた財源で司法修習を給費制に戻した上で、法曹志願者は修習を経て法曹となるのに不可欠な経験をする、というのが、誰が考えても合理的な方策です。

ロースクール推進派というのは、結局、ロースクール維持だけが目的となっており、真の意味で法曹養成には関心がないのでしょう。

ということで、既出のネタですが再度掲載します。

お前は本当に法曹を養成したいのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい
お前、学者の就職場所を作りたかっただけちゃうんかと。

法科大学院、夢十夜 - タダスケの日記

単語記事: 吉野家コピペ
http://dic.nicovideo.jp/a/%E5%90%89%E9%87%8E%E5%AE%B6%E3%82%B3%E3%83%94%E3%83%9A

今日の教訓

法科大学院脳」のヤツには何を言ってもムダ

関連サイト

法学セミナーの記事内にもありましたが、未修者対策として、「お試し受講」というものを考えられておられるようです。
それを具体化されたのがこちらなのでしょう。
ご参考まで

青山学院大学法科大学院は、このたび、
法科大学院お試し受講プログラム」を開講します。

  ●法律を学んだ経験はないが、「法曹」という職業に興味がある
  ●法科大学院への進学を検討する前に、法学への適性を有しているかを知りたい

そのような方々に、是非とも、お試しいただきたいプログラムです。
http://www.lawschool-aoyama.jp/blog/news/2014/10/post-74.html

安定の「ロースクールと法曹の未来を創る会」の常務理事もされているようです。

当会の概要/ロースクールと法曹の未来を創る会Law未来の会

代表理事 久保利英明 弁護士(日比谷パーク法律事務所)
代表理事 岡田和樹 弁護士(フレッシュフィールズブルックハウスデリンガー法律事務所)
代表理事 斎藤浩 弁護士(弁護士法人FAS淀屋橋総合法律事務所)
常務理事 後藤昭 青山学院大学法務研究科(法科大学院)教授

http://www.lawyer-mirai.com/gaiyo.html