タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

予備試験,ロースクール統合論〜半沢直樹に学ぶ司法制度改革案

予備試験とロースクールが,並列に置かれるものではないので,タイトルは正確にはおかしい表現ですが,感覚的な分かりやすさを優先しました。


学費の高さ,所要期間の長さから,ロースクールが不人気であることは,今後も動かない事実でしょう。

(学費,所要期間を半分にするくらいのドラスティックな改革をしてくれれば別ですが)

予備試験に対して,年齢制限をしても,ロースクールに志願者が戻っていかないだろうことは,多くの方が指摘されている通りだと思います。

予備試験を攻撃しても,多くの(潜在的)法曹志願者は,ロースクールを積極的に嫌っているわけですから,素直にはロースクールの門をくぐりません。

ドラマ半沢直樹,中野渡頭取の戦略

ところで話は変わりますが,先ごろ終了した人気ドラマ,半沢直樹をご覧になっていたでしょうか。

その最終回で,中野渡頭取は,対立していた大和田常務を出向させるというサンクションを与えるのではなく,逆に温情人事を行うことで懐柔します。

その意図は,以下の解説サイト様の解説をご覧下さい。

解説サイト様

中野渡頭取は取締役会の終了後、大和田常務と岸川取締役に辞令をだします。大和田常務は半沢直樹による不正追及で、出向を覚悟していましたが、中野渡頭取は平取締役への降格を決定します。

渡真利は、中野渡頭取が大和田常務を守ることで、旧銀行の中でも上昇志向の高い大和田常務と周辺人脈を取り込んだと解説しています。中野渡頭取は簡単に言えば、大和田常務に対する温情人事を行うことで、大きな恩を与えて旧産業中央銀行の関係者を逆らえなくしたと言う事ができますね
http://funshoku.blogspot.jp/2013/09/hanzawa-naoki-shukkou-riyu-kuromaku-toudori.html

司法制度「新」改革案

ロースクールも,予備試験に対して懐柔するべきだ,と,考えています。

たとえ,予備試験を絞ったとしても,結局は「嫌ロースクール派」の人たちは,素直にローには向かわないのですから,短絡的に目の前の敵(予備試験)を叩くのではなく,構造的にローが存続する方法を考えるべきだと思うのです。

中野渡頭取が,直接,大和田常務を叩くことをしなかったようにです。

(実際にできるかはともかく)こういう制度改革をしたらいいのでは,と思っています。

まず,司法試験そのものは,誰でもすぐに受験できるようにして,受験コストを下げて,優秀な人を集めます。
司法試験受験資格というものはなくなりますので,予備試験もなくなります。

ミソは,司法試験の上位合格者には,ロースクールを免除するところです。
この部分が,実質的に,現在の予備試験枠(=ロー免除枠)が移行した部分です。

司法試験を受けるような人たちの多くは,自信の頭脳に自信を持ち,鼻息の荒い人も少なくないでしょうから,そのような人たちは,この「ロー免除枠」を目指して努力します。
現在,予備試験を受けている人も,この枠目指して司法試験を受けます。

その中で,残念ながら「ロー免除枠」にあぶれてしまった人は,ローが吸収します。


新制度のメリット

この制度のメリットは多くありまして,1番のメリットは,既述したように

受験コストを下げて,司法試験受験者数を増やすことで,多数の受験母体の中から優秀な人材が合格するようになり,弁護士の質が上がる

ことですが,他にも,

合格者数の増減の調整がやりやすい(前にローがあると,多額の学費を払った学生やローのポストのことを考えて,減らさないように圧力がかかったりするが,こうしたことがない)

ことが考えられます。

さらには,ローのメリットとしても,最低限の入学者を確保できる,という点があります。
つまり,たとえば司法試験合格者を2000人,ロー免除枠を500人とすると,501位から2000位の合格者の1500人の入学者を確保できます。

現在は,まだロー全体の入学者は1500人より多いでしょうが,ご存じのように目下激減中ですので,1500人を下回るような状況になれば,安定して1500人の入学者を計算できる制度の方が,ローにとってもメリットと感じられるようになるでしょう。
また,この「ロー入学者」は,司法試験合格者,ロー免除枠の人数次第でさらに上下しますので,私が適当に想定した1500人より多くなることもあり得ます。

ロールート,予備試験ルートの両者が統一され,予備試験がなくなりますので,予備試験合格者の適正な人数を考えて頭を悩ますことがなくなるのもメリットです。

既修,未修の区別もなくなります。制度がシンプルになるので,未修の合格率が低いなどといったことで悩むこともなくなります。

司法試験でフィルタをかけるので,法曹の適性に欠ける者は早めに(ローに高い学費を払う前に)他の道に進むことができます。

ローにしても,入学者は司法試験合格者なので,思うように高度な内容の授業をすることができます。
(一方,基本的な事項を習得する段階でもマス授業をする現在のローは,効率が悪すぎます。1人で本を読んだ方が早いですので。)


新制度のデメリットなど

難しい点は,(いろいろありますが,特に)ローが,司法試験における下位合格者に「補習」をする機関になる,という位置付けを受け入れられるか,というところです。

私は,もともとロー構想が,合格者激増政策による弁護士の質の低下を防ぐところから始まっているので,むしろ,「質が相対的に低い合格者に対して教育を行う」ことは,その理念に適合していると思います。

かえって,現行制度,すなわち(予備試験という例外はありますが,原則として)自力で高い学力を身につけることが出来る人に対してまで,全員一律にローの授業を強制していることが,過度の制約だと思います。

また,ぎりぎりで「ロー免除枠」から漏れた人は,「ロー免除枠」を狙って翌年以降に再受験を目指したり,さらに,「司法試験合格」という肩書だけが欲しくて,(「ロー免除枠」にはこだわらずに),司法試験合格を目指す人も出てくるかもしれません。

それでも,現在の「受け控え」問題,三振と再入学(リピーター),受験回数の緩和,移行期間の経過措置など,現行制度の大きな歪みと比べたら,その副作用はずっと小さいものだと思います。



こちらからは以上です。