タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

旧司法試験と法学者(漁師と億万長者)

かつての霞が関
旧司法試験が簡素な一発試験で弁護士の卵である若者たちを採っていた。

その若者たちはなんとも生きがいい。

それを見た法学者は、

「すばらしい若者たちだね。どんな法曹養成プロセスを経ているの」 と尋ねた。

すると旧司法試験は
「そんなに長いプロセスを経ていないよ。司法修習くらいだね。」
と答えた。

法学者が
「もっと長く法曹養成プロセスを経ていたら、もっとよい弁護士の卵が採れたんだろうね。おしいなあ」
と言うと、
旧司法試験は、素質ある若者たちを採るにはこれで十分だと言った。

「そんな弊害ある一発試験で,有為な法曹志願者たちは集まるのかい」

と法学者が聞くと、旧司法試験は、

「受験者は50000人が殺到している。弁護士は人気があり,優秀な若者のあこがれの職業だ。
魅力的な収入が期待でき,高い社会的ステータスが認められている。」

すると法学者はまじめな顔で旧司法試験に向かってこう言った。

アメリカのロースクールを視察した人間として、きみにアドバイスしよう。

いいかい、きみは、もっと長い期間、法曹養成プロセスを若者に課すべきだ。

まず,大量のロースクール設立を許すんだ。
地方ロースクールからの要望を断り切れないからね。
そうすると,ロースクールが乱立する。

それから重い経済的・時間的負担のために,法曹志願者は減るだろうね。
激減するかもしれない。
そうすると,乱立したロースクールがどんどん潰れていく。
でも,それでいいんだ。定評あるロースクールだけ残せばいいんだ。
対外的には,そうだな,最初から淘汰されることを予定していたとでも言おう。
見通しが甘かったなどと正直に言う必要はないからね。

そうしたら,予備試験も制限を検討し始めよう。
彼らは心が貧困なのだから,ロースクールで再教育をする必要がある。
それで,ロースクールに法曹志願者を入れる。

修習は短縮しよう。
大量の修習生をさばかなくてはならないからね。
短くなった修習における法曹養成は,ロースクールに引き受けさせよう。
ロースクールにそんな教育機能はないだって?
法廷教室で1,2回授業をして,前期修習を代替したと言っておけば良い。
大衆に本質はわかりっこないさ。

ロースクールが赤字になったら,修習を無給にしよう。
その財源をロースクールに回すんだ。
貸与制にすれば,修習生が生活できないということはあるまい。
法曹志願者の減少に拍車をかけるかもしれないがね。

いよいよ法曹志願者の減少が深刻になったら,ロースクールを集中改革しよう。
教育の質をあげて,司法試験合格率の上昇を目指すんだ。
え?旧司法試験は合格率3%だったのに大勢の受験者を集めていただろうだって?
ハハッ,君は鋭いな。ひょっとして,ロースクールで教育を受けたのではないかね。

需要を読み違えて大量の弁護士を作れば,就職難になるかもしれない。
だが,法廷以外にも企業や地方自治体など,弁護士の活動領域を広げていかなくてはならない。
ロースクールを維持するためには,大量の学生を入れて卒業させなくてはならないから,そう言っておこう。
なに,逃げ切り世代の弁護士には関係ない話だから,彼らの一部をロースクール推進派として抱き込めば良い。
ただ,『弁護士の収入は300万円でよい』などと,味方に向かって弾を撃つような愚か者もいるから,注意しなくてはならない。
活動領域が広がれば,あくまで弁護士の収入は魅力的。それを忘れてはならない。」

旧司法試験は尋ねた。
「それからどうなるの」
「それから? そのときは本当にすごいことになるよ」
と法学者はにんまりと笑い、

ロースクールには大勢の受験者が殺到する。
弁護士は人気があり,優秀な若者のあこがれの職業になる。
魅力的な収入が期待でき,高い社会的ステータスが認められるようになる。」

元ネタ

メキシコの田舎町。海岸に小さなボートが停泊していた。
メキシコ人の漁師が小さな網に魚をとってきた。
その魚はなんとも生きがいい。それを見たアメリカ人旅行者は、
「すばらしい魚だね。どれくらいの時間、漁をしていたの」 と尋ねた。

すると漁師は
「そんなに長い時間じゃないよ」
と答えた。旅行者が
「もっと漁をしていたら、もっと魚が獲れたんだろうね。おしいなあ」
と言うと、
漁師は、自分と自分の家族が食べるにはこれで十分だと言った。

「それじゃあ、あまった時間でいったい何をするの」
と旅行者が聞くと、漁師は、
「日が高くなるまでゆっくり寝て、それから漁に出る。戻ってきたら子どもと遊んで、
女房とシエスタして。 夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、
歌をうたって…ああ、これでもう一日終わりだね」

すると旅行者はまじめな顔で漁師に向かってこう言った。
「ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得した人間として、
きみにアドバイスしよう。いいかい、きみは毎日、もっと長い時間、
漁をするべきだ。 それであまった魚は売る。
お金が貯まったら大きな漁船を買う。そうすると漁獲高は上がり、儲けも増える。
その儲けで漁船を2隻、3隻と増やしていくんだ。やがて大漁船団ができるまでね。
そうしたら仲介人に魚を売るのはやめだ。
自前の水産品加工工場を建てて、そこに魚を入れる。
その頃にはきみはこのちっぽけな村を出てメキソコシティに引っ越し、
ロサンゼルス、ニューヨークへと進出していくだろう。
きみはマンハッタンのオフィスビルから企業の指揮をとるんだ」

漁師は尋ねた。
「そうなるまでにどれくらいかかるのかね」
「二〇年、いやおそらく二五年でそこまでいくね」
「それからどうなるの」
「それから? そのときは本当にすごいことになるよ」
と旅行者はにんまりと笑い、
「今度は株を売却して、きみは億万長者になるのさ」
「それで?」
「そうしたら引退して、海岸近くの小さな村に住んで、
日が高くなるまでゆっくり寝て、 日中は釣りをしたり、
子どもと遊んだり、奥さんとシエスタして過ごして、
夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、
歌をうたって過ごすんだ。 どうだい。すばらしいだろう」

お金持ちの不思議。 : ひろゆき@オープンSNS
http://hiro.asks.jp/9161.html