タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

「今の(法曹養成)制度では、平気でリスクをとる変わった人か、親から十分な援助をうけられる裕福な家庭の人しか法曹を目指せない」(「ビギナーズ・ネット」代表の萱野唯弁護士)

このような記事を見かけました。

無給の司法修習生に経済的支援をーー国会議員の賛同集め、日弁連が法改正求める - 弁護士ドットコム

若手弁護士や法科大学院生などでつくられる給費制の復活を目指す団体である「ビギナーズ・ネット」代表の萱野唯弁護士は、
「今の制度では、平気でリスクをとる変わった人か、親から十分な援助をうけられる裕福な家庭の人しか法曹を目指せない」と指摘。
https://www.bengo4.com/other/1146/1305/n_4191/

ビギナーズ・ネット代表によると,今の法曹養成制度で法曹を目指せるのは,

  • 平気でリスクをとる変わった人
  • 親から十分な援助をうけられる裕福な家庭の人

とのことです。


そこで,以下の「修了生座談会」で,合格者の発言を見てみました。

修了生座談会2015 | 学習院大学 法科大学院

村上 父が弁護士なので、法曹は割と身近な存在だったのですが、高校3年の時、僕の学校が履修漏れ問題に巻き込まれまして。(略)

井口 村上君と似ているんですが、私も身内に法曹関係者が多かったので、一番身近な職業という意識がありました。特に両親から勧められたわけではないのですが、自然とこちらの世界に足が向きました。(略)

渡辺 私の父は歯科医師をやっているのですが、地域の人のために仕事をしている姿に幼い頃から憧れがありました。初めはなんとなく法学部を選んだというのが本音なんですが、弁護士も父の仕事と重なる部分があるのかなと、今は思っています。(略)

野崎 僕が法曹を志したきっかけは、高校生の時に弁護士になったOBの方の講演会があり、その話を聞いていたら単純に「かっこいいなぁ」と思いまして。それくらいの年頃って、普通じゃ嫌だなとか、イメージから入っていくと言いますか(笑)。それからいろんなことがあり、自分自身や家族にも結構辛いことが起こり、そういう中で実際に弁護士が人のために働いている姿を目の当たりにして、法曹になりたいという思いが徐々に強くなっていきましたね。この経験が生かせるんじゃないかと。(略)

紙尾 最初は「法学部ならつぶしがきくよ」と言われて法学部を選び、法曹に関しては「かっこいいから、受けてみようかな」くらいの本当に軽い気持ちでした。だから、本気で法曹を目指そうと思ったのは、実は大学院に入ってからなんです。実務家の先生の授業を受けたり、「エクスターンシップ」などで実際の仕事も見せていただいたりしているうちに、人のために走り回っている先生の背中が本当に素敵で。自分もこういう風に働けたら凄いなと“実感”したことが大きかったですね。(略)

http://www.gakushuin.ac.jp/univ/g-law/lawschool/c/c10_2015.html

要約すると,

  • 父が弁護士の人
  • 身内に法曹関係者が多かった人
  • 父が歯科医師の人
  • 高校生のときに(弁護士を)「かっこいいなぁ」と思った人
  • 大学生のときに「かっこいいから、(ロースクールを)受けてみようかな」くらいの本当に軽い気持ちだった人

となりました。

ビギナーズ・ネット代表の言う二類型に即して言えば,前三者は,それなりに裕福な家庭の人,後二者は,リスクも何も考えずに法曹を目指した人,ということができます。

これを見る限り,ビギナーズ・ネット代表の発言は,それなりに的を射ているように思えます。

逆に,この5人の中に「弁護士になるまでの利害得失,弁護士になった後の収入見込を考えた上で,その経済的価値が魅力的な職業だったので目指しました」という人はいませんでした。

まあ,弁護士になることの利害得失を検討するような人がいたとしたら「ハイリスク・ローリターンだ」と判断して法曹になる道を避けてしまうのかもしれません。
そうすると,結果的に,裕福な人やリスクを考えない人がロースクールに多く入学することになるのでしょう。