タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

法曹養成制度検討会議 第5回会議 議事録,田島委員,和田委員2012/12/18

公表されていました。

法曹養成制度検討会議 第5回会議 議事録
http://www.moj.go.jp/content/000105971.pdf

この意見には,とても賛同します。その通りだと思います。

田島委員の意見

p27
○田島委員(社会福祉法人南高愛隣会理事長)
この入学募集をしておられる各大学のパンフレットなんかに,自分のところの今の合格率というのをきちっと明示すべきだと思うんです。だって,法科大学院に入る人というのは合格できるようにと思って入るわけでしょう。
別に教養を身に付けるために法科大学院に来ているわけではないんだと思うんです。
我が校はこういうことをやっています,ああいうことをやっていますということは盛んに言われていますけれども,一体ここは去年の合格率は何%でしたかという,何人合格されたかとか,そういうのをきちっと義務的に掲示しなくてはいけないというのを出さないといけないのではないかと思います

事前に,十分な情報開示があってこそ,後にリスクが現実化したとしても,自己責任論が正当化されるのです。
筋として,その学校の合格率を積極的に示さなくてはなりませんし,これが曖昧であれば,成績の上がらない学校は数字を出したくないでしょうから,義務的に,合格率を掲示するルールを作るべきではないかと思います。

タバコの警告表示の義務と同じです。
表示してもしなくてもいいのなら,タバコ会社はおよそ表示しないでしょう。

これに素早く反応したのが井上委員。

p27
○井上委員 (東京大学大学院法学政治学研究科・法学部教授)
1点だけ。
基本的な情報は,入試のパンフレットというよりは,各校の基本的な情報は開示するようにと,そういうことになっていまして,認証評価でもその点はチェックされます。
それと今の御前提では,学生はだまされて入ってくるんじゃないかということなんですが,私はロースクールをずっと回って学生にも直接インタビューするんです。
学生は基本的な情報は十分知っています。
十分知っていて何で入ってくるのと,こういういやらしいことを聞くんですけれども,自分が努力すれば自分だけは別だろうと,こういう感じの人がいて,態勢は詐欺的かもしれませんが,被害者は詐欺に遭っていない。
ちょっとここのところはまずいんですけれども,情報は十分彼らも知っています

学生は情報を知っているから,警告表示は不要,とのことです。

しかし,そういう理屈であれば,タバコの害をみんな知っているでしょうから,タバコの警告表示は不要,ということになってしまいます。

井上委員は「学生は基本的な情報は十分知っています」とおっしゃいますが,それこそ「過度の一般化」でしょう。

情報を知らない学生もいますし,そうした人にリスクの高い道を歩ませるのですから,ロースクールが三振した学生の自己責任を正当化するためには,事前に十分すぎるくらいの情報開示をしておく必要があります。

また,実質的にスポンサーとなる場合の多い親御さんは,高齢の方もおりネットを利用しなかったりもするので,情報に疎いこともあるでしょう。

子供が持って来たパンフレットに,その学校の合格率などの情報があれば,進路について一緒に考えることもできるでしょう。
「自分が努力すれば自分だけは別だろう」と思っている子供に対して,人生の先輩としてその浅はかさを指摘することもあるかもしれません。

また,こうした「合格率の掲示」自体は,合格率が良い学校は積極的に掲示したいかもしれませんし,必ずしもロースクール反対派の考えではなく,ローの賛否とは中立の話かと思います。

これは適正手続の意識があるかどうか,の問題かと思いますが,井上委員からすれば,少しでもロースクールにとってネガティブな情報を,入学希望者に与えたくない,ということなのでしょうか。

和田委員の意見

こちらの意見も,まったくその通りだと思いました。

p29
○和田委員 (弁護士)
統廃合についてなんですけれども,統廃合をどう行うかについて,もしこれを司法試験の合格率を主な指標として行うということであれば,疑問を感じます。先日述べさせていただきましたように,法科大学院での教育には基本的なところで問題があるというふう
に思っています。そして,私の認識では,司法試験の合格率は必ずしもその法科大学院での教育の善し悪しを十分反映したものではないというふうに思います。 その主な理由は,2つあると思います。

1つ目ですけれども,例えば,既修者枠が未修者枠よりも多い法科大学院の方が,そうでないところよりも司法試験の合格率は良くなるわけですし,その既修者は,法科大学院入学以前は,従来は旧司法試験の勉強を自分であるいは予備校で行ってきたわけです。したがって,入学時点で司法試験の合格直前までの学力を身に付けた人を多く入学させることができたかによって,その法科大学院の司法試験合格率は大きく左右されるということになるわけです

拙ブログでも,以前,同じ内容のことを書かせて頂いています。
旧試験が廃止されて,その受験生で,ロースクールに入学した人も多いと思います。
こうした人たちの,旧試験の準備ために蓄えた実力を,意味のない授業しかできないロースクールの実績であるかのように言うことは,二重の意味で旧試験受験生を誹謗しているのではないかと思う次第です。

拙ブログ
法曹養成制度検討会議第4回議事録,井上委員2012/11/29
そもそも論ですが,ロースクールごとの司法試験合格率は,学生の質に大きく左右されていると思います
東大の学生と,地方ローの学生を,そっくりそのまま入れ替えたとしたら,教員や教育方法が同じでも,司法試験合格率は反転すると思いますよ。
「司法試験合格率が良い」から,「そのロースクールの教育の質が高い」とは言えないかと。
話しの前提が違ってくるので,よく考えて欲しいと思います

http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/searchdiary?word=%C8%BF%C5%BE