タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

「法科大学院にさようなら」を読んで

法科大学院についての匿名のエントリーが某所にあがっていました。

法科大学院にさようなら
https://web.archive.org/web/20150207101615/http://anond.hatelabo.jp/20150206140543

内容は,これを書かれた筆者の個人の主観に基づくものですし,私もロースクールについて多くのサンプルを実際に見たわけでもありませんので,是非については基本的には判断しないでおこうと思います。

ただ,匿名のエントリーであり,虚偽の内容を書くメリットがこの筆者にありませんので,筆者において主観的にはこのように感じられた,というのは事実なのでしょう。

以下は,このエントリーの見出しに沿いつつ書いた,個人的な体験に基づく感想です。

法科大学院の教員について

一部の実務家の若い先生ですが,認証評価でダメ出しされないように配慮しつつ,過去問や,試験に出そうな重判例を中心に取り上げて下さったのには,親心を感じた,ということがありました。

公言されたわけではないですが,「ローの理念だ何だと言ったって,結局,試験に受からないとしょうがないでしょ」というメッセージである,と私は解釈したものです。

法科大学院の学生について

ロースクールの学生は,制度被害者だと思っていますので,その個々人については極力貶めるようなことは言いたくないと思っています。

もっとも,全体の傾向としては,ここまで法曹養成過程が合理性を失っているのが明らかであるにも関わらず,特に勝算もなく漫然とローに入学される方々の中には,いわゆるモラトリアム学生のような方も含まれてきていると推測しています。

法科大学院の制度的問題

司法試験受験資格を与える権限を剥奪して,任意の機関として,その存亡は市場原理に委ねるのが1番良いと思いますが,100歩譲って司法試験受験資格付与機関であることを前提とするなら,これは思いつきレベルの話ですが,入学試験として択一か,択一相当の試験を課すのがいいかと思います。

現行の制度のように,完全な未修者にマス教育で1から教えるのは,コストがかかりすぎるということもあるのですが,肝心の学習効率の点で自学自習に劣ると思います。

つまり,基礎事項や確立した判例を理解,記憶するのは,複数人のマス教育でやろうとするより,1人で自学自習した方が早いです。

二人三脚は面白い競技ですが,二人三脚と1人で走る人とが競争したら,1人で走る方が早いのです。

予備試験組がロースクール組を圧倒しているのも,こうしたことを裏付けているでしょう。
(個別に見れば,ロースクール生が予備試験を受けて合格している,というようなこともあるかとは思いますが)

また,入学者に一定のレベルを確保できるので,既修未修の区別が必要なくなり,様々な面で制度の簡素化と,コスト削減が図られると思います。

ロースクールの期間も,教える量が減るので1年くらいに短縮できるでしょう。

法曹になりたい人へ

経済的,労力的コストにペイしない状況が,年々深刻になっていると感じています。

65歳の司法修習生 知の欲求ひたすらに
西日本新聞 1月23日(金)11時20分配信

1時間半の授業に3〜8時間の予習。厚い教科書の注釈に答えの鍵があることも。午前3時になっても予習が終わらず、涙が頬を伝った。1学期が終わるまでに体重が7キロ落ちた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150123-00010005-nishinp-l40

数年間,多くの時間を勉強に費やし,合格率30%弱の試験に合格しても,就職難や低収入に難渋する可能性が高いです。

もっとも,合格者が1800人もいれば,各人の状況やスキルも一様ではないでしょうから,上位合格して良い就職先に就職する自信があるとか,親の弁護士事務所を引き継げる見込みがあるとか,弁護士資格を活用した面白いビジネスプランがあるなど,勝算があるのであれば,トライしてみるのもいいかもしれません。

(と言いながら,それだけのスキルやビジネスセンスがあれば,もっと勝ちやすいジャンルを狙う=そもそも法曹をチョイスしない,ような気もしますが)

参考

65期・66期会員に対する就業状況等に関するアンケート調査の結果及び弁護士実勢調査の結果について(日本弁護士連合会)
年額所得については資料27ページ
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/hoso_kaikaku/dai14/siryou03.pdf