タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

司法試験3000人枠撤廃へ 需要伸びず「非現実的」,朝日新聞2013年3月17日

朝日新聞
「法曹養成制度検討会議」(座長・佐々木毅学習院大教授)が、
司法試験の合格者数を「年間3千人程度」とした2002年の政府計画の撤廃を提言する見通しになった。
http://www.asahi.com/national/update/0316/TKY201303160408.html

とのことです。

他のブログ様でも既に指摘されているように,今さら感が漂いますが。

しかし,「現在は2000人でも,将来的には3000人に」などというロー推進派の寝言を聞かなくてすむようになる,という点ではメリットがあるのではないでしょうか。

現に,この会議では,司法改革の理念をアピールする意味で,3000人という数字を残すべきという声もあったようです。

合格率の低迷で法科大学院への志願者も減少。

ところで,ロースクールへの志願者が減少した原因として,「合格率の低迷」があげられていますが,しれっとウソを書くのはいかがなものかと思います。

仮に,旧司法試験時代のような弁護士の待遇であれば,合格率が20%を超えていれば,その負担にも関わらず,ロースクールに志願者がそれなりに殺到したのではないでしょうか。

ここで,ロースクール志願者の減少の原因として,「ロースクールの学費や時間的負担の大きさと,それに見合わない弁護士の悪化した労働条件から,そもそも弁護士を志望する若者が減ってきた」と,端的に指摘してくれれば,報道機関としての信頼を回復できるところなのですが。

また,今後は,合格者数の数値的目標は設定しない,ということらしいですが,一定数のロースクールを存続させるのであれば,その経営が成り立つ学生数と,想定合格率の2つの数字から,合格者数は一定の範囲内で予想できるはずです。

つまり,合格者数の数字を明示しなくなったからといって,それだけですべてに対して柔軟に対応できるわけではなく,合格者数の上限,下限はあるはずです。

ここで,将来,また問題が起こらなければいいのだが,と思っています。
「実際にやってみたら,残したロースクールの経営が成り立つためには,合格者は最低2000人が必要でした」などということになると,また揉め事が発生します。

しかし,法曹志願者の激減傾向を見ると,合格者も激減するでしょうから,「合格者が多すぎる」のは,それほど心配しなくてもいいのかもしれません。


今後の流れ

これまでの会議の中で出ている,「定評のあるロースクール」を残すという方針と合わせて考えると,今後の方向性は,このような感じでしょうか。

ロースクール数  >極小化
ロースクール学生数>極小化
司法試験合格率  >極大化
合格者数     >2000人より減少?

この場合,潰すロースクールと,残すロースクールを,どのような基準で選別するかが問題となります。
このとき,一説には,政治的影響力の強い,某宗教系中堅ロースクールがネックとなる,という話もあります。
つまり,ここより上位のロースクールをすべて残すとすると,大してロースクールが減らないということになってしまいます。

もっとも,これらの問題のすべては,存続させるロースクールの経営が成り立つかどうかから発生する問題ですので,ロースクールを廃止してしまえば,こうした問題は一切なくなります。

しかし,法曹を養成する機関であるロースクールの経営を成り立たせるために,合格者数や弁護士業界のデザインが逆算して決められていくのは,手段と目的が逆転しており,本末転倒の感が否めません。

このねじれを解消するためには,ロースクールに受験資格を与えないようにして法曹養成過程からは一応切り離して,その経営については,その素晴らしい理念とやらをもって市場経済の中で自力で生き残ってもらうようにして,一方,法曹養成過程については,負担の少ない一発試験により,多くの母数の中から優秀な人材を選抜し,充実した修習と,これに続く就職後のOJTによる育成に委ねるようにすればいいでしょう。