タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

法科大学院における授業の実態

学生が,「株式会社で、取締役を選任するのがどこか」という教員からの質問に答えられなかったという,以下のブログを拝見させて頂きました。

ロースクール授業参観記〜その5(イデア綜合法律事務所 坂野真一弁護士)
http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2012/11/26.html

結構,こんな感じだと思います。
(これが特別なケースとは思いません)


そもそも,教員は学者ですし(実務家教員もいらっしゃいますが),学生も,ボリュームゾーンは20歳台から30歳台でしょうか。
教員は同じですし,学生についても,20歳の大学生と比べて,地頭などの素の能力がアップしているわけでもありません(むしろ,低下している)。
こうした人々で授業をするのですから,大学の授業とそれほど違うものにはなるわけがありません。

違う点があるとすれば,わざわざ苦労してロースクールに行くだけあって,学生のモチベーションは大学のそれよりもかなり高いです。

授業の方法として,双方向ウンヌンと言われますが,それが機能しないことは以前に書いたことがあります。

ソクラテスメソッド不要論
http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20121021/1350786186

これは想像ですが,ロースクールを設立して初期の頃は,もっと授業中の質問を多くしていたけれど,学生があまりに答えられないので,教員の方もあきらめてしまったのではないかと思っています。

ロースクールが(大学と比べて)特殊なことはしていないし,未修者を1年で既修者レベルに引き上げられないのは,その通りだと思います。

だからロースクールの制度は問題がある・・・と言えば,まったくその通りなのですが,私が気になるのは未修者の立場です。
ロースクールについていけば,司法試験に合格する」と信じて,うっかり2年〜3年過ごしてしまったら,死亡率(不合格率)はかなり高くなると思います。

司法試験に受からない未修者を,どこで断念させるか,というのは,1つのテーマだと個人的には考えています。

ネット上で見たどなたかの(複数の方の)意見ですが,択一合格をロースクール入学の要件にするのは,この意味で良いアイデアだと思います。

「株式会社で、取締役を選任するのがどこか」などという基本的な知識は,学者を雇って授業を受けて勉強するほどのことではないので,入学前の勉強で1人で本を読んで勉強すればいいですし,入学後は,学生が一通りの知識を身につけているので,学者も高度な授業がやりやすいでしょう。

そして,択一に受からないような未修者は,高い学費を払う前に,この時点で法曹の道を結果として断念させるのです。

未修コースがなくなり,すべてが(旧)既修コースとなるので,制度がシンプルになったり,学校間の比較がやりやなくなったり,派生的なメリットも出てくるでしょう。

もっとも,ロースクールを廃止して,受験回数の制限も撤廃するのがベストだと思いますが。
未修者,既修者を問わず,低いコストで,規制を最小限にして,自由に法曹への道に挑戦させればいいでしょう。

事前に,ロースクール卒業が要件だ,何だと余計な規制をせず,司法試験に自由に新規参入させればいいのです。
仮に問題ある弁護士が出てきたとしても,弁護過誤訴訟で対応すればいいでしょう。
ロースクールで法曹倫理の授業を30時間受けさせる,というのも面白いかも)
それがこれからの社会が目指す事後規制社会と言うものです。