タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

ロースクール生の経済状況

こんなブログを読ませて頂きました。

ロースクール生の金銭状況 - 悩めよわがおつむ
http://500stars.hatenablog.com/entry/2015/11/13/023850

時間がなくてバイトもできにくいこと,食費を切り詰めることを考えていること,が書かれています。
また,明記はありませんが,ロースクールの学費で経済的に厳しくなっていることが,前提としてあるのでしょう。

もっとも,旧司法試験の時代でも,大学在学中に合格する人は少なかったですから,大学卒業後に,ある程度経済的に厳しい中で勉強を続ける状況もあったと思います。


ロースクール時代に悪化する経済状況

そこで,ロースクール時代になって,さらに悪化した点を考えてみると,

    1. ロースクールの学費が莫大な出費になること
    2. 一般教養科目も選択必修として単位を取らされて,時間を奪われること
    3. 通学に時間がかかる。また,ローの近くに引っ越すと費用がかかる。
    4. ロー指定の基本書を買わされる。受験勉強にも使えればいいが,使えずに他の本を買い直すこともある。

があげられます。

さらに,修習以降を見ても,新制度で悪化した点として以下が考えられます。

    1. 修習が無給(貸与制)になった。
    2. 就職難で労働条件(収入)が悪化している

これで,不合格リスクがそれなりにあるのですから,まともな人材は法曹を目指さなくなって当然でしょう。


「事後監視型」社会の理念に反するロースクール

そもそも,「事前規制型」社会から「事後監視型」社会へ移行する上で,「事後」に紛争が生じるケースが増えることが予想されることから,これに対処するために弁護士増員が進められたのでした。

弁護士資格の認定についても,事前規制は最小限にする,すなわち,ロースクールなどの余計な関与はなくして,司法試験で受験生の最低限の知識・素養をチェックし,弁護士が不祥事を起こしたときには,事後的に訴訟や懲戒で対処する(事後監視)べきでしょう。

もちろん,ロースクールが存在してもいけないということではなく,その教育効果を認めた受験生が自由意志で通う,任意の機関であればいいのです。

それなのに,ロースクールという費用対効果の悪い「事前規制」を重く課して,(潜在的)法曹志願者に見放されて,業界全体の活力が失われてしまうという,「事前規制型」社会の悪い側面を見事に現実化しています。

こうした状況は,規制緩和による「事後監視型」社会を目指すという行政改革の理念に反すると思うのですが,理念好きのロー推進派はどのように考えているのでしょうか。

過大な事前規制が,ロースクールの学費,修習の無給化(ロースクール維持のため)に直接につながっています。
また,ロースクール維持のために,増員政策を続けざるを得ず,供給過多が弁護士の収入低下につながっています。

このように,余計な事前規制=ロースクールが,弁護士とその卵の経済状況の悪化に直結しているのです。