タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

「予備校に行きたくない?」/ロースクールは答案作成指導すべき

予備校に行きたくない?

予備校講師「ロースクール生が3年と数百万円を費やして,実務にも試験にも役立たない授業に振り回されている間に,予備校生は数十万の費用で試験に直結する講義を受けて,予備試験に合格して司法試験受験資格をゲットできるわけよ」

僕「すごい」

講師「予備校に行きたくない?」

僕「行きたい」

講師「予備試験受けよう」

僕「予備試験受ける!」

元ネタ

教授「文系がせいぜい500万の車を女と乗り回してる間に、我々は2000万の遠心機を回せるわけよ」僕「すごい」 - Togetterまとめ
http://togetter.com/li/981493

ロースクールは答案作成指導すべき

桐蔭横浜大学大学院法務研究科法務専攻に対する認証評価(追評価)結果

2−5 授業内容の過度な司法試験受験対策への偏重

2013(平成 25)年度の認証評価結果において、「法律文書作成の要点(民事系)」及び「法律文書作成の要点(刑事系)」については、授業の一部に数年分の司法試験問題を使用し、答案を作成していることが認められ、授業内容が過度な司法試験受験対策に偏重していることから、授業内での司法試験問題の取扱いについては、教員間で申合せ等を行い、組織的な改善が必要であるとの指摘を行った。

この点に関しては、評価の視点2−1及び2−3において既述の通り、上記2科目は、2014(平成 26)年度に廃止され、これに代わって新たに開講された「法律文書作成」は、専ら実務において求められる法文書の作成を学修することを内容とするものであり、当該科目の内容が過度な司法試験受験対策に偏重しているとされた問題は改善されている。

また、授業内での司法試験問題の取扱いについては、教授会において、演習等で司法試験問題を使用する際は、事実認定、論点抽出、理論構成を修得させる目的において節度ある範囲内で使用する旨の申合せを行い、過度な司法試験受験対策に偏した教育は行わないよう組織的な対応が図られている。

http://www.juaa.or.jp/updata/evaluation_results/224/20160323_695009.pdf

以前,桐蔭ローが司法試験の問題を使用したとして,認証評価で怒られていました。

しかし,下記の憲法の問題を見てもわかるように,旧司法試験と異なり,現行司法試験の出題形式は奇形的なものに実戦的なものになっています。

このような特殊な出題形式に対して,2時間の試験時間の中で長文の問題を読んで,長文の論文を書くのには,なかなかに大変な作業であり,そのための訓練が必須です。

違う言い方をすると,いくらロースクールの授業を真面目に受けたとしても,論文を書く訓練をしていなければ,予備校などで訓練してきた他の受験生に差をつけられてしまうでしょう。

では,論文の訓練をどこでするかということになりますが,ロースクールで禁止されるということであれば,予備校なり合格者の卒業生を招いてゼミをしたりということになります。

このように,ロースクールの正規の授業内で「試験対策」を排除したとしても,結局どこかで試験対策はするわけです。
そうすると,どのように試験対策をするかという巧拙によって,合格しやすさが変わってくることになります。
重い経済的負担,時間的拘束を課していながら,「法曹養成ルート」外での努力も必要とするのは,ロースクール生に酷ではないでしょうか。

もっとも,各自の試験対策の巧拙によって差がつくいうことは,どんな試験にもあって,それだけならまだ許容しうるかもしれませんが,それにとどまらないケースも見られます。
要するに,脱法的な手段が取られているケースです。

たとえば,その年の1月に登録した弁護士1年生を,4月から非常勤講師として学生を指導させるケースなどが実際に見受けられます。

1月から3月までの弁護士経験のフィードバックが期待されている,とは到底思えませんし,端的に合格者による受験指導と言ってよいでしょう。

法の支配の理念をかかげ,法の光を信仰していながら,規制の抜け道を探すことに汲々としている,そんなロースクールが「高度の専門的な法律知識、幅広い教養、豊かな人間性及び職業倫理を備えた多数の法曹の養成」(司法制度改革推進法2条)をできるといえるでしょうか(反語表現)。

それよりも,ロースクールの授業の中で,節度を守りながら答案作成指導をして,「ロースクールの授業をきちんと受ければ合格できる」という評価を得た方がベターなのではないかと思います。

平成27年司法試験問題
http://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00113.html

論文式試験問題集
[公法系科目第1問]

〔設問1〕(配点:50)
あなたがBの訴訟代理人となった場合,Bの主張にできる限り沿った訴訟活動を行うという観点から,どのような憲法上の主張を行うか。(配点:40)
なお,市職員の採用に係る関連法規との関係については論じないこととする。また,職業選択の自由についても論じないこととする。
⑵ ⑴における憲法上の主張に対して想定されるA市の反論のポイントを簡潔に述べなさい。(配点:10)
〔設問2〕(配点:50)
設問1⑴における憲法上の主張と設問1⑵におけるA市の反論を踏まえつつ,あなた自身の憲法上の見解を論じなさい
http://www.moj.go.jp/content/001144527.pdf

参照条文

司法制度改革推進法
(基本理念)
第二条 司法制度改革は、国民がより容易に利用できるとともに、公正かつ適正な手続の下、より迅速、適切かつ実効的にその使命を果たすことができる司法制度を構築し、高度の専門的な法律知識、幅広い教養、豊かな人間性及び職業倫理を備えた多数の法曹の養成及び確保その他の司法制度を支える体制の充実強化を図り、並びに国民の司法制度への関与の拡充等を通じて司法に対する国民の理解の増進及び信頼の向上を目指し、もってより自由かつ公正な社会の形成に資することを基本として行われるものとする。
http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/hourei/1116suisinhou.html