顧客が説明した要件
ペーパー試験の弊害を是正しつつ,合格者平均年齢を引き下げ,弁護士を大増員するという,ちょっと期待過剰(?)な法曹養成制度の製造依頼。この時点ですでに完成型のピントが合っていない。
プロジェクトリーダーの理解(ロースクールの学部からの独立)
弁護士を増員させる法曹養成が欲しいという顧客の要求はなんとか理解できた。そして顧客の提案にある非現実的な部分は専門家として排除したつもりだが、その結果、学部から独立した法曹養成制度として,学者ポストの激増をも狙ったリーダーがたどり着いた解決案。
アナリストの設計(予備試験の導入)
プロジェクトリーダーの構想のままでは法曹養成制度が一部の裕福な層しか取り込めず動かないことに気づいたので,予備試験を導入してなんとか公平性を維持できるように改良(?)されているが、予備試験組の司法試験合格率をロースクール卒と同程度にすると,法曹志願者が一気に予備試験に殺到し,法科大学院制度がすぐに崩壊しそうである。
プログラマのコード(ソクラテスメソッド)
学部と変わらない座学をロースクールで実施している状態。学部に屋上屋を架す形となり,第三者の目にはかなり異様な光景に映るが、「法曹を養成しろ」としか説明されなかった元学部の学者教員が形だけ講義を行ったもの。
営業の表現、約束(合格者3000人を目指す)
合格者2000人ですら合格者の質を考慮するとギリギリの増員であるのに,さらに無駄に大風呂敷を広げた大増員の掛け声。第三者の目にはかなり異様な光景に映るが売り込みに熱心な法科大学院制度推進者は気にしない。まさに絵に描いた餅である。
プロジェクトの書類
「合格率」7割~8割が,「累積合格率」7割~8割にいつの間にかすり替わる。その上「数字がひとり歩きした」などまるで他人のせいにする。制度発足時の法科大学院像が影も形もない状態。
実際の運用
法曹志願者が激減し,法科大学院も次々と潰れていった結果,LL7だけ残せばいいと開き直っている。とりあえず、LL7があれば,1500人の合格者を輩出できる。辛うじて顧客の要望を叶えている状態。
顧客への請求金額(国民のコスト)
ジェットコースターらしき遊具。最大1500人の合格者を出した旧司法試験を廃止した上で,失敗に失敗を繰り返した結果,青息吐息で1500人の合格者を輩出しているというだけなのに、ジェットコースター建造費用レベルの法外な税金を投入しようということか。
得られたサポート
学部を取り込み「法曹コース」なるもの設け,共通到達度確認試験というペーパー試験を取り入れ,給費制を廃止してから給付制へと一部譲歩し,法科大学院修了前の司法試験受験を許容するといったように,法科大学院制度の理念は根本から切り捨てられてしまった状態。「実際の運用」にあたってロースクール関係者からの「当初の形でロースクールを経営するのでは学生が集まらず余りにも経営が辛いので、とりあえずは学生を維持して経営的に楽になりたい」という要望に、有識者会議と国が場当たり的に対処した結果か。
国民が本当に必要だったもの
ロースクール修了が,司法試験受験資格から切り離された法曹養成制度。ロースクールを希望する者は任意に進学して群れて戯れることができるという本来の法曹養成制度の理念を十分に満たす機能を持った制度。
元ネタ
参考サイト
最近見かけたサイト。参考まで。