タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

ロースクールに賛成する新司合格の弁護士

菊間弁護士が,ブログを開設されていました。

菊間千乃Official Blog
地方・夜間法科大学院シンポジウム
http://blog.livedoor.jp/yukinokikuma/archives/22062452.html

菊間弁護士は,著書の中でもおっしゃっておられますが,根拠よりも「直感的に結論が口をついて出るタイプ」(「私が弁護士になるまでp159」)とのことで,ローの問題についても,最初からロー賛成の結論,持論をお持ちで,いろいろな活動をされているように見られます。

ところで,菊間弁護士以外にも,新司法試験で合格した弁護士の中には,ロースクール賛成派の人も多いのではないかと推測しています。
(もちろん,反対派もいるでしょうけれど)


理由は単純で,「ロースクール制度しか経験していないから」です。

例えば,100円のガムであれば,今日L社のガムを買って食べて,明日はM社のガムを食べることもできます。
こうして,食べ比べをして味を比較するわけです。

一方,司法試験合格は,数年に渡る長丁場ですし,そもそも1回弁護士資格を得れば一生保持できるので,もう1回取得しようということはないわけですから,2回にわたり弁護士資格取得ルートを経験することがありません。

ですので,ロースクールがある制度と,誰でも司法試験を受験できる制度の,2つを経験して比較する人はいないわけです。
(もっとも,今後は三振して予備試験に挑戦する方は,2つの制度を経験するかもしれません。しかし数としては少数でしょう。)

そうすると,自分が経験した制度を,ややもすると肯定したくなると思うのです。
また,出身校の友人や先生に愛着があったり,自分の歩んできた道であり,緩くなったとはいえ自分が勝ち残った競争の舞台を否定したくないのであれば,さらにローを肯定したくなる傾向が強くなるでしょう。

ここからは私の想像,空想ですが,こうした人を,タイムスリップさせて,旧司の世界(誰でも司法試験を受験できる制度)に放り込んだら,以下の点に気付いて,腰を抜かすほど驚くのではないかと思っています。

・試験と関係ない授業やレポートに時間を取られない。
・勉強が,論文を書く訓練に特化できる。または択一の勉強に特化できる。
・書籍代と,もし利用するなら予備校代がかかるくらいで,出費が驚くほど少ない。
・(予備校の授業を受けると)試験に役立つことばかりを濃い濃度で教えてくれる。
・通学の負担がないので,地方の人でも,書籍で独学するなり,予備校の通信講座を受講するなり,自分の判断で実力を高められる。
・こうした純粋に試験のために勉強した人たちとの間で,高いレベルの公平な競争がされている。

もし,受験回数制限がないことも加味すると,

・実力が今一歩で「記念受験的」になろうとも,個人の判断で自由に受験できて,受け控えなどで頭を悩ませなくてもよい。
・三振制のプレッシャーがない。個人の判断次第で,何回でも受験できる。司法浪人中に合格できなくても,働きながら少しづつ勉強を続けて合格を目指すこともできる。

まとめると,ロースクール制度が,余計な手かせ,足かせを付けて,受験者の負担が大きい制度にして,個人の自由な生き方,大人の判断を阻害する欠陥の多い制度だと気付くと思います。

他方,数年前は,旧司からローに流れた方も多かったので,こうした方々は,ある意味「ロースクールがある制度と,誰でも司法試験を受験できる制度の,2つを経験」したわけです。
こうした方々の中には,「本を読めば分かることを,高い学費を払って学者を雇って,時間的拘束を受けてまで教えてもらう意味が分からない」という感想を持つ方も,いらっしゃったのではないかと想像しています。

ただ,その頃は弁護士の就職難がまだそれほど大きな問題とはなっていなかったので,こうした人は将来の経済的リターンがあることを励みに頑張っており,ローの欠陥について声を上げる人は,結果としてそれほど出てこなかったのかもしれません。