タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

通信制大学院のすすめ,「司法予備試験、今年の出願は最多1万1255人」読売新聞 5月2日(木)

法科大学院離れがまた進んだ」とのことです。

読売新聞
司法予備試験、今年の出願は最多1万1255人
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130501-00001622-yom-soci


記事の中では,

正規ルートあたる法科大学院

と書かれており,「正規ルートである法科大学院」と断言していないところが,

「現在の制度では正規ルートとされているが,様々な問題があり,今後どうなるかも分からない法科大学院

という微妙な立場を表現しているような気がします。

さらに,予備試験については,

「優秀な学生が法科大学院に通う時間や費用を節約する近道として利用している」

と書かれています。

ロースクール推進派であればおそらく使用するであろう)「抜け道」という,言葉そのものにネガティブな評価を含む単語ではなく,客観的な距離の遠近を表す「近道」という言葉を使い,また「」(かぎかっこ)をつけることで,

「現行制度上は,いわゆる「近道」にあたるが,それは読売新聞社の評価ではない。近道というのは,予備試験に対する様々な評価のうちの1つにすぎず,相対的なものである」

という,読売新聞社の現行制度から距離を取ったスタンスを感じます。


なぜロースクールのショートカットが「節約」になるのか?

いつも疑問に思うのが,ロースクールに行かないことが,なぜ「節約」になるのか,です。

時間はともかく,費用の点を見ると,ロースクールより高い買い物は世の中にあります。
家,車などです。

しかし,世の中には「家,車を買わずに何とか生活したい」という人たちばかりではなく,喜んでこれらの物を購入する人たちが大勢います。

それは,もちろん,代金を支払う代わりに,購入した家,車から得られる対価としての快適さを享受できるからです。

これをロースクールに戻って考えてみると,それでは,なぜ喜んでロースクールの学費を払う人がほとんどいないのか?
それは,ロースクールに行くことのメリットが感じられない,少なくとも学費に見合ったものとは感じられない人が多いからでしょう。

その結果,「ロースクールに行かずに何とか受験資格を得たい」と考える人が大勢出てきて,予備試験の受験者が増えることになるのでしょう。


通信制大学院の設立のすすめ

これに対するロースクールの考えられる対応としては,

ロースクールにおける教育サービスの質を向上させる
②同じ教育内容で,ロースクールの学費を安くする

の2つが考えられます。

このうち,①はよく言われていますが,②があまり言われていないことに,違和感を覚えます。
まあ,法律で強制的に売りつけている教育サービスなので,市場における一般的な物やサービスと同じ感覚にならない部分もあるのでしょう。

そして,ロースクールの費用の軽減ですが,通信制大学院の設立を検討することで実現できないかとも考えています。
ロースクール修了の受験要件からの撤廃がベストですが,仮にロースクールが現在の形で存続してしまったらの話です)

実は,この通信制大学院のことは,平成13年の司法制度改革審議会意見書の中で触れられています。

司法制度改革審議会意見書
http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/report/ikensyo/

III 司法制度を支える法曹の在り方
第2 法曹養成制度の改革
2. 法科大学院
(3) 公平性、開放性、多様性の確保

夜間大学院や通信制大学院を整備すべきである。

通信制大学院についても、法科大学院の教育方法との関連で検討すべき課題は残っているが、高度情報通信技術の発展等を視野に入れつつ、積極的に対応すべきである。
http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/report/ikensyo/iken-3.html

夜間大学院と並んで挙げられているので,社会人など,ロースクールに普通に通学するのが難しい人たちへ法曹の門戸を開く,というのが本来の趣旨のようです。

こうした本来の趣旨からは外れますが,学費軽減のための1方策として,初の通信制大学院の設立を考えてもいいのではないかと思っています。
(が,法曹養成制度検討会議では,通信制大学院の「つ」の字も出てきていません。一体,何を「検討」する機関なのでしょうか?)

私はパブコメに書き忘れてしまったので,興味のある方は書いてみてはいかがでしょうか。