タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

再々々度,岡田和樹弁護士よりコメントを頂きました(某青田刈り事務所についてなど)

ご指摘を頂きましたので、再度返答致します。

続きものになりますので、前回の岡田氏からのコメントと、コレに対する私の返答は、念のため、末尾にコピペもしておきました。

岡田和樹 2013/08/01 23:52
これは答えになっていないです。増員するかどうかが問題ではなく、「受験者の能力ではなく、需要がないことを理由に、職業選択の自由を制限できるのか」ということです。これは許されないというのが、法律家の常識だと思いますが。また、需要が予測できる、というのは、世の中を静的にみるからです。弁護士が年収300万円で雇えるとなれば、需要は劇的に増えるでしょう。とにかく、あなた方のような論理で、法科大学院を出ても弁護士になれない人がいるというのは、本当にひどい話です。しかし、これ以上、話しても通じないでしょうから、これで終わりにしましょう。返事は不要です。では、さようなら。

「受験者の能力ではなく、需要がないことを理由に、職業選択の自由を制限できるのか」ということです。

できるに決まっています。

公認会計士試験でも、就職先がないので合格者を減らしました。
岡田氏は、これも憲法違反というのでしょうか?

法曹養成には、ロースクール、修習と税金がかかっています。
岡田氏によると、需要もないのに法律家を養成して、食えない弁護士は廃業せよ、という主張らしいですが、その税金の浪費を、国民にどう説明するのでしょうか。まったく意味が分かりません。

より法的に言えば、法曹養成のための設備の整備を国家に要求することになるので、職業選択の自由の請求権的側面、社会権的側面が問題となります。

そうであれば、国家の裁量の幅が大きくなります。
需要がないので、税金を使ってまで法曹を養成しない、というのは、至極合理的なので、これを違憲とするのは困難でしょう。

他方で、岡田氏は答えていませんが(答えられないのでしょうけれど)、職業選択の自由をいうのであれば、ロースクールの制約の方が、よほど問題が大きいでしょう。
職業選択の自由自由権的側面が問題となるからです。
ロースクールがなくなれば済む話ですので、税金がかかるどころか、節約になります。

予備試験組の弁護士(つまりロースクールを経ていない弁護士)が今後増えて、立派に仕事をされるでしょう。
そうなると、「ロースクールがなくても弁護士業務をやれるではないか」「一体、何のための制約なのか」「不合理な制約ではないか」という話に、ますますなってくると思います。

これは許されないというのが、法律家の常識だと思いますが。

そうですね。
正しく考察すれば、ロースクールが許されないというのが、法律家の常識という結論になると思います。

弁護士が年収300万円で雇えるとなれば、需要は劇的に増えるでしょう。

失礼ですが、これは、何かのギャグか何かなんでしょうか。
ロースクールと修習の貸与制で、弁護士になるのに何百万というコストがかかるのに、就職後に年収300万円しか得られないとしたら、ほとんど志願者はいなくなるでしょう。
普通に就職しても、それくらいの年収であれば得られるからです。

この点は、以前のエントリーでも触れているので、再度、掲載しておきます。

法科大学院に何百万という学費を払っているのですから,少なくとも同年齢の社員以上の収入を求めるのが当然でしょう。
相応の収入を得られる見込みがないなら,高いコストをかけて弁護士を目指す志願者は激減するでしょう(実際に激減しています)。

学費ウンヌンが弁護士の個人的な家計の話としても,一般社員と同じ=プロフェッショナルとしての技量への対価がない,というのは,おかしいのではないでしょうか。

企業としても,同年齢の社員とあまり変わらない給与しか払いたくない,というのであれば,弁護士資格や法科大学院の教育結果に価値を感じていないということです。

筆者がこのような主張をされるのであれば,まず筆者の事務所で,弁護士の報酬を,同年齢の一般社員と同程度にしてみて,感想を聞いてみてはどうでしょうか。

http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20120930/1348981923

あなた方のような論理で、法科大学院を出ても弁護士になれない人がいるというのは、本当にひどい話です。

岡田氏の主張によると、弁護士業界は、弁護士になっても、「食える食えないは、なった後で自分で決めることでしょう。」というふうになるらしいです。
そのほうが、何百万という学費を払い、何年という時間、勉強した若い弁護士にとって、よほどひどい話のような気がするのは、私だけでしょうか。
また、現状は、ロースクールの設計者が、合格率7〜8割と安請け合いして学生を入学させたけれども、見込み違いでそれほど合格者を増やせなかったので、入学者と合格者の差の分だけ不合格者が大量に出てしまった、というだけの話しだと思うのですが。

また、東大の井上委員によると、司法試験の本質は資格試験であって、その合格者は、司法試験委員が、受験者の資質を見て決めており、政治的に増減の調整はされていないらしいですよ。
(それが2000人という数字であり、これを尊重しろと強調されています。実はここには大きなツッコミどころがありますが、話がそれますのでこでは触れません。)

つまり、「法科大学院を出ても弁護士になれない人がいる」というのは、ロースクール設計者のせい、司法試験委員のせい、または、その学生の(実力が不足していた)せい、ということになります。
増員のペースをもっと緩やかにすることを主張している人たちは、責任はないと思いますが、どうなのでしょうか。



ここで1つ指摘したいのですが、弁護士の需要が伸びないのは、一部の大手事務所の姿勢にも、その原因があります。

弁護士大増員は失敗であった、使える新人弁護士は、上位の一部の弁護士だけである、と言わんばかりに、優秀な若い弁護士を青田刈りしており、下位合格者や下位ロースクール生の価値をまったく認めようとしない、一部の事務所のことです。

このような司法試験における上位層は、旧司法試験の合格者層と同じです。
司法制度改革に賛成するならば、大増員によって増えた下位層こそを活用しなければ、改革の意味がありません。

まったく、弁護士大増員論者にとっては、敵のような事務所です。
しほうせいどかいかく の りねん を まったくりかいしておらず、ゆるせませんな。
その こころのひんこんさ は、ばんしにあたいするでしょう。

例えば、このような事務所があります。なお、年収が300万であるかどうかは不明です。

フレッシュフィールズ法律事務所
http://www.freshfields.com/en/global/

採用情報

フレッシュフィールズブルックハウスデリンガー東京オフィスでは、グローバルビジネスの分野で活躍できる熱意のある方からのご応募を積極的に受け付けております。

司法試験を受験された方の応募方法は以下の通りです。

採用募集要項

応募対象者
平成25年度 司法試験受験者

応募受付期間:
受付中

応募方法:
当事務所での採用を希望される方は、下記の書類をご送付ください。書類審査後、面接の詳細についてご連絡させていただきます。
尚、お送りいただいた応募書類は返却いたしませんので、予めご了承ください。

応募書類:
1. 履歴書(カラー写真貼付)
2. 学部及びロースクールの成績証明書(コピー可) 
3. 志望動機:フレッシュフィールズブルックハウスデリンガー法律事務所を希望される理由(書式自由)
4. 平成25年度司法試験の短答式試験成績通知書のコピー(後日追完可)

郵送先:
〒107-6336
東京都港区赤坂5-3-1 赤坂Bizタワー36階
フレッシュフィールズブルックハウスデリンガー法律事務所
修習生採用担当 宛
http://www.freshfields.com/ja/japan/careers/

応募対象者 が、司法試験合格者 ではなく、司法試験受験者 となっています。

つまり、今年受験して、合格待ちの受験者です。

合格発表が待ちきれないくらい、のどから手が出るほど、優秀な若手を欲している様子が伺えます。
いわゆる青田刈りです。

ロースクール名だけを見て、選考しているのでしょうか?
まさか予備試験合格者を、優遇したりしていないでしょうね……。
仮にそうしていたとしたら、それこそロースクールの全面的な否定になります。

皆が皆こんな事務所ばかりだとしたら、下位合格者は就職できなくなってしまいます。
法科大学院を出ても弁護士になれない人がいるというのは、本当にひどい話です。」という岡田氏の批判は、まさにこのような心得違いの事務所にこそぶつけるべきでしょう。
下位合格者だろうとなんだろうと、ロースクールのことを考えれば、黙って採用すべきです。
年収は300万円でいいですので。

このような採用担当者は、いったい なにをかんがえているのでしょうか。

こうした自分の事務所の採用活動のことを、パートナー弁護士は、どれくらい把握して、どのように考えているのでしょうか。



と思ったら、おや?、ここのパートナー弁護士に、どこかでみたようなお名前が……。
同姓同名の人って、意外といるんですよね。

岡田 和樹

パートナー

日本

東京オフィスのパートナー。

http://www.freshfields.com/profiles/Kazuki_Okada/?Region=global&language=en&LanguageId=1041

これ以上、話しても通じないでしょうから、これで終わりにしましょう。

それについては、私も同意します。
ご自分がパートナー弁護士をされている事務所で、修習生(にもまだなっていないような人)の青田刈りをしていて、下位合格者などいらん、と言いながら、同じ口で弁護士大増員をおっしゃって、下位合格者の増員を主張される。
私程度の頭の構造では、到底理解が追いつきませんので。

返事は不要です。

お気遣いありがとうございます。
ただ、このブログは私の趣味でやっておりますので、書きたいときは書いて、そうでないときは書かないというように、表現の自由を行使して、自由にやっております。

では、さようなら。

そんじゃーね。

                                                                                                                      • -

岡田和樹 2013/07/21 20:55
回答ありがとうございます。「最近の弁護士・・・」は、趣旨は分りました。賛成はしかねますが。しつこいようですが、あなたが答えていないのは、「法的サービスに対する需要は予測できるのか。」という点です。「少しづつ増やす」ということからすると、「予測できる」という立場なのでしょうね。しかし、しかし、それには何の科学的根拠もないと思います。私が言いたいのは、そんないい加減な予測に基づいて、「職業選択の自由」を制限できるのか、という単純な話です。

tadasukeneko 2013/07/27 08:57
コメント頂きありがとうございます。
簡潔にお答えしたいので,コメントでお答えします。

>「法的サービスに対する需要は予測できるのか。」という点です。

その時点での需要の状況は,修習生の就職状況を見れば,おおよそ分かると思います。
ここから,近い将来の需要は予測可能でしょう。

過払いバブルの例外を除けば,大きな需要の増減はない業界ですので。

仮に,法的需要を「予測できない(または,予測が著しく困難である)」という見解に立つとしても,だから「大幅に増員する」という見解には結びつかないかと思います。

需要がどうなるのか分からないのに,供給を大きく増やす,ということですから,かなりリスキーかと感じます。

>「職業選択の自由」を制限できるのか、という単純な話です。

職業選択の自由」の制限が問題というのであれば,ロースクールの廃止を検討することになると思います。

一発試験方式という,より制限的でない方法がある以上,経済的,時間的負担の大きいロースクールを受験要件とすることは,「職業選択の自由」の制約であることは間違いないでしょう。

そして,その制約の合理性が,厳しく審査されるべきと思います。

今後,(ロースクールの制約を受けなかった)予備試験組の弁護士が増えてきますが,彼らの法曹としての仕事ぶりが問題ないのであれば,ロースクールの制約は不合理な制約と結論付けられると思います。

(なお,仮に予備試験組の弁護士がダメであっても,ロースクール組がさらに輪をかけてダメな場合は,やはりロースクールの不合理制が推認されます。)