タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

懸念される学生の質「法科大学院、93%で定員割れ 入学者10人未満が23校」,日本経済新聞2013/5/8

法科大学院離れが進んでいるようです。

一瞬,入学者が定員の93%と勘違いしそうですが,定員充足率は63%です。

法科大学院、93%で定員割れ 入学者10人未満が23校

法科大学院全体の志願者は延べ計1万3924人(前年比4522人減)で、合格者は延べ計5619人(同903人減)だった。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0800V_Y3A500C1CR0000/


この記載から計算すると,延べ人数ではありますが,ロースクールの合格率は以下になります。

対象年 延べ志願者 延べ合格者 合格率
前年 18446 6522 35.4
今年 13924 5619 40.4

ロースクールの合格率は,前年より5%上昇しています。
つまり,ロースクールに受かりやすくなったわけです。

これが何を意味するかというと,仮に,受験生の母集団の質が前年と同一であれば,ロースクールの学生の質が下がったことを意味します。
前年であれば,上位35%までの受験者しか合格できなかったのに対し,今年は上位40%までの受験生が合格できたわけです。

さらに,この「受験生の母集団の質」は,弁護士の窮状が徐々に大きく報道されるようになっているので,優秀な学生が法曹を忌避した結果,低下しているものと想像されます。

これを加味すると,さらに一層の学生の質の低下が予想されます。

ロースクール入学の容易化は,おそらく,経営難に陥った法科大学院が,昨年までであれば不合格としたような学生をも,入学させるようになったからでしょう。

つまり,過去最低と言われる今年の入学者数2698人といえども,これは,前年以前の基準からすれば,いわば「水増し」された数字と言うことができます。

1つ気になるのは,「三振リベンジ組」の再入学者の方々の存在です。
三振したとはいえ長く勉強しているのですから,まったく始めて勉強を始める学生よりは実力は高いでしょう。
こうした「三振リベンジ組」の人数は,数年前と比べて徐々に増えてきているものと思われます。
こうした方々によって,学生の質は,わずかに向上しているものと思われます。

しかし,その人数の絶対数は少ないでしょうから,実質5%以上もの入学容易化を相殺するほどではないでしょう。