以下の資料に書いてありました。
法科大学院等特別委員会(第84回) 配付資料:文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/041/siryo/1401206.htm
【資料2】これまでの法科大学院等特別委員会における委員の主な御意見 (PDF:179KB) PDF
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/041/siryo/__icsFiles/afieldfile/2018/02/07/1401206_002_1.pdf
予備試験受験者の取り込み
p3
○ 今後既修は3+2や4+2のいずれであれ一貫コースに移行するだろうが、予備試験を受験する者をいきなり取り込むことはできず、一貫コースを運用する中で結果がついてくれば、取り込めていくのではないかと思う。
法曹コース構想は,ロースクールの時間的負担を軽減する話かと思っていたので,予備試験受験者を取り込むという話が出てきて,何のことかと思いました。
要するに,学部段階で優秀な学生は,ロースクールに行かず予備試験へ流れてしまうので,学部に法曹コースを設ければ,法曹コースからこれに続くロースクールへ取り込めるだろう,という話らしいです。
p4
○ 法学部と法科大学院の連携を、複数の大学が協定を結んだ上で進めるに当たり、学生の流動性にあまり制約がかかるとなれば、法科大学院進学よりも予備試験を選択することになることを懸念する。ついては、流動のある程度担保された制度の仕組みが必要と考える。
こちらの発言も,学生が予備試験へ流れることを意識しています。
たとえば,A大学からは,同じ大学のAロースクールにしか進めないという硬直的な制度を仮に想定すると,他のBロースクールに行きたいA大学の学生が,やむなく予備試験へ流れてしまう,というような話らしいです。
p4
○ 現在検討している3+2では、予備試験を受けている層は法科大学院に来ないと思う旨の学生から感想を聞いた。さらにどういう方策があるかまで議論を深めることができれば有り難い。
しかし,学生の感覚からは,予備試験を受けるような層は,3+2では,ロースクールに行かないそうです。
下の発言にもあるように,法曹コースではかなり厳しく勉強しなければならないらしいですが,そんなにガリガリゴリゴリ勉強するのが5年も確定し拘束されるのであれば,学部1年から予備校に通ってガリガリゴリゴリ勉強して,予備試験を受けた方が,早期に合格できる可能性もありますし,仮に撤退することになったときにリスクが少ないと思います。
p6
○ 法曹コースにおいてはかなり集中して法律に関する学修を行うべきではないか。あまりに緩やかでは、あえて法曹コースを創設する意味は無いのではないか。
法曹志願者減少の原因
p2
○ 一番の課題は法曹志願者の減少。その原因は費用と時間的な負担が大きい。時間的負担の軽減を進める必要がある。一方、既修者中心となると、多様なバックグラウンドを持つ者が挑戦しにくくなる誤ったメッセージとなるおそれがある。
法曹志願者の減少の原因を,費用と時間的負担と分析されていますが,本当の原因は,弁護士の経済的価値の毀損ではないでしょうか。
10年前の10倍増 弁護士が独立より「企業内」を目指す理由 (日刊ゲンダイDIGITAL) - Yahoo!ニュース
では、その待遇はどうなっているのか? これも日弁連調査によると、企業内弁護士の最も多い年収帯は「500万〜750万円」。つまり、普通のサラリーマンと大差はない。実際、8人の企業内弁護士を抱えるソフトバンクは、基本的に給与は一般社員と一緒。所属の弁護士会に支払う弁護士会会費(東京弁護士会は年間50万円ほど)を肩代わりしてくれるだけだ。
資格取得の難易度に対して給与が見合わない気もするが、今や弁護士の平均所得(収入から経費を除いたもの)は、わずか907万円。5年未満の弁護士にいたっては、448万円という薄給だ。ソフトバンク社員の平均年間給与1164万円というのを考えれば、普通の弁護士になるより安定した生活が待っている。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180208-00000019-nkgendai-life
インハウスの例ですが,多額の学費を払って,1日10時間勉強するなど数年間プライベートな時間を犠牲にして,それで「給与は一般社員と一緒」なら,わざわざ弁護士になるメリットはないでしょう。
それならば,最初から一般社員として入社した方がいいと思います。
また,旧司法試験でも,合格者の平均勉強期間は,時期によっても違いはありますが,5年〜6年だったときもありました。
ロースクールの既修と比べると,ロースクールが2年ですから,修了後3年〜4年目の合格となります。
旧司法試験も,決して,時間的負担が小さかったとは言えないでしょう。
予備校の利用も必須でしたから,ロースクールほどではないかもしれませんが,経済的負担もそれなりにありました。
それにも関わらず,旧司法試験が5万人の出願者を集めたのは,やはり弁護士の経済的価値に魅力があったからだと思います。
法曹志願者減少の原因を見誤っていたら,どんな対策をとっても,法曹志願者の回復にはつながらないと思います。
地方大学の法曹コース
p2
○ 法曹の多様性をしっかりと確保するため、地方の法学部や法科大学院をどのようにして確保するかも重要な論点となるのではないか。
p3
○ 法科大学院を持っていない地方大学の法学部から法科大学院に進む途を示すことが非常に大事である。(再掲)
p5
○ 法科大学院が廃止された地方や、立地しない地方における法曹志望者をどのように吸収するかについても考慮すべき。他大学の法学部に置かれる「法曹コース」からの進学を考えるのであれば、教育課程をある程度標準化せざるを得ないのではないか。
p7
○ 法科大学院は設置できなくとも、学部に法曹コースを設置することで、地方在住の者に法曹を目指す機会を提供することができるのではないか。
地方にもかつてロースクールがありましたが,多くが廃校の憂き目にあっています。
それが,学部の「法曹コース」だと,うまくいくのでしょうか。
新制度を作れば,なんとなく人が集まってきてお金を払ってくれる,と思うのは,現実を甘く見ているとしか思えません。
学部の「法曹コース」であっても,選択者が1ケタ,さらには1ケタ前半になれば,独自のカリキュラムを組んで教員を配置するコストが効果に見合わなくなり,法曹コースの廃止ということもありえるのではないでしょうか。
法科大学院の成績が同じでも,既修者に比べて,ダブルスコアで結果が振るわない未修者
p13
○ 法科大学院の成績が同じである人達が司法試験を受けると、未修コースの学生の方がダブルスコアで結果が振るわない。司法試験を法科大学院教育に合わせてくれということはないが、法科大学院と適切な連携を図ったものにより一層なっていただきたい。
個人的な経験からしても,8科目の膨大な範囲を1度に問われる司法試験本番の成績が,本当の実力だと思います。
ロースクールの期末試験などは,範囲が狭いですし,授業をした教員が出題するわけですから,授業のノートを見ることが対策になるなどして,対応しやすいです。
そうした期末試験で,「実力のある既修者」が,未修者と同じような成績になってしまうのは,要は司法試験と関係がないので手を抜いているとか,いろいろな理由があると思います。
以前,弊ブログでもこの点を検討したことがありました。
テクニックが要求される法科大学院 - タダスケの日記
http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20130201/1359715211
予備試験合格者が中退することで空洞化する法科大学院教育
p13
○ 予備試験合格者や予備試験経由の司法試験合格者のような優秀な学生こそ法科大学院において多様な教育を受けることが望ましいと考えられるが、次々に法科大学院を中退してしまうため、逆に法科大学院教育の空洞化を招くなど、法科大学院教育に大きな影響を及ぼしている。
勉強は所詮,個人でするもので,団体戦ではないですから,優秀な人が中退したからといって,何が空洞化するのかよくわかりません。
それほど優秀な学生が法科大学院教育に良い影響を及ぼしているなら,バイト代くらい払うべきではないでしょうか。
なぞかけ
甲「法科大学院制度とかけまして,山の旅館と解きます」
乙「そのこころは?」
甲「改築,改造を繰り返して,もはや原型を留めていません」