タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

予備試験,最終合格発表2012/11/8

先日,予備試験の合格発表がありました。

平成24年司法試験予備試験口述試験の結果
合 格 者 数 219人
http://www.moj.go.jp/content/000103363.pdf

昨年の合格者数がこちらですので,1.86倍になりました。

平成23年司法試験予備試験口述試験の結果
4 合 格 者 数 116人
http://www.moj.go.jp/content/000080849.pdf

予備試験経由の司法試験合格者の割合が,どのくらいになるかを計算してみると,以下のようになりました。

┌────────────┬──┐
│予備試験合格者     │ 216│
├────────────┼──┤
│合格率(%)      │ 60│
├────────────┼──┤
│司法試験合格者     │ 130│
├────────────┼──┤
│合格者に占める割合(%)│6.2 │
└────────────┴──┘

司法試験合格者 は,今年と同じ2102人にしました。
合格率 は,多少下がるとみて,仮に60%としました。

平成24年司法試験の結果
合格者数 2,102人
http://www.moj.go.jp/content/000102108.pdf

6.2%だと,あと一歩といった感じでしょうか。
これが10%を超えるくらいになると,予備試験経由の弁護士がそれほど珍しくなくなりますし,法曹志望者から見ると,予備試験を経由することに希望が大きくなるのではないでしょうか。
来年くらいまでは,倍増が続くと思います。そうなれば,法曹志願者の予備試験合格の希望が大きくなり,ロースクールを回避する傾向はさらに一層と進むと予想します。

また,三振者も予備試験に殺到するでしょうね。

なお,予備試験の法務省HPの「参考情報」というところに,性別,年齢別,職種別,学歴,受験歴,といったデータが公表されています。

参考情報
http://www.moj.go.jp/content/000103364.pdf

予備試験受験者の中で,三振者は何人なんでしょうかね?

「最終学歴別」の「法科大学院修了」の出願者626人は,司法試験受験資格が残っていれば,その司法試験受験資格を得るために1年受け控えをして本試験と同日に行なわれる予備試験を受ける意味が全くないでしょうから,ほぼ三振者と考えてよいのでしょうか?

極めて例外的な例を想定すると,すでに司法試験に合格した人が,興味本位か学歴ロンダリングか,何らかの理由で予備試験を受ければ,「法科大学院修了」に含まれるのでしょう。

三振者の方たちも,予備試験の制度趣旨(経済的な事情などで法科大学院に通えない人が法曹になる道を開く)に反することになるのでしょうか。

大学生を,予備試験の制度趣旨に反するとして排除するのであれば,三振者も同じ理由で排除して,大いに揉めることを期待しております( ̄ー ̄)ニヤリ

報道でも,以下のように報じられています。

NHK オンライン
存在の意義揺らぐ法科大学院
定員割れが続き、来年春に別の法科大学院と統合することになった大宮法科大学院久保利英明教授は、「法科大学院の理念は間違っておらず、司法試験の内容を見直すなどして、法科大学院の卒業生が合格できる仕組み作りを急ぐべきだ」と話しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121109/k10013362881000.html

(余談ですが,この記事の写真の人が見ている教材が何かが気になります。図が入っているみたいですが,予備校教材なのでしょうか?ロースクールのレジュメではないように見えますが)

久保利英明教授はこのようにおっしゃっていますが,そもそも司法試験は,「裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的」としています。

司法試験法
(司法試験の目的等)
第一条  司法試験は、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験とする。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S24/S24HO140.html

それを,ロースクールを強制し,多額の学費,多大な時間というコストを学生に負担させることで,実質的に「金」「時間」という,「学識」や「その応用能力」以外の要件を課しているのは不合理です。

こうした本来課すべきではない要件を課すことによって,現状の法曹養成制度は質に問題のある弁護士を量産しています。
つまり,法曹志願者を「金」「時間」という条件ではじいて,残った者の中から2000人を合格させているのが現状なのです。(さらに受験回数の制限で三振者もはじいています)
旧司法試験であれば,もしかしたら4000位,5000位くらいの人が,合格しているのかもしれません。
これでは,質が下がったと言われても仕方ないでしょう。

そもそも,一発試験で,「学識」「その応用能力」を判定すればいいのです。
弁護士の増員が必要であれば,一発試験で合格者を2000人にすればいいでしょう。
もちろん,暗記だけでは通用しないように,司法試験の内容の改善は大いにすればいいと思います。
それが,「学識」「その応用能力」を判定する国家試験たる司法試験の理念に,一番適合している選抜方法だと思います。

【参考】
こちらからリンクをたどれば,法務省HPの一時情報を色々と見ることができます。

法務省HP
平成24年司法試験予備試験口述試験(最終)結果
http://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji07_00081.html