タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

企業内の弁護士の需要を否定する朝日新聞(法律家の養成―「利用者のため」を貫け,朝日新聞2013年03月31日社説)

朝日新聞は,企業内に弁護士はそれほど必要ない,と考えているようです。


順を追って書きますと,こちらが平成25年3月27日に出されました,法曹養成制度検討会議の中間的取りまとめ(案)です。

中間的取りまとめ(案)
http://www.moj.go.jp/content/000109442.pdf

ここでは,以下のように,今後活躍が期待される弁護士の活動領域として5点が挙げられています。

1 企業内
2 地方自治
3 福祉分野
4 刑務所出所者等の社会復帰
5 国際関係

第1 法曹有資格者の活動領域の在り方

○ 法曹有資格者の活動領域は,広がりつつあるものの,その広がりはいまだ限定的といわざるを得ない状況にあることを踏まえ,更なる拡大を図るため,関係機関・団体が連携して,各分野における法曹有資格者のニーズを多角的に分析するとともに,課題や解決策をきめ細かく検討し,拡大に向けた取組を積極的に行う必要がある。

○ 企業内の法曹有資格者は,企業にとって,案件の始めから終わりまで一貫して関与させ,その専門性を機動的に活かすことが可能となるなど,社外弁護士とは異なる役割・有用性が認められる。企業における法曹有資格者の活動領域の更なる拡大に向けて,関係機関・団体が連携して,企業における法曹有資格者の役割・有用性の周知,法曹有資格者等の意識改革に向けた取組などを積極的に行うことが重要である。

地方分権改革や情報公開制度の浸透,住民の権利意識の変化等に伴い,地方自治体において法曹有資格者を活用する必要性・有用性が認められることから,関係機関・団体等が連携して,法曹有資格者の意識改革や能力向上のための取組,地方自治体における法曹有資格者の必要性・有用性の周知に向けた取組等を積極的に行うことが重要である。また,地方自治体を中心とした地域における福祉や教育等の様々な分野に着目した活動領域の開拓に積極的に取り組むことが重要である。

○ 法テラスの常勤弁護士の活動を通じ,福祉分野など弁護士の関与が必要な領域の開拓をなお一層図る必要がある。常勤弁護士の所要の態勢の確保が必要である。

刑務所出所者等の社会復帰等に果たす弁護士の法的支援が必要かつ有用であるところ,これを充実・強化するなどの観点から,弁護士,弁護士会及び日本弁護士連合会並びに日本司法支援センター(法テラス)等との連携方策について検討する。

○ 日本の弁護士が個別のビジネスサポートや国際的な貿易・投資ルールの策定等において一定の役割を果たすことが期待されることから,関係機関・団体等の連携の下,日本の弁護士の海外展開を促進し,日本の弁護士が国際案件処理についての能力向上に努めつつ,海外展開業務を充実させる必要がある。

一方,これを受けた朝日新聞の社説はこちら。

法律家の養成―「利用者のため」を貫け

政府の法曹養成制度検討会議が中間提言案を公表した。

この中で,

法律家が力をふるう場は法廷だけでない。

と指摘して,続けて具体的な弁護士の活動領域を挙げている。

国際ビジネス福祉地方自治犯罪者の社会復帰支援といった新しい分野で、能力とやる気のある弁護士が活躍する例が増えている。

表にすると以下になります。

1 国際ビジネス
2 福祉
3 地方自治
4 犯罪者の社会復帰支援

なるほど,犯罪者の社会復帰支援といった比較的マイナーな需要まで,順番は前後していますが,中間的取りまとめとていねいに対応させて,弁護士の需要が見込まれる場面を挙げています。

ん・・・4つ?。1つ足りない気がする・・・

と思ったら,「企業内」が抜けています(ノ∀`) アチャー

自社で企業内弁護士を雇用していない矛盾を突っ込まれるのを,避けたのでしょうか・・・

企業内の弁護士需要は,地方自治体のそれと並んで大きなものなのですから,それがないとして従来の主張を撤回するのであれば,その事情の変更なり見込み違いを,国民にきちんと説明するべきではないでしょうか。

しれっと,うそや,自己矛盾することを書くというのは,朝日の社風なのでしょうか・・・

社説は続けて,

問題は、こうした潜在的な需要をすくいあげ、うまく目に見える形にできていないことだ。

と問題点を分析しています。

これを合わせると,企業内には,潜在的にも弁護士の需要はない,と言っているように読めてしまいます。

この調子ですと,そのうち朝日新聞は,弁護士増員反対派にしれっと転ずるのではないでしょうか。
その主張の移り変わりが注目されるところであります。