タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

常に「◯時◯分現在,お電話が繋がりやすくなっております。」と表示する法律事務所の債務整理広告

ネット上で,以下のような法律事務所の広告を見かけました。


過払い金請求の無料相談なら弁護士法人アディーレ法律事務所
https://www.adire.jp/lp/kabarai/1701_a.html

「12時36分現在,お電話が繋がりやすくなっております。」

と表示されています。

「事務所内の電話システムと連携して,電話が繋がりやすいか繋がりにくいかを調べて,サイト(webサーバ)に反映させるのは,かなり面倒だな」と思って,興味本位でソースコードを見てみました。

なお,例えばGoogle Chromeであれば,以下のような方法で,簡単にソースコードを表示させることができます。

ソースコードを表示する - Google Surveys ヘルプ

Ctrl+U(Windows)または ⌘-Option-U(Mac)を押します。
https://support.google.com/360suite/surveys/answer/6172725?hl=ja

該当の箇所は,以下のコードで表示されているようです。

<p class="msgTel"></p>

html上では,タグの間が空になっているので,JavaScriptなどをいじることで表示しているのでしょう。

そこで,headタグ内をを見ると,以下のように「time_change.js」というJavaScriptファイルを読み込んでいます。

<script type="text/javascript" src="js/lib/time_change.js"></script>

そこで,この「time_change.js」というJavaScriptファイルを見ると,以下の内容でした。

$(function(){
//時間判定処理

var dateAttr = new Date();
var hour = dateAttr.getHours();
var minu = dateAttr.getMinutes();

if((hour >= 10) && (hour < 22)) { $(".msgTel").html("※" + hour + "時" + minu + "分現在,お電話が繋がりやすくなっております。"); }
else { $(".msgTel").text("※本日の受付は終了いたしました。"); }
});

なお,以下のリンクからも直接コードを見ることができます。

https://www.adire.jp/lp/kabarai/js/lib/time_change.js

これを見ると,要するに,現在の時間と分(正確にはサイトにアクセスしたときのそれ)を取得し,時間が10時以上22時未満であれば,以下の文字列の「hour」のところに時間を,「minu」のところに分を入れて表示させるようになっています。

「"※" + hour + "時" + minu + "分現在,お電話が繋がりやすくなっております。"」

そして,もし10時以上22時未満でなければ,

「※本日の受付は終了いたしました。」

という文字列を表示するようになっています。


(受付時間外にアクセスしたときの表示)

これを見ると,事務所内の電話システムとの連携というものはなく,当該事務所の受付時間である10時から22時であれば,機械的に,現在の時間と分を表示し,続けて「お電話が繋がりやすくなっております。」という固定の文字列を表示するようになっています。

欺罔的な広告手法ではないか

「お電話が繋がりやすくなっております。」という表示は,反対の「電話が繋がりにくい状態」がありうることを意識させます。
これを見た閲覧者は,「電話がつながりやすい今のうちに電話しよう」と動機付けられると思われます。
しかし,電話が繋がりやすいのかどうか,電話システムの稼働状況をそもそも調べておらず,そうであれば事務所としては「電話が繋がりやすい状態であるかどうかはわからない」はずです。
それにも関わらず,「電話が繋がりやすい」と表示し,閲覧者に今この瞬間は「電話が繋がりやすい」と誤解させ,架電を誘引するのは,欺罔的な広告手法と感じます。
(万一,電話システムの稼働状況を調べていたとしても,サイトには「電話が繋がりやすい」と固定文字列を表示して,実態を反映しない表示をしているのであれば,閲覧者から見れば欺罔的でしょう)

宣伝に関する過去の懲戒審査

弁護士のネット広告に関する問題といえば,懲戒審査に発展した事例もありました。
もし,広告の宣伝文句に問題点があれば,当該事務所は反省し,万全の再発防止策をとるべきでしょう。

アディーレの宣伝に「懲戒審査を」 3弁護士会が議決:朝日新聞デジタル

アディーレ法律事務所は「景品表示法違反については反省し、再発防止策をとった。ただ、所属弁護士は宣伝への責任はない。いずれも弁護士会の懲戒には当たらないと考えており、懲戒委員会で経緯などを説明していく」としている。

http://www.asahi.com/articles/ASK4344FXK43UTIL01Z.html

実態として,この広告サイトは業者が作成しており,当該事務所の弁護士は内容をよく把握していなかったのかもしれないとも思っています。
しかし,自らの事務所の名前で広告を出している以上,業者とよくコミュニケートをとって意思疎通を図らなくてはなりませんし,少なくとも作成された広告を見てチェックすれば,この「電話がつながりやすいとの自動表示」にはすぐに気付いたはずです(私が気付いたように)。

もし,こうしたチェックも不十分であったとしたら,そうした姿勢,意識自体に多少の問題があるのではないでしょうか。

弁護士激増時代になり,当該事務所は弁護士の採用数も多く有名ですが,このような多数の弁護士を採って全国に支店展開を図る事務所は,この事務所以外にも出てくると思われます。

そうした新しいタイプの事務所のさきがけとして,うまいビジネスモデルを築くことができるのか,個人的に着目しています。

参考サイト

JavaScriptのDate オブジェクト についての解説ページです。

Date オブジェクト (JavaScript)
https://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/cd9w2te4(v=vs.94).aspx