タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

裁判官・裁判所職員の不祥事の発表の有無がわかる文書(データを含む)が,1年未満で廃棄される裁判所

某岡口Jがtwitterでやらかした件の記録も,廃棄されている模様(朗報)。

裁判所を法の光で照らすために,司法試験合格者を増やして,裁判官を増員すべきですね!

法曹養成をめぐる「時間」と「費用」の問題(中本和洋・日弁連会長,弁護士ドットコムニュース)

ーー次に、その日本の司法を担う人材の問題に移りたい。2017年の司法試験の受験者数は前年比932人減の5967人で、法曹を目指す人が減少している。法曹養成についてどのように考えているのか。

はなわ > 法曹志望者が減っていることについては、法科大学院での教育に時間と費用がかかることが、大きな理由と指摘されています。

土田 > 旧司法試験時代から,「資本試験」と揶揄されて,お金も時間もかかっていたけど,出願者が5万人いたけどね。

はなわ > また、司法試験合格者の8〜9割は弁護士になりますが、弁護士業界は競争が激しくなっており、昔のように「試験に受かればなんとかなる」という状況ではなくなっています。

土田 > 弁護士激増策により弁護士の経済的価値が下落して,ロースクールの負担にペイしないんでしょうね。

はなわ > 司法試験合格はスタートであって、ゴールではありません。弁護士は雇用が保証されておらず、サラリーマンのように退職金をもらえるわけでもありません。自分の努力で生きていかなければいけません。時間と費用をかけてなりたいという職業ではない、という認識が一部の人たちの間にあるのかもしれません。

土田 > 「一部の人たち」ではないから,法曹志願者が9割も減っているんですけどね。

はなわ > でも、私はこんなに素晴らしく魅力的な仕事はないと思っています。

土田 > 魅力を食べて,生きていけないですからね。

はなわ > 自分で仕事が選べ、社会から評価されます。

土田 > 仕事をはじいたら,報酬ももらえませんけどね。

はなわ > 最近では、企業内弁護士になる人もいれば、地方公共団体や中央官庁で働く人もいて、キャリアの積み方も様々です。

土田 > 任期付きだと,任期満了後は放り出されますけどね。

はなわ > 企業で会社員として働いてから、弁護士業に戻ってくることもできます。

土田 > 弁護士としては,ほぼ新人として厳しい競争の中でやっていくことになるけどね。

はなわ > また、報酬が明確になっていて、

土田 > 会社員だって,給与くらい明確ですよね。

はなわ > 自分の努力が目に見えることも弁護士の良いところです。

土田 > 努力が報酬に必ず結びつけばいいですが,結びつかないこともあるのが,自営業の厳しいところですけどね。

ーー法科大学院を修了しなくても司法試験の受験資格が得られる「予備試験」の合格者が増えている。2017年の合格者は444人で、前年よりも39人増え、過去最多を更新した。

はなわ > 元々は働きながら司法試験合格を目指す社会人や経済的事情がある人のためだったものが、現状は法科大学院生や大学生のショートカットになっています。

土田 > ショートカットされてしまう,ロースクールに問題はないのですかね。

はなわ > 元々の制度趣旨から外れているため、実施状況を検証し、本来の制度趣旨を踏まえた運用となるようにしなければなりません。

土田 > 制度趣旨から外れた予備試験経由の法曹を,喜んで採用している大手法律事務所,裁判所,検察にも,抗議しないといけませんね。

はなわ > 法科大学院は、少人数・双方向的で密度の濃い教育を行い、理論と実務を架橋する幅広いカリキュラムを通じ、事実に即して思考する能力の養成に重きを置いています。

土田 > 合格率20%台の司法試験を控えて,そんなことをやるより予備校の模擬試験を受けたほうがいいですけどね。

はなわ > また、実務家が積極的に関与しており、展開・先端科目やローヤリングなど、法科大学院でしか学ぶことのできない分野が多数あります。

土田 > 教室でやる授業なんて,所詮,畳の上の水練ですよね。予備試験経由で早く合格して,お金をもらいながらOJTで学んだほうが,学べますよね。

はなわ > また、法科大学院を卒業すること自体のメリットもあります。最近では、法務部門の人材として、法科大学院修了生を積極的に採用しようとする企業が増えつつあるという報道もなされているところです。

土田 > 待遇が一般の社員と変わらなければ,経済的にロースクールを卒業することは,メリットどころか多大な負担でしかないですよね。

社内弁護士の基本的な給与や賞与は一般の正社員と同等(法曹養成制度改革連絡協議会 第5回協議会(平成28年10月17日開催)) - タダスケの日記
http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20161103/1478186236

はなわ > 2017年11月からの第71期司法修習生からは新たな給付制度が創設され、経済的負担の問題の一部が改善されました。

土田 > その前に,給費制廃止という改悪がありませんでしたっけ?その回復としてもはなはだ不十分ですよね。

はなわ > 今後は、もう一つの課題である「時間がかかる」という時間的負担の問題に取り組む必要があります。これについては、現在、文部科学省中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会において飛び入学・早期卒業の利用を念頭においた教育課程面の連携や法学部と法科大学院の間で事実上の「5年一貫コース」として運用していくなどの議論がなされています。

土田 > 時間的負担軽減の決定的な策のような騒ぎようですが,たった1年軽減されるだけですよね。改善見込みのデータ的裏付けもなく,また行き当たりばったりの弥縫策じゃないんですか。それに,社会人や他学部からの人材を受け入れるという司法制度改革の理念に反するんじゃないですか。

元ネタ

「日本の権利救済は世界で通用しない」日弁連・中本会長が語る司法の課題 - 弁護士ドットコム
https://www.bengo4.com/internet/n_7182/

ナイツの漫才 『ドラマ』
http://geininn-netatyou.com/wp/naitu/post-772/

参考

法科大学院離れの最大の要因は、司法試験合格率の低迷だ」2014/4/19付日本経済新聞 - タダスケの日記
http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20140419/1397923127

理念を後退させるロースクール(法科大学院「未修者3割」目標撤回 文科省方針:日本経済新聞)

多様な人材を養成するという理念を後退させるようです。

法科大学院「未修者3割」目標撤回 文科省方針  :日本経済新聞

文部科学省は15日、法科大学院の入学者について、3割以上は大学で法律を学んでいない「未修者」とする基準を撤廃する方針を明らかにした。未修者を中心に入学志望者が減り続けており学生の質を保つために基準が不要と判断した。

(中略)

04年に始まった法科大学院を巡っては、修了者の司法試験合格率が当初見込みの7〜8割に届かず、2割台に低迷。特に未修者コースは近年の合格率が12%にとどまり、入学者に占める未修者・実務経験者の割合は、17年度に25%と、5年連続で3割を下回る。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2470172015122017CR8000/

記事を見ますと,

未修者コースの入学志望者が減っている(不人気
未修者コースの司法試験合格率が低い(低合格率

を理由に,未修者コースの定員を政策的に確保することをやめ,そのために司法制度改革の理念が後退することを許容する,ということのようです。

この理屈をパラレルに適用すると,

予備試験の出願者が増えているのに対して,法科大学院の入学志願者は減っている(不人気
予備試験が毎年トップの司法試験合格率を叩き出しているのに対して,法科大学院の合格率は,はるかに低い(低合格率

のですから,たとえ法科大学院によるプロセス教育という司法制度改革の理念が後退するとしても,合格率の高い予備試験を推すべきであり,法科大学院の定員を政策的に維持することもやめていいように思われます。

あくまで法科大学院政策を推進するなら,せめて理念とともに殉じるべきと思いますが,法曹志願者を激減させた結果,法曹の質を低下させ,さらに理念を放棄してしまうのであれば,何も残らない,有害無益の制度となってしまわないでしょうか(反語表現)。

弁護士増員政策に役立たないロースクール


日本弁護士連合会│Japan Federation of Bar Associations:基礎的な統計情報(弁護士白書2016年版等から抜粋)
https://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/statistics/reform/fundamental_statistics.html

また,こちらの司法試験合格者数の推移を見ますと,旧司法試験の時代でも,最大1500人程度の合格者を出しています。

一方,今年は予備試験の合格者が444人でしたので,仮にその60%が司法試験に合格したとすると,266.4人が予備試験ルートの合格者となります。

全体の合格者が1500人と仮定すると,差し引き1233.6人が法科大学院ルートの合格者となります。

そうすると,百歩譲って,弁護士増員の方向性が正しいと仮定しても,旧司法試験の一発試験の制度と比べて,法科大学院制度は,増員政策に資する制度とも言えない状況になっています。

増員政策に役立たない
法曹志願者の激減を招いた
理念を安直に放棄する

というのであれば,法科大学院制度は,有害無益の制度と評価されてもやむを得ないのではないでしょうか。

参考データ

平成29年司法試験予備試験口述試験の結果
4 合 格 者 数 444人
http://www.moj.go.jp/content/001238840.pdf

司法試験予備試験合格者等に関するデータ一覧
http://www.moj.go.jp/content/001166781.pdf

常に「◯時◯分現在,お電話が繋がりやすくなっております。」と表示する法律事務所の債務整理広告

ネット上で,以下のような法律事務所の広告を見かけました。


過払い金請求の無料相談なら弁護士法人アディーレ法律事務所
https://www.adire.jp/lp/kabarai/1701_a.html

「12時36分現在,お電話が繋がりやすくなっております。」

と表示されています。

「事務所内の電話システムと連携して,電話が繋がりやすいか繋がりにくいかを調べて,サイト(webサーバ)に反映させるのは,かなり面倒だな」と思って,興味本位でソースコードを見てみました。

なお,例えばGoogle Chromeであれば,以下のような方法で,簡単にソースコードを表示させることができます。

ソースコードを表示する - Google Surveys ヘルプ

Ctrl+U(Windows)または ⌘-Option-U(Mac)を押します。
https://support.google.com/360suite/surveys/answer/6172725?hl=ja

該当の箇所は,以下のコードで表示されているようです。

<p class="msgTel"></p>

html上では,タグの間が空になっているので,JavaScriptなどをいじることで表示しているのでしょう。

そこで,headタグ内をを見ると,以下のように「time_change.js」というJavaScriptファイルを読み込んでいます。

<script type="text/javascript" src="js/lib/time_change.js"></script>

そこで,この「time_change.js」というJavaScriptファイルを見ると,以下の内容でした。

$(function(){
//時間判定処理

var dateAttr = new Date();
var hour = dateAttr.getHours();
var minu = dateAttr.getMinutes();

if((hour >= 10) && (hour < 22)) { $(".msgTel").html("※" + hour + "時" + minu + "分現在,お電話が繋がりやすくなっております。"); }
else { $(".msgTel").text("※本日の受付は終了いたしました。"); }
});

なお,以下のリンクからも直接コードを見ることができます。

https://www.adire.jp/lp/kabarai/js/lib/time_change.js

これを見ると,要するに,現在の時間と分(正確にはサイトにアクセスしたときのそれ)を取得し,時間が10時以上22時未満であれば,以下の文字列の「hour」のところに時間を,「minu」のところに分を入れて表示させるようになっています。

「"※" + hour + "時" + minu + "分現在,お電話が繋がりやすくなっております。"」

そして,もし10時以上22時未満でなければ,

「※本日の受付は終了いたしました。」

という文字列を表示するようになっています。


(受付時間外にアクセスしたときの表示)

これを見ると,事務所内の電話システムとの連携というものはなく,当該事務所の受付時間である10時から22時であれば,機械的に,現在の時間と分を表示し,続けて「お電話が繋がりやすくなっております。」という固定の文字列を表示するようになっています。

欺罔的な広告手法ではないか

「お電話が繋がりやすくなっております。」という表示は,反対の「電話が繋がりにくい状態」がありうることを意識させます。
これを見た閲覧者は,「電話がつながりやすい今のうちに電話しよう」と動機付けられると思われます。
しかし,電話が繋がりやすいのかどうか,電話システムの稼働状況をそもそも調べておらず,そうであれば事務所としては「電話が繋がりやすい状態であるかどうかはわからない」はずです。
それにも関わらず,「電話が繋がりやすい」と表示し,閲覧者に今この瞬間は「電話が繋がりやすい」と誤解させ,架電を誘引するのは,欺罔的な広告手法と感じます。
(万一,電話システムの稼働状況を調べていたとしても,サイトには「電話が繋がりやすい」と固定文字列を表示して,実態を反映しない表示をしているのであれば,閲覧者から見れば欺罔的でしょう)

宣伝に関する過去の懲戒審査

弁護士のネット広告に関する問題といえば,懲戒審査に発展した事例もありました。
もし,広告の宣伝文句に問題点があれば,当該事務所は反省し,万全の再発防止策をとるべきでしょう。

アディーレの宣伝に「懲戒審査を」 3弁護士会が議決:朝日新聞デジタル

アディーレ法律事務所は「景品表示法違反については反省し、再発防止策をとった。ただ、所属弁護士は宣伝への責任はない。いずれも弁護士会の懲戒には当たらないと考えており、懲戒委員会で経緯などを説明していく」としている。

http://www.asahi.com/articles/ASK4344FXK43UTIL01Z.html

実態として,この広告サイトは業者が作成しており,当該事務所の弁護士は内容をよく把握していなかったのかもしれないとも思っています。
しかし,自らの事務所の名前で広告を出している以上,業者とよくコミュニケートをとって意思疎通を図らなくてはなりませんし,少なくとも作成された広告を見てチェックすれば,この「電話がつながりやすいとの自動表示」にはすぐに気付いたはずです(私が気付いたように)。

もし,こうしたチェックも不十分であったとしたら,そうした姿勢,意識自体に多少の問題があるのではないでしょうか。

弁護士激増時代になり,当該事務所は弁護士の採用数も多く有名ですが,このような多数の弁護士を採って全国に支店展開を図る事務所は,この事務所以外にも出てくると思われます。

そうした新しいタイプの事務所のさきがけとして,うまいビジネスモデルを築くことができるのか,個人的に着目しています。

参考サイト

JavaScriptのDate オブジェクト についての解説ページです。

Date オブジェクト (JavaScript)
https://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/cd9w2te4(v=vs.94).aspx

「司法試験合格者1543人 17年、前年より40人減」日本経済新聞

今年の司法試験合格者は1543人でした。

司法試験合格者1543人 17年、前年より40人減  :日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG12HAS_S7A910C1000000/

「今年の合格者は1543人かぁ……
1500人だと弁護士激増が止まらないのに。
わかってるのかなぁ……」

参考記事

「17弁護士会が声明「司法試験合格者のさらなる減員を」「1500人でも供給過剰」」(弁護士ドットコム) - タダスケの日記

17弁護士会が声明「司法試験合格者のさらなる減員を」「1500人でも供給過剰」 - 弁護士ドットコム
https://www.bengo4.com/internet/n_5532/

弁護士数の話に戻って,弁護士人口の将来予測(シミュレーション) のデータがありました。
新規法曹を1500人に維持し続けた場合の数字です。

弁護士人口の将来予測(シミュレーション) (PDFファイル;1.3MB)
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/statistics/data/white_paper/2016/1-3-7_tokei_2016.pdf

弁護士人口 弁護士1人あたりの国民数
2016 37651 3491
2017 38658 3253
2018 38545 3167
2023 44397 2751
2028 49252 2402
2033 54016 2110
2038 58639 1863
2043 61781 1687
2048 63715 1556
2053 60486 1554
2061 57265 1496

2016年には,弁護士人口は37651人「弁護士1人あたりの国民数」は3352人です。
弁護士人口は,2048年に63715人とピークに達しますが,この頃から現行司法試験時代の弁護士も引退(想定)し始めるので,減少に向かいます。

もっとも,人口も減少し続けているので,「弁護士1人あたりの国民数」はさらに減少を続け,最終的には1500人を切って1496人となっています。

http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20170102/1483318571

昨年の合格発表についての弊ブログのエントリー

「司法試験、合格率横ばい22.95%35校は1割未満」:朝日新聞デジタル - タダスケの日記

http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20160908/1473316034

仙道的法科大学院(sl7)

「(法曹志願者は9割減ったけど)まだあわてるような時間じゃない」

           ヾヽ'::::::::::::::::::::::::::'',    / 時 .あ ま ヽ
            ヾゝ:::::::::::::::::::::::::::::{     |  間 .わ だ  |
             ヽ::r----―‐;:::::|    | じ て    |
             ィ:f_、 、_,..,ヽrリ    .|  ゃ る     |
              L|` "'  ' " ´bノ     |  な よ     |
              ',  、,..   ,イ    ヽ い う    /
             _ト, ‐;:-  / トr-、_   \  な   /
       ,  __. ィイ´ |:|: ヽ-- '.: 〃   `i,r-- 、_  ̄ ̄
      〃/ '" !:!  |:| :、 . .: 〃  i // `   ヽヾ
     / /     |:|  ヾ,、`  ´// ヽ !:!     '、`
      !      |:| // ヾ==' '  i  i' |:|        ',
     |   ...://   l      / __ ,   |:|::..       |
  とニとヾ_-‐'  ∨ i l  '     l |< 天  ヾ,-、_: : : .ヽ
 と二ヽ`  ヽ、_::{:! l l         ! |' 夂__ -'_,ド ヽ、_}-、_:ヽ

元ネタ

まだあわてるような時間じゃないとは (マダアワテルヨウナジカンジャナイとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%81%BE%E3%81%A0%E3%81%82%E3%82%8F%E3%81%A6%E3%82%8B%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AA%E6%99%82%E9%96%93%E3%81%98%E3%82%83%E3%81%AA%E3%81%84

Leading Law School | LL7

LL7とは、法曹養成に大きな実績をあげている7つの先導的法科大学院(Leading Law School)によるコンソーシアムです。

7つの先導的法科⼤学院が連携し、あるべき法科⼤学院教育の実践例について、その実像と魅⼒を総合的・多⾯的に発信します。また、各法科⼤学院の現状を発信するにとどまらず、法科⼤学院制度が直⾯している多くの課題について、「プロセスとしての法曹養成制度」を中核的に担う⽴場から議論し、その成果も広く発信して、法曹養成教育の展望を示します。
http://ll7.jp/

参考記事の紹介

それより,現在の法曹志願者激減というマイナス実績を残した人は,どのような責任を取るのでしょうか。

法科大学院 破綻する制度 | データ・マックス NETIB-NEWS

現在、全国の法科大学院では、募集の停止や大学院自体の廃止が相次いでいる。鳴り物入りで始まった司法制度の改革は、そもそもの人材需給の見通し自体が誤っていたというお粗末な理由で崩壊しようとしている。この間、法科大学院からの司法試験合格を夢見ていた学生たちのジャッジを誤らせた責任は、誰がとるのだろうか
http://www.data-max.co.jp/290731_dm1771_2/

無制限のロースクール設立を推奨していた佐藤幸治氏

佐藤幸治先生が,ロースクールの乱立について「ワシは悪くない」とおっしゃっていたそうです。

そこで,佐藤幸治先生が共著で書かれた「司法制度改革」を検証のため再読してみました。

司法制度改革

司法制度改革

p220
編集部
具体的には,そのような法科大学院にふさわしい教育が行われることを確保するために,一定の基準が定められるということになるのでしょうか。

井上
(略)
しかし,法科大学院は,そのような教育機関としての外形的な基準を充たしていればよいというだけのものではありません。
新しい法曹養成制度の中核として,そこを修了することが新司法試験受験の前提となるわけですので,その目的に適った内容・質の教育が行われることや,学生の成績管理や修了認定が厳格に行われること,意見書で求められているような入学者選抜が行われることなど,その制度趣旨にふさわしい質が確保されていなければなりません。
ところが,設置基準で,それらの実質にまでわたって詳しく規定することは難しいですし,また,それらの点の多くは,むしろ実際に立ち上がり,動き出してから,チェックする必要があります。
それは,性質上,教育機関としての法科大学院の教育や運営についての第三者評価の問題に属するものといえます。

ここは井上先生の発言部分ですが,ロースクールの質は,設置のときにチェックするのは難しいので,設立してから事後的に第三者評価でチェックするべきだ,とのことです。

p222
編集部
設置基準のほうは,例えば建物の広さや教員の数などを決めることになるのですね。

佐藤
これは先ほど井上さんが言及されたことですが,設置基準は不当な参入規制にならないようできるだけ必要最小限の外形的なものにとどめ,具体的なカリキュラムや教育方法の内容,成績評価・修了認定のあり方等々,つまり法科大学院の質の保証面については,第三者評価(適格認定)のほうに委ねようというのが,基本的なスタンスです。

先の井上発言を受けての佐藤先生の発言です。
設置基準は必要最小限,すなわち設立時のハードルは下げて,質のチェックは第三者評価でやるとのことです。

p223
編集部
法科大学院の数を幾つにするかというようなことは,お考えになっているのですか。

佐藤
いえ,そういうことはありません。設置基準を満たせば自由に参入していただけるシステムを考えています。法科大学院の数を幾つにすべきかといったことは決して考えていないことは,誤解無きよう,はっきりと申し上げておきます。

井上
法科大学院の趣旨にふさわしい内容と質の教育が行われることを確保するために最低限の基準は決めますが,それさえ満たせば自由に設立できるということです

その上で,個々の法科大学院の創意と工夫によって,いろんな特色を出してもらいたい。うちはここに重点を置いて教育するんだ,他と違うこういう方法を取るんだ,といった形で,互いに競い合うことによって,全体としてレベルアップをしていってもらいたい,というのが基本的な発想ですから,法科大学院の趣旨をより良く実現しようとするものである限り,むしろ,自由に設立していただくことが望ましいと言えるでしょう

ロースクールの数をいくつにするか,という編集者の問いに対して,低いハードルである設置基準さえクリアすれば,無制限なので自由に参入してください,と強調しておられます。

井上先生も同意見で,自由な設立を推奨しています。

70校以上もロースクールが乱立したのは,大学に対する,このようなロースクール設立の推奨があったからこそなのでしょう。

ある種の権力を行使して現在のロースクール制度を作り,重大な結果を発生させているわけですから,腹を切ってお詫びをすべきでしょうせめて過去の過ちをごまかさずに受け止めて,真摯に反省すべきでしょう。

佐藤先生の著書「司法制度改革」を検討した弊ブログのエントリー

「法曹人口がどれくらいであるのが適切かは,本来,社会の需要やマーケットとの関係で決まる」,井上正仁,2002年 - タダスケの日記
http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20130608/1370652323

ロースクールが無用の機関と化した経緯,「司法制度改革,佐藤幸治,竹下守夫,井上正仁」 - タダスケの日記
http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20130609/1370744493