タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

法曹養成制度検討会議第15回(平成25年6月19日開催)

開催されたようです。

法曹養成制度検討会議第15回(平成25年6月19日開催)
http://www.moj.go.jp/housei/shihouseido/housei10_00032.html

私も,パブコメを提出した1人なのですが,「「中間的取りまとめ」に対して寄せられた意見の概要」には,まっっったくと言っていいほど反映されておらず,いくばくかの無力感を感じておりました。

反映されなかったパブコメ

「法曹養成制度検討会議・中間的取りまとめ」に対して寄せられた意見の概要
http://www.moj.go.jp/content/000111516.pdf

以下は,私が提出したパブコメの一部ですが,少しも反映されていません。。。

①第3 法曹養成制度の在り方 1 法曹養成制度の理念と現状(1)プロセスとしての法曹養成
②司法試験の結果において,法科大学院修了直後の受験者の合格率が最も高いことは,法科大学院教育の成果を意味しない。
③中間的取りまとめでは,司法試験の結果において,法科大学院修了直後の受験者の合格率が最も高いことを理由として,法科大学院教育が相当の成果をあげていると結論付けているが,これはありがちな誤謬である。

ここでは,(a)法科大学院修了直後の受験者と,(b)法科大学院修了後,1年以上が経過した受験者のそれぞれの合格率が比較されているのであるが,この(a),(b)の受験者集団の質は同一ではない。

つまり,(b)の受験者集団は,(a)の受験者集団のうち,合格者が「勝ち抜け」た残りの者,言ってみれば「負け残り」で再トライする者が主である。または,いわゆる受け控えの者は,法科大学院修了直後において自らの実力不足を自覚し,受験機会を回避した者である。

こうした者が構成する(b)の受験者集団の質は,個別の受験者はともかく全体的に観察すれば,(a)の受験者集団の質より低いと思われる。

このように,(a),(b)の受験者集団の質はそもそも異なっているのであるから,その司法試験合格率の差異は,法科大学院教育の成果を意味しない可能性が十分にあると考える。

また,もし法科大学院教育の成果を測るために司法試験の結果を見るとすれば,法科大学院教育を受けた者同士を比較するのではなく,法科大学院教育を受けた者と,受けなかった者を比較するのが,より適切であろう。

そして,法科大学院教育を「受けなかった者」としては,予備試験合格者がこれにあたるが,事前に予備試験による選抜を経ているため単純な比較はできないものの,法科大学院修了者が予備試験合格者を圧倒するというような司法試験の結果は見られず(むしろ逆に予備試験合格者が法科大学院修了者を圧倒している),このことは法科大学院教育の成果を疑わせるものである。

さらに付言すれば,法科大学院修了者が,修了後,わずか1年から数年の間も教育の成果を保持できず,修了直後の者に劣るというのであれば,この後5年,10年,20年と経過すれば,法科大学院教育の成果はほとんど残らないこととなり,そもそも法科大学院の存在意義さえ疑われるものである。

また,私の独自の考えとしては,現在の流れからは非定評校を潰すということで事態の改善を目指すらしいですが,定評校の定員も減らして,痛みを分かち合ってほしいと思っています。

定評校の定員も減らすべき理由は,以下になります(提出済みのパブコメの一部)。

①第3 法曹養成制度の在り方 2 法科大学院について
法科大学院の廃校,統合を促すとしても,その対象の選定基準として司法試験合格率を考慮することには,慎重であるべきである。
③中間的取りまとめでは,司法試験合格率をもって,法科大学院の教育の質を測る基準としているが,これは基準として妥当ではない。
仮に,入学者の質がいずれの法科大学院でも均等であれば,法科大学院ごとの司法試験合格率の差異は,入学後にこれらの入学者に対して行った法科大学院の教育の成果と言えるかもしれない。
しかし現実には,入学者の質は法科大学院ごとに大きく異なっている。
いわゆる上位校には優秀な学生が集まり,他方,下位校や地方校にはこうした学生が集まらないのは周知の事実である。

これは,上位校にとっては,その教育の質が低くとも,高い司法試験合格率を出すことが可能となり,他方下位校や地方校にとっては,逆にその教育の質が高くとも司法試験合格率が低迷することを意味する。
また,現状では法科大学院の授業以外にも,学生は学外において予備校を利用するなど自主的な受験対策を取ることが通常となっており,こうした自主的な受験対策の巧拙が司法試験合格率に影響を与えている。
このような他の要因があることも考慮すると,法科大学院の教育の質と司法試験合格率との関連性は,より一層薄まっていると考えられる。

今回の和田委員提出意見

今回の和田委員の提出意見を見て,少し勇気付けられました。

今後に向けての意見,和田委員
http://www.moj.go.jp/content/000111847.pdf

今回のパブリックコメント手続については、形ばかりのものであったとの批判は当然ありうると思う。
ただ、この場を借りて、「中間的取りまとめ」の内容に批判的なパブリックコメントを提出された方々に申し上げたいのは、
本検討会議が上記の「意見の概要」のような形でのまとめにせざるを得なかったこと自体が一定の意味を持つ
ということである。

それは,そうかもしれませんね。
パブコメの公表の仕方が,あのような異常とも思える形になったこと自体が,ロー推進派が追い込まれた結果かもしれません。

心ある政治家や、次の検討体制における心あるメンバーは、
今回のパブリックコメントの意味を正しく理解するであろうし、
また、おそらく、事務局の方々ないし法務省幹部の方々も、
「中間的取りまとめ」の内容に対してこれほど多数の批判的な意見が寄せられたことに
改めて衝撃を受けているように私には思われる。

そうであって欲しいです。

私は、本検討会議では残念ながら力及ばず、
最終的な取りまとめの内容にはほとんど寄与することができないことになりそうであるが、
他方で、法曹志願者の激減等という厳しい現実を前にして、
抜本的な改革のための歯車は確実に動き始めたようにも感じている。

和田委員の本会議での仕事ぶりを拝見していて,現在のロースクールを中心とした法曹養成制度が大失敗しているという,火を見るよりも明らかな事実を,これを認めずに児戯のような屁理屈を繰り返すロー推進派の委員に対して,決して感情的にならず,噛んで含めるように懇切丁寧に説明していたのが印象的でした。

反対意見に対し,その直後に,この意見とは必ずしも論理的にかみ合わないロー賛成論を,大声でまくし立てていた某I委員との姿勢の違いも鮮明でした。
(私は,自分の中では「両手グルグルパンチ」と呼んでいましたが)

こうした各委員の態度の違いも,将来の心ある人々が正しく理解してくれることを期待します。

今回のパブリックコメント手続には無気力感を感じている方も多いと思う
それも無理からぬこととは思うが、現実を変えていくためには、
できればその無気力感を引きずることなく今後も意見表明の意思を持ち続けてほしい、と切に願う。

他でもない和田委員がこのようにおっしゃるのであれば,将来のより良い法曹養成制度と司法制度のために,もう少し気力を持ち続けてみようかと思います。