多様な人材を養成するという理念を後退させるようです。
法科大学院「未修者3割」目標撤回 文科省方針 :日本経済新聞
文部科学省は15日、法科大学院の入学者について、3割以上は大学で法律を学んでいない「未修者」とする基準を撤廃する方針を明らかにした。未修者を中心に入学志望者が減り続けており、学生の質を保つために基準が不要と判断した。
(中略)
04年に始まった法科大学院を巡っては、修了者の司法試験合格率が当初見込みの7〜8割に届かず、2割台に低迷。特に未修者コースは近年の合格率が12%にとどまり、入学者に占める未修者・実務経験者の割合は、17年度に25%と、5年連続で3割を下回る。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2470172015122017CR8000/
記事を見ますと,
未修者コースの入学志望者が減っている(不人気)
未修者コースの司法試験合格率が低い(低合格率)
を理由に,未修者コースの定員を政策的に確保することをやめ,そのために司法制度改革の理念が後退することを許容する,ということのようです。
この理屈をパラレルに適用すると,
予備試験の出願者が増えているのに対して,法科大学院の入学志願者は減っている(不人気)
予備試験が毎年トップの司法試験合格率を叩き出しているのに対して,法科大学院の合格率は,はるかに低い(低合格率)
のですから,たとえ法科大学院によるプロセス教育という司法制度改革の理念が後退するとしても,合格率の高い予備試験を推すべきであり,法科大学院の定員を政策的に維持することもやめていいように思われます。
あくまで法科大学院政策を推進するなら,せめて理念とともに殉じるべきと思いますが,法曹志願者を激減させた結果,法曹の質を低下させ,さらに理念を放棄してしまうのであれば,何も残らない,有害無益の制度となってしまわないでしょうか(反語表現)。
弁護士増員政策に役立たないロースクール
日本弁護士連合会│Japan Federation of Bar Associations:基礎的な統計情報(弁護士白書2016年版等から抜粋)
https://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/statistics/reform/fundamental_statistics.html
また,こちらの司法試験合格者数の推移を見ますと,旧司法試験の時代でも,最大1500人程度の合格者を出しています。
一方,今年は予備試験の合格者が444人でしたので,仮にその60%が司法試験に合格したとすると,266.4人が予備試験ルートの合格者となります。
全体の合格者が1500人と仮定すると,差し引き1233.6人が法科大学院ルートの合格者となります。
そうすると,百歩譲って,弁護士増員の方向性が正しいと仮定しても,旧司法試験の一発試験の制度と比べて,法科大学院制度は,増員政策に資する制度とも言えない状況になっています。
増員政策に役立たない
法曹志願者の激減を招いた
理念を安直に放棄する
というのであれば,法科大学院制度は,有害無益の制度と評価されてもやむを得ないのではないでしょうか。
参考データ
平成29年司法試験予備試験口述試験の結果
4 合 格 者 数 444人
http://www.moj.go.jp/content/001238840.pdf
司法試験予備試験合格者等に関するデータ一覧
http://www.moj.go.jp/content/001166781.pdf