前回のエントリーは,ロースクール>司法試験と多段階になり複雑になった法曹資格取得過程を,何かに例えたら分かりやすくなるだろうか,と考えて書いてみました。
半分はネタですが。
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バッヂ売りの少年
http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20121102/1351862845
これでも,三振リスク(『バッヂ取得権』の失効)や,貸与制から来る強制借金(負担付贈与としてのバッヂ付与に課される,1年半の生活費という負担)などのデメリットの点は,論点がぶれるので省いています。
これを自分自身で読むと,160万円〜1000万円の『バッヂ取得権』を売りさばいたお金は,どこに行ったのかが気になります。
結局は,ロースクール関係者のふところに入ったことになるのでしょう。
ところで,このようなバッヂ取得制度,ロースクール制度の趣旨は,
①法曹資格者を増やそう
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②質が下がる
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③ロースクールの教育で,質を維持しよう
という点にあったと思います。
そうすると,「ロースクールの教育によらないでも質が維持される人」に対しては,ロースクールを強制する根拠が希薄になります。
法曹養成制度検討会議,第2回会議の井上委員風に言うと,こう言えるのではないでしょうか。
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旧試験でも,500人〜1500人は,ロースクールで学ばなくても独学などにより,法曹資格を与えるにふさわしい実力があるとされている。
ところが,ロースクールを強制することで,こうして自力で実力を蓄えることができる人の中に,時間的,経済的負担を引き受けることができずに法曹資格を断念する人を生じさせている。
つまり,一律にロースクールを強制することは,本来資格を与えてもよい人に資格を与えないでおこうという,そんな議論に等しいと思います。
元ネタはこちら
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井上委員
少なくとも今のような試験でも2,000人強は資格があるとされている。それを,では今度は,弁護士の就職難なので,あるいは今日出されたペーパーの言葉ですと,弁護士の経済的価値が下がるので,それを維持しあるいは高くするために,人為的に合格者数を削り,本来資格を与えてもよい人に資格を与えないでおこうという,そんな議論が通るのだろうかと思います。
法曹養成制度検討会議,第2回会議 議事録
http://www.moj.go.jp/content/000103552.pdf
もっとも,ロースクールの経済的負担を引き受けられない人への別ルートとして,現行制度でも予備試験があります。
これを拡充することで,「ロースクールの教育によらないでも質が維持される人」に対するケアは可能でしょう。
予備試験の合格者を大幅に増やすと,前回よりは司法試験の合格率が下がるでしょうから,仮に合格率を6割とすると,予備試験,司法試験の合格者数はそれぞれ以下のようになります。
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│予備試験│司法試験│
├────┼────┤
│ 833│ 500│
├────┼────┤
│ 1667│ 1000│
├────┼────┤
│ 2500│ 1500│
└────┴────┘
仮に少ない方で,予備試験経由の司法試験合格者500人となった場合でも,合格者の全体が2000人とすれば,4人に1人,25%が,予備試験合格者になります。
選挙でも,小選挙区当選者は「金バッヂ」,比例区当選者は「銀バッヂ」と言われることがあるようですが,もしこういう状況になれば,予備試験合格者は「金バッヂ」,ロースクール卒業者は「銀バッヂ」と呼ばれるようになるかもしれません。
もっと端的には「1級弁護士」「2級弁護士」でしょうか。
就職でも,予備試験合格者とロースクール卒業者が明確に差別されるようになるでしょう。
法曹志願者の視点から見れば,理想は予備試験を経由することであり,その実力がなければロースクールへ行って金を払って受験資格を買う,ということになるでしょう。
ロースクール卒で弁護士になっても就職できない,という状況になれば,何年も予備試験にチャレンジするという法曹志望者も出てくるでしょう。
予備校も,こうした受験生の需要に応えることで,再び活況を取り戻します。
実質的にロースクールの教育に価値がない,と評価されたに等しいですが,実際そうですし(-_-),また,公式にそう言わなければ,一応はロースクールも存続し,(別ルートが増えただけで)卒業が司法試験受験要件であることにも変わりないわけですから,ロースクール推進者の面目も保てるのではないでしょうか。