タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

そしてロースクールには誰もいなくなった

あるところに,法曹になりたい10人のインディアンの若者がいた。

10人のインディアンが,親に,ロースクールの学費を出してくれるように頼んだ。
1人のインディアンの親が,経済的な事情から学費を出せなかった。
インディアンは9人になった。


9人のインディアンが,新人弁護士の収入を調べた。
弁護士の経済的価値が,ロースクールの学費などに見合わないと考えて,1人のインディアンが,一般企業へ就職した。
インディアンは8人になった。

8人のインディアンが,隣接他士業の状況を調べた。
弁護士になるのはリスキーだが,法律には興味があると言って,1人のインディアンが司法書士になった。
インディアンは7人になった。

7人のインディアンが,通学するためのロースクールを調べた。
地方に在住する1人のインディアンは,通学可能な範囲内に,まともな合格率のロースクールがないので,ロースクールへの進学を断念した。
インディアンは6人になった。

6人のインディアンが,通学するためのロースクールを調べた。
社会人のインディアンの1人は,通学可能な範囲内に,働きながら通える夜間ロースクールがないので,ロースクールへの進学を断念した。
インディアンは5人になった。

5人のインディアンが,ロースクール進学を家族に相談した。
家族を持っている社会人のインディアンの1人は,弁護士になっても収入が下がることが見込まれる上,その収入も今より不安定になることを理由に,家族から猛反対され,現在の勤務先に留まった。
インディアンは4人になった。

4人のインディアンが,未修者合格率を調べた。
合格率が低いことから,未修者のインディアンの1人が,ロースクールのへ進学を忌避した。
インディアンは3人になった。

3人のインディアンが,ロースクールへ進学した。
1人のインディアンの在籍する学校が,廃校になった。
インディアンは2人になった。

2人のインディアンのうち1人が三振した。
その後,彼の消息を知る者はいない。
インディアンは1人になった。

1人のインディアンの若者が,ロースクールに残された。
彼は,在学中に予備試験に合格すると,直ちにロースクールを退学した。
ロースクールには,誰もいなくなった。


元ネタ

そして誰もいなくなった
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%9D%E3%81%97%E3%81%A6%E8%AA%B0%E3%82%82%E3%81%84%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%9F



〜その後のインディアンの若者たち〜

3人のインディアンが,司法試験に合格した。
修習が貸与制になり,1人のインディアンが,修習期間中の強制借金の負担に耐えられなくなり修習に行かなかった。
インディアンは2人になった。

2人のインディアンが,就職活動をした。
就職難のため就職できなかったインディアンが,弁護士登録をしなかった。
インディアンは1人になった。

残された1人のインディアンは,即独した。
彼は,会員を守ってくれない一方で,高い会費を取る弁護士会に疑問を持ち,若手の仲間と一緒に,新しい単位会を設立することを模索している。
今後,旧弁護士会からは,若手弁護士が誰もいなくなる……かもしれない。


あとがき

原作は,アガサ・クリスティの名作です。
古い童謡になぞらえて殺人が行われるという,見立て殺人の要素を含んでおり,その部分のパロディーです。