タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

ロースクール関係者が考えた奇妙な3の思考実験

功利の怪物(Utility Monster)

功利主義とは、最大多数の最大幸福を旨とする規範だ。いかにも完璧に聞こえる教条の限界を示すのが、この思考実験である。

私たち国民は、合理的な法曹養成制度を持てれば、一定の幸せを感じるだろう。
しかし、法学者はロースクール制度が存続すれば、教員としての地位と収入を手にすることができるので、その1,000倍の幸せを感じることができる。

もしロースクールを存続するか廃止するか1つしか選べなかったとしたら、最大の幸福を得るために、ロースクールを存続させるべきだ。
修習にあてる予算であっても、修習を貸与制(無給の借金制)にして、浮いた予算をロースクールに与えるべきだ。

法学者が一般人よりも多くの幸福を得ている限り、功利主義では大多数の人々を不幸にすることになる。
それでも世界全体で見た場合の幸せの総量は最大のものなのだ。

経営難のロースクールの比喩

功利主義については、個人の権利を重視する立場からも批判されている。

今、ロースクール教員としての地位と収入を欲している法学者がいるとしよう。
あなたは、学費を納めるお金の入った歩く財布のようなものだ。
あなたは幸せかもしれないが、ロースクールに学費を納めれば、法学者にはそれ以上の幸せが生まれることだろう。
したがって、功利主義に従えば、あなたを強制的にロースクールに入学させて学費を納めさせるべきだということになる。

ジュディス・ジャービス・トムソンは次のような思考実験を考案した。

ある朝、あなたが目をさますと、ある経営難に陥ったロースクールに入学させられた状態であることに気がつく。
そのロースクールの経営難は深刻で、生かし続けるにはあなたの持っているお金が必要だった。
そこであるロースクール推進派の一団が前日の晩にあなたをさらって、あなたに学費を納めさせるために、ロースクールに入学させる手続きをしたのだ。

ロースクールの経営難が解消することは望めない。
もしあなたが退学すればロースクールは募集停止に追い込まれてしまう。
さて、あなたが退学したら、あなたはロースクール廃校の責任を負うのだろうか?
あなたがロースクール創設に同意していない場合でも、ロースクール廃校の責任を負っているのだろうか?

ロースクールの箱

各人に自分だけが中を見れる箱が1つ与えられているとしよう。

箱の中には”ロースクール”が入っている。

誰もが箱の中身を”ロースクール”と呼んでいるが、それを他人の考える”ロースクール”と比べあわせたことはない。
各人は自分が持つ箱の中だけを見て、その”ロースクール”を評価している。
他人の”ロースクール”に対する評価がまったく別物であるということもあり得る。
人によっては”ロースクール”は、評価が低いを通り越して有害と考えている、ということもあり得る。

この実験の肝は、他人が知ることのできないものについて議論しているということだ。
法学者がロースクール廃校によって痛みを感じたとき、潜在的な法曹志願者ははたして同じような痛みを感じているのだろうか?
もしかしたら、法曹志願者は痛みを感じるどころか、ロースクール制度が廃止されることを歓迎するのではないだろうか?

元ネタ

哲学者が考えた奇妙な10の思考実験 : カラパイア

4. 功利の怪物(Utility Monster)

 功利主義とは、最大多数の最大幸福を旨とする規範だ。いかにも完璧に聞こえる教条の限界を示すのが、この思考実験である。

 ある科学者が普通の人よりも物事から功利を引き出せる存在を作り出したとしよう。私たちはケーキを食べれば、一定の幸せを感じるだろう。しかし、功利の怪物はその1,000倍の幸せを感じることができる。もしケーキが1つしかなかったとしたら、最大の幸福を得るためにそれを功利の怪物に与えるべきだ。ケーキが2つであっても、2つとも与えるべきだ。功利の怪物が一般人よりも多くの幸福を得ている限り、功利主義では大多数の人々を不幸にすることになる。それでも世界全体で見た場合の幸せの総量は最大のものなのだ。


3. ヴァイオリニストの比喩

 功利主義については、個人の権利を重視する立場からも批判されている。今、臓器移植を待つ人がいるとしよう。あなたは臓器の入った歩くバッグのようなものだ。あなたは幸せかもしれないが、数名の患者に臓器を与えれば、それ以上の幸せが生まれることだろう。したがって、功利主義に従えば、あなたを殺して臓器を与えるべきことになる。

 ジュディス・ジャービス・トムソンは次のような思考実験を考案した。ある朝、あなたが目をさますと、ある意識不明のヴァイオリニストにつながった状態であることに気がつく。その人物は病気で、生かし続けるにはあなたの血液が必要だった。そこである音楽の愛好家の一団が前日の晩に医師に金を払い、あなたの循環器を利用できるようヴァイオリニストにつなげさせたのだ。

 ヴァイオリニストが完治するには9ヶ月かかるという。もしチューブを引き抜けば死んでしまう。さて、あなたとヴァイオリニストを離したら、それは殺人になるのだろうか? あなたが手術に同意していない場合でも、ヴァイオリニストに対して責任を負っているのだろうか?


2. カブトムシの箱

 各人に自分だけが中を見れる箱が1つ与えられているとしよう。箱の中には”カブトムシ”が入っている。誰もが箱の中身をカブトムシと呼んでいるが、それを他人のカブトムシと比べあわせたことはない。各人は自分が持つ箱の中だけを見て、それがカブトムシであると考えているのだ。他人の箱の中身がまったく別物であるということもあり得る。実は箱には何も入っていないということもあり得る。

 この実験の肝は、他人が知ることのできないものについて言及しているということだ。どんな子供でも、ある時点で彼らの目に映る青い色が他人が見ているものと同じであるかどうか疑問に思う。あなたが痛みを感じたとき、それが他人の感じる痛みと同じであるとどうしてわかるだろうか?

http://karapaia.livedoor.biz/archives/52223738.html

せやな

司法試験の合格者数を減らせと言っている人たちは、

「なになに」

多額の授業料で負債を背負っても合格出来るかどうかわからないだの、

「せやな」(うなずく)

合格しても就職先がないだの、

「せやな」(大きくうなずく)

食えずに困窮するだの言って、

「せやな」(大きく力強くうなずく)

弁護士全体のイメージを下げている。

「せやな」(腕を組みながら瞑目し繰り返しうなずく)

そんな希望のない職業を目指す人が減るのは当然。(久保利英明弁護士)

「せやな!」(頚椎を捻挫させそうなほど首をガクガクさせながらうなずく)

元ネタ

おまけ。奨学金と司法修習の貸与金をまず自己破産する弁護士は出てきているか?

たまたま面白い発想のYahoo!知恵袋の質問を見つけましたので,リンクを張っておきます。

法科大学院制度が実質崩壊している現状ですが、
「就職先が見つからないから(ロースクール奨学金と)司法修習の貸与金をまず自己破産してほとぼりが冷めたら(資格停止期間過ぎたら)弁護士として仕切りなおし」

という人は実際に出てきているのでしょうか?

「そんなことする人はどこの事務所も雇ってくれない」かもしれませんが、とりあえず自力で自己破産して、破産関係に強い弁護士として独立するか、国選乞食として生活するかというのは考えられる気がします。


(こういうやり方する人が増えたら法曹関係者も否応無く司法制度の崩壊にむかいあわざるを得ないのかなと言う気もします)
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10163646040