タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

甲南ロー,『既修2年,120万円/未修3年180万円』が無駄になる確率76.6%の法曹養成

Schulze BLOG様で,甲南ローの院長が書いた記事が取り上げられていました。

Schulze BLOG
『既修2年120万円/未修3年180万円』の法曹養成がマーケットに支持されるか
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/51982003.html

受験料『5,000円』のチャレンジー法曹養成教育の選択ー 『既修2年,120万円/未修3年180万円』の法曹養成(院長が語るBecause, KONAN 甲南法科大学院
http://lawschool-konan.jp/because/column.php?id=193

元記事では,予備校を利用した予備試験ルートとの比較で,甲南ローの受験料や学費の設定の工夫が語られています。

予備校とローを比較しているのが,やや違和感がありますが・・・

ローは「プロセスとしての法曹養成教育」を行う高尚な場であり,瑣末な受験テクニックを教えるだけの予備校とは本質的に異なるものであり,その経済的コストに関わらず比較にならないのではないでしょうか?
(と,建前上は言うべきではないのでしょうか?)

まあ,ローをめぐる志願者離れなど状況が悪化する中で,現実的に考えた,というところなのでしょうか。

さらに,元記事の文章には引っかかりを覚える部分がありました。

経済的コストが数字を上げて詳細に検討されている一方で,費用対効果で言う「効果」が一切語られていないことです。


そこで,法務省のデータを元に数字を出してみました。

平成24年司法試験法科大学院等別合格者数等
http://www.moj.go.jp/content/000101962.pdf

受け控えの戦略や,既修,未修の差など,細かい点を考慮しだすと複雑になりますので,単純に3回連続で受験し,合格する確率は,甲南ロー全体の合格率とします。

甲南ロー全体の合格率は,以下のデータを元にすると,8.5%です(最終合格者÷出願者)。
ちなみに,出願もせずに受け控えをする者もいると思われるので,受験資格を有する者のうちの実質的な合格率は,さらに低いと予想されます。


┌────────┬───┬─────┬───┬─────┬─────┐
│学校名     │出願者│受験予定者│受験者│短答合格者│最終合格者│
├────────┼───┼─────┼───┼─────┼─────┤
│甲南大法科大学院│  141│    140│  89│    52│    12│
└────────┴───┴─────┴───┴─────┴─────┘

100人の受験者が,3回連続で受験すると以下の結果となります。


┌───┬────┬───┬────┐
│回数 │受験者数│合格率│合格者数│
├───┼────┼───┼────┤
│1回目 │   100│0.085 │8.5   │
├───┼────┼───┼────┤
│2回目 │91.5  │0.085 │7.78  │
├───┼────┼───┼────┤
│3回目 │83.72  │0.085 │7.12  │
├───┼────┼───┼────┤
│三振者│76.6  │   │    │
└───┴────┴───┴────┘

いわゆる三振者が76.6人という結果となりました・・・

つきましては,より正確を期すべく,以下のように甲南ローの記事のタイトルの修正を提案します。

受験料『5,000円』のチャレンジー法曹養成教育の選択ー 『既修2年,120万円/未修3年180万円』で23.4%の確率で法曹になれる一方で,76.6%の確率で三振する法曹養成

甲南ローはビジネスローヤーの育成をうたっている様ですが,コストパフォーマンスに敏感な志願者であれば,あまり選ばないでしょうね。
マーケットの判断は明確だと思います。