タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

「司法試験,年3000人合格どう見る」(横井朗教授,2012/11/26日経新聞)

――合格者数の目標は見直すべきですか。

慶応大法科大学院教授 横井朗氏
 「その必要はない。日本の弁護士は極めて少数でギルド(職業別組合)的な仕組みを作り上げ、安くて手軽なサービスを国民に提供してこなかった。それを変えることが司法改革の理念であり、手段のひとつが弁護士増員だった。今、その理念が現実になりつつある」

 「弁護士の就職難は当然のことだ。殿様商売でやっていけるなら、料金を下げたり、サービスを高めたりする動機が生じない。今は需要を掘り起こす過渡期だから、合格者は現状程度にとどめ、将来、三千人に増やせばよい」

日本経済新聞2012/11/26

弁護士になっても大変ということになれば,ロースクールを目指す人も減るだろうに。
何を言っているんでしょうかね,この人は。

自身が勤務するロースクールを守ろうという,愛校心というか,気持ちは分からなくもないですが,ロースクールにかかる火の粉を払っても*1,その火の粉が弁護士の方に行って火が付いたら,ロースクールも延焼するんですけどね。実質的に一体なので。

うそでもいいので,「弁護士は,これからもっと魅力的な職業になります。弁護士になるためにロースクールに入学してね。」と言うのがまともな人間の思考でしょう。

合格者数の増加(ロー生の不合格リスクの低減)と,弁護士のインフレ化防止は,二律背反するので,少々難しい問題ではありますが,推進派としても,共存共栄の道を模索するべきでしょう。

今は需要を掘り起こす過渡期だから

弁護士数が何年に比べて何年には何倍になるのに対して,事件数を,同じ期間で何倍にするので,弁護士1人あたりの事件数は何倍に増える(または減る),というようなシミュレーションをしての発言なのでしょうか?
それとも,例の「肌感覚」なのでしょうか?

日本の弁護士は極めて少数でギルド(職業別組合)的な仕組みを作り上げ、安くて手軽なサービスを国民に提供してこなかった。それを変えることが司法改革の理念であり、手段のひとつが弁護士増員だった。

司法制度改革の当初は,こんなことを言ってなかったはずです。
近い将来,需要が急増して,弁護士の増員をしなければ対処できない,増員が急がれることは明らかである,というようなことで,法科大学院制度を設立したはずです。

最初と事後で話が違うのは,何かと似ているかと思ったら,ボッタクリバーの理屈でした。

【ボッタクリバー】

客引き「飲み放題で3000円です。」

客「それなら入ろうか」

(飲食)

客「お会計をお願いします」

店員「15万円です。」

客「話が違う」

店員「これだけ飲んで3000円で済むわけないだろう。常識的に考えて。」

客「え〜〜〜」



法科大学院

推進派「需要が急増します」

法科大学院創設)

ロー生「需要が無くて,弁護士が就職難だ。話が違う。」

推進派「需要は少ない。就職難だ。しかしサービスを高めるためにはそうするのが当然だろ。常識的に考えて。」

ロー生「え〜〜〜」



こんな感じですね。

当初の見込みと違ったことについて,別のメリットを主張するのもなくはないですが,少なくとも当初と話が違ったことの弁明,弁解がまずはあるべきではないでしょうか。

*1:法曹志願者の激減に対し,ロースクール卒業生の司法試験,合格者数(合格率)を高めることで,不合格リスクの低減をアピールすること