司法制度改革を進める学者が,法曹業界の入口に「ロースクール」という関所を設けた。
また,「予備試験」という別ルートも設けられることになった。
関所が稼働してから数年がたち,いよいよ「予備試験」ルートの通行が開始されると,学者の想像をはるかに上回る法曹志望者が,この別ルートに殺到した。
一方で,関所を通過する者は,年を追うごとに激減していく。
「関所を設けて,儲けたわ」とオヤジギャグを飛ばして喜んでいた学者たちも,この事態を見て,にわかに慌て出し,対策を考えることにする。
その結果,「予備試験」ルートの傍らに,「この「抜け道」通るべからず」と書いた立て札を立てることにした。
(さらには,これだけでは効果を不安に思ったのか,「予備試験受験者が,若くて優秀な法曹ってウソでしょう」「予備試験受験者は,心が貧困」とネガティブキャンペーンを行うことにした。
もっとも,これらの理屈は,さすがに無理筋であったため,反対派からネタとして取り上げられるだけに終わった。)
こうしたところに現れた,法曹志望者の一休さん。
彼は,その名に反して,ストレートで難関大学に合格して,在籍中の優秀な大学生である。
法曹になるにしても,時間と費用の浪費を避けたいと思い,他の多くの法曹志願者と同様に,迷わず「予備試験」ルートの入口へ向かう。
そこで,「この「抜け道」通るべからず」との立て札を目にした。
「これは,どうしたものか」
はたと立ち止り,腕を組み,小首をかしげて何かを思案する一休さん。
少しして,こくりとうなずくと,「予備試験」ルートの真ん中を,堂々と歩いてゆく。
これを見ていた学者が,彼を問いただす。
「これこれ。お前は,あの立て札が読めなかったのか」
これに対して,一休さんは,涼やかに答える。
「読めましたよ」
「では,なぜロースクールを通らずに,「予備試験」ルートを通ったのだ」
「適性試験出願者が減少するのに反比例するかのように,予備試験受験者は,年々その数を増しています。
予備試験合格者も,年々増加し,その司法試験合格率も,数十のロースクールを抑えてトップという状況では,今後も増えていくことでしょう。
もはや,予備試験ルートは,法曹志望者にとって原則として狙う通常のルートであり,一方,莫大な金と時間のかかるロースクールは,予備試験に合格する自信のない者が,金で受験資格を買う例外ルートとなっています。
つまり,私は,予備試験ルートを通りましたが,「抜け道」を通ったのではなく,法曹になる道の,実質的な本道を歩んだのです」
これを聞いて,「ぐぬぬ」と唸り,うつむくばかりの学者を横目に,法曹業界へと歩んでいった一休さんは,若くて優秀な点が評価され,青田買いにより四大事務所に就職した。
元ネタ
このはし渡るべからず
桔梗屋が一休に出した問題の一つ。
店の前の橋を一休さんが渡ろうとすると、「このはしわたるべからず(『この橋を渡るな』の意)」と書いてある。
しかし一休は、「この端(はし)渡るべからず」と切り返し、橋の真ん中を堂々と渡った。
後日談で、同じ問題に加えて「真ん中も歩いては駄目」と難題を出されたが、「橋に乗らねばよいのだろう」と敷物を敷いてその上を歩いて渡ってきた。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E4%BC%91%E3%81%95%E3%82%93
あとがき
タイトルを思いついて,流れで適当に書きました。