タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

法科大学院におけるオンライン授業実施の模索が始まる

法科大学院で,オンライン授業の導入の検討が始まったようです。

文科省法科大学院でのICT活用に関する調査研究の入札公示 | ICT教育ニュース

文部科学省は、先導的大学改革推進委託事業の「法科大学院教育におけるICTの活用に関する調査研究」の一般競争入札を公示した。

誰もが法科大学院で学べる環境を整備するために、地方在住者や働きながら法曹を目指す社会人が、オンライン授業を通じ、法科大学院で学ぶ機会を適切に確保することが課題となっている。

これを受け、本調査研究では、法科大学院での討論や質疑が可能なオンライン授業の本格的な普及に向け、ICTを活用したオンライン授業の調査研究を行う。

http://ict-enews.net/2015/08/12mext-4/

なお,「ICT」とは,いわゆる「IT」と同義の言葉のようです。

ICTとは|情報通信技術|Information and Communication Technology - 意味/解説/説明/定義 : IT用語辞典

「IT」(Information Technology:情報通信技術)もほぼ同義として用いられ、日本ではITの方が定着しているが、国際的にはICTの方が通りが良い。総務省の「IT政策大綱」が2004年から「ICT政策大綱」に名称を変更するなど、日本でも定着しつつある。

http://e-words.jp/w/ICT.html

記事下の,関連URL > 仕様書(PDF) を見ますと,目的はあくまで「地方在住者」や「働きながら法曹を目指す社会人」への支援とされています。

2.目的
地方の法科大学院の組織見直しが進むとともに、法科大学院における社会人学生が減少傾向にある現状に鑑み、誰もが法科大学院で学べる環境を整備する観点から、地方在住者や働きながら法曹を目指す社会人が法科大学院で学ぶ機会を適切に確保することは喫緊の課題である

この課題を克服するためには、ICTを活用したオンライン授業を通じ、地方の法科大学院において、先端的かつ多様な授業科目が提供されるようにすることや、夜間開講を実施する法科大学院において、社会人学生が仕事と両立できるような学修支援体制を構築することが重要である。

そこで、平成26年10月の中教審大学分科会法科大学院特別委員会による提言を踏まえ、同年11月に公表した「文部科学省における法科大学院の強化と法曹養成の安定化に向けた抜本改革の推進」に基づき、討論や質疑が可能なオンライン授業の本格的な普及に向けて、法科大学院関係者の協力を得つつ、ICTを活用したオンライン授業の調査研究を行うことを目的とする。

それ以外の,就労していない都市部の若者は,これまで通り実際の通学が必要,ということなのでしょうか。

これ自体は良い取り組みのように思えますが,いかんせん遅すぎると感じます。

windows95発売前ならまだしも,1人1台スマホや携帯を持ち,多くの人がAmazonなどのネット通販で買いもするこの時代,オンライン授業など,すぐに思いつくはずです。
ロースクールが始まった10年前だって,同じでしょう。

また,入札するとのことですが,「同時性・双方向性を確保したサテライト形式等によるオンライン授業」をやりたいだけなら,Googleハングアウトのテレビ会議・テキストチャットを使えば,システム部分は格安でできます。
天下のgoogleの製品であれば,システムの安定性は折り紙つきでしょう。

Google ハングアウト - ビジネス用のテレビ会議・テキストチャット
https://www.google.com/intx/ja_jp/work/apps/business/products/hangouts/

これら1から作ったら,莫大な費用がかかるのではないかと思います。

Google Appsの利用が先進的すぎるとしても,オンライン上の教育サービスは,このご時世にないわけではありません。
以下のschoo(スクー)などは,授業中のチャットもでき,講師との同時性・双方向性あるやり取りができて,面白いです。

東京大学 i.school 人間中心イノベーション概論】1限目:イノベーション創出における基礎と方法論 横田 幸信 先生 - 無料動画学習|schoo(スクー)
https://schoo.jp/class/522


私は入札の仕組みに詳しいわけではないので,文科省も自由に契約できるわけではないのかもしれませんが,大手が落札して,格好悪いUIの使い勝手がイマイチのシステムに,多額の税金を費やすことにならないように願います。



余談ですが,選択式の小テストなどであれば,同時編集できる表計算ソフト(エクセルのようなソフト)があれば,授業中に即時の答え合わせとクラス内の順位が分かるようにすることも可能です。

例えば,正誤問題があったとして,○であれば「1」,☓であれば「2」を,自分のノートパソコンなどで学生に入力してもらいます。

そして,正解も,先生が,○を「1」,☓を「2」として入力しておきます。

「学生の答え」から,「正解」を引くと,正答すれば両者が同じ数ですから,「0」になり,誤答なら「0以外」になります。

if関数で,「0」を「1」(点)に,「0以外」を「0」(点)に変換すれば,得点になります。

複数の問題があれば(例えば10問など),得点の列または行を合計(sum関数)すれば,その学生の得点になります。

あとは,(エクセルなら)rank関数を使うなど工夫すれば,クラス内の順位を出すことは容易です。

自分の成績が他の人に分かってしまうのが困るのであれば,テスト毎に,「小テストナンバー」を各学生にランダムに付与して,この「小テストナンバー」で成績を発表するようにすれば,自分の順位や他の学生の成績分布は確認できる一方,どの学生がどの成績であるかは隠すことができます。

・・・なんてことを,かつてロースクールで小テストを受けていたときに妄想していたことを思い出しました。

私はロースクールはサービス業と思っています。
丸暗記などの弊害を生じない形でも,学生の学修支援をすることは,工夫次第でいくらでもできるのです。

「予備校的にならない」ということを言い訳にして,学生へのサービス精神が欠けている,にもかかわらず高い学費を取っている,そうしたところが,ロースクールがリスペクトされない理由の1つなのではないかと思います。