ストーリー
敏腕弁護士で知られる小清水潔は、法科大学院の実務教員の地位が内定した。
しかし,法科大学院は,自身の保身から弁護士を大量合格させ,弁護士の経済的価値と職業的魅力の低下を招き,法曹志願者の大減員をもたらしていた。
小清水は,法科大学院をかばうため,法曹志願者と親交のあった予備試験を犯人に仕立てるための偽装工作をして逃走した。
法科大学院に協賛する大新聞の偏った報道もあり,予備試験は,若者の法曹離れの第1の容疑者と目されてしまう。
そしてその予備試験の弁護を担当することになったのは、他ならぬ法科大学院賛成派の小清水なのであった…。
古畑は証人として立った法廷で謎解きを始める。
まず、事件当夜、法曹養成課程には,予備試験以外に別の法曹養成制度がいたと説明。その理由は、
1.司法試験受験者の多くは,社会人経験者も含めて,仕事をまったくしない専業受験生だった。
予備試験受験者だけであれば,それほど時間的拘束を受けているわけではないので,ほとんどの人が仕事を投げ打つとはとても考えられない。
2.司法試験受験者の多くが,多額の借金を抱えていた。
予備試験受験者だけであれば,予備校代はかかるものの,それほどの経済的負担を負うはずがない。
というもの。
そして、小清水が、法科大学院の実務教員に就任予定だった点を説明し、偽装工作をしたのは小清水と指摘した。
何か証拠があるのかと食ってかかる小清水に、古畑は裁判記録のコピーを出して示す。
今までの公判で、小清水は予備試験について何度も「抜け道」と発言していた。
しかし、予備試験は誰が見ても「正当な制度」である。司法試験法にも当然そう書かれていた。
なのに、なぜ小清水は「抜け道」と表現し続け、直そうとしなかったのか?
通常なら誰が見ても「正当な制度」であるそれを「抜け道」と思い込むことのできる人間は、法科大学院が正道と決めつけている法科大学院賛成派だけ。
それに当てはまる人間は、事件関係者の中で唯一「抜け道」と連呼した小清水以外にはあり得ないのだった。
裁判記録で今までの「抜け道」発言を読み上げられ、小清水はついに観念。
証拠隠滅罪で逮捕され連行される小清水は、古畑に「いい弁護士になる。法科大学院に入学して司法試験を受けて下さい。なるべく早くでっせ」と言う。
古畑は,年収300万円の職業に転職する気持ちはないと言い,さらになぜかと問うと、彼は「決まってまっしゃろ。廃校する前に,法科大学院の合格実績を1人増やすんです」と言い残すのだった…。