少し前の投稿ですが,ヤフー知恵袋の投稿です。
法科大学院に進学することは、2000万円から2億円に相当する金銭的な機会損失を背負うことを賭けた、人間の人生を賭けた大勝負だと思います。 - Yahoo!知恵袋
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12107977267
法科大学院に入学してから,受験までの費用,また逸失利益が詳細に計算されています。
当時は,受験回数が3回制限(いわゆる三振制)だったので,3回不合格が「最悪」とされていますが,「五振制」の現在は,最悪の場合の金額はさらに多額に上るでしょう。
(もっとも,三振制においても,三振後にロースクールに入学し直す人もいたので,厳密には3回不合格が「最悪」とは限りませんでしたが)
詳細については,リンク先の元の投稿を見て頂きたいと思います。
法科大学院に進学するとかかる時間的負担
この投稿は経済的負担について検討されていますが,ロースクール入学に伴う負担として,さらにこれに付け加えて時間的負担も忘れてはならないでしょう。
人にもよりますが,毎日10時間といった勉強をする人も少なくないでしょう。
これを数年続けると,私生活に大きな影響が出てしまいます。端的に言えば,私生活で何もできなくなってしまいます。
もっとも,旧司法試験の時代でも,受験者は毎日長時間の勉強をしていたので,その意味では新制度になって急にこのようになったというわけではありませんが,ロースクール制度では,学部の一般教養と変わらない授業の単位も要求されてその授業,レポート作成で時間を取られますのでやりきれません。
さらに,「理論と実務の架橋」と称して,法廷教室を使うような実務色を取り入れた授業も行われますが,合格率20%強の試験を控えて,合格するかどうかの保証もないのに,学生は合格後のことにまで気が回らないでしょう。
率直に言えば,受験対策に専念したい(将来の)受験者に対する妨害要素でしょう。
このように,試験に役立たない事柄に時間を費やすことを要求され,ロースクールの理念に共鳴してまじめに授業を受ける者もあれば,単位だけを取る一方で時間の浪費は抑えてうっちゃろうとする者もいるでしょうし,また予備試験に逃げる者もいる,というのが現状でしょう。
このような状況は,禁酒法を施行したときのアメリカに少し似ているかもしれません。
昔のアメリカはなぜ禁酒法を施行したのですか? - Yahoo!知恵袋
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1453606889
理念が素晴らしいからと言って合理的でない制度を押し付けても,結局,人は闇に流れるだけで,規制を潜脱するような人間が利益を得る不公正,不正義が横行するのです。
そこで,ロースクール強制制度にどれだけ合理性があるか,学生に多大な経済的負担,時間的負担,(また不合格リスクもカウントできるかもしれません)を負って,どれほどのリターンがあるかと言えば,就職難と声高に言われているように厳しい状況です。
このような悲惨な状況で,どうして多くの有能な若者が法曹の道を目指すなどということがあり得るだろうか(反語表現)。
面白いジョーク
上記投稿とは何の関連もありませんが,最近面白いツイートを見ましたので紹介致します。
かなり以前、法科大学院の非常勤教員控え室で数名の教員と雑談していたとき、民事執行法担当の某先生が「授業初日に教科書見せて、はい、陳述します」って言って全部教えたことにしたいというすごく面白いジョークを述べ、他の教員もこれに激しく同調し、控え室は歓喜の渦に包まれたことがある。
— 高橋雄一郎 (@kamatatylaw) 2016年3月20日
これをもう一歩進めて,入学式で「入学します」と言ったら全単位を履修したことにして,司法試験受験資格を得られるようにしたら,そのロースクールは人気が出るのではないでしょうか。
<参考エントリー>
時が過ぎ、飛び級制度が拡充され、Kロースクールにおける未修者の所要期間は2年、1年、半年と短縮されていき、遂に所要期間はゼロ、つまり、入学試験合格により、すべての単位が認定されるようになった。
(入学式は、修了式を兼ねるようになった。)
http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20141112/1415804887