タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

山陰法科大学院存続へ支援協,中国新聞2013/3/30

山陰法科大学院存続へ支援協

司法試験の合格者低迷などで存続が危ぶまれている島根大大学院の山陰法科大学院ロースクール)の大学院生や講師を経済的に支援するため、島根、鳥取両県の弁護士や自治体関係者が29日、「山陰法科大学院支援協会」を設立した。
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201303300030.html

とのことです。


そもそも,地方ローの存在意義があるのか,から,疑問に思われます。

島根県の「亀嵩」が舞台となった,松本清張の小説「砂の器」では,東京<>亀嵩間の移動が,確か20時間以上かかったとされていました。
小説の発表が1960年なので,その頃の感覚なのでしょう。

砂の器
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A0%82%E3%81%AE%E5%99%A8

仮にこうした時代であれば,山陰で法曹を養成して,その卒業生が山陰で弁護士になる,ということも,一定の合理性があったのかもしれません。

これに比べて現在は交通事情が良くなっていますので,移動は便利になっています。
人間の感覚において,日本はどんどん「狭く」なっています。

こうした時代に,箱物と教員の人件費に多額のコストをかけて,運営が困難な地方ローを設立,維持して,その卒業生が地元で就職するという事実上の期待にかける,というのは,現実味が薄い話しと思われます。

地方ローの学生だって,憲法の居住移転の自由を勉強しているでしょう。
卒業後に住居を移転して,都市部で弁護士になることに何の問題もありません。

2013年度に5800万円の募金を目指す。

そんなお金があるのであれば,弁護士のUターン,Iターンといった誘致政策にそのお金を使った方が,地方に弁護士を呼ぶのによほど直接的かつ効果的でしょう。

そのお金を,ロースクール生や教員に対して使うより,地方に来てくれた新人弁護士に使った方が,よほどお金が生きます。

また,ロースクール制度の別の問題点は,若者から高齢者へ所得を移転する制度という点もあります。
(この点は,ロースクール制度に批判的な中央大学の安念教授も,「年寄りにとってはいい制度だ」と皮肉的に指摘されています。)

司法試験に合格するかしないかも分からない就職前の若者から,数百万という多額のお金を徴収してしまうのは大きな問題です。

若い弁護士が結婚し,子供を産むのが,経済的に困難になってしまいます。

少子高齢化においては,生産,消費する若い世代が少なくなり,弁護士業界を含む多くの業界にとって成長の妨げになります。

アベノミクスでも,高齢者から若者へと所得の移動を図っていると言われていますが,ロースクール制度は,この逆の所得の移動を起こしています。

法曹養成をする上で,一定のコストがかかるのは避けられませんが,そのお金が生きるような使い方がされることを望むところであります。