タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

再度,岡田和樹弁護士よりコメントを頂きました(弁護士に対する需要予測など)

前回のエントリーに対して,再度コメントを頂きました。
誠にありがとうございます。

拙ブログへの岡田和樹弁護士のコメントに対するコメント

本文
http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20130713/1373692567

コメント
http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20130713/1373692567#c


なお,コメントに対して,コメント欄で返答せずに独立のエントリーにしているのは,それなりに長文を書きますし,コメントに触発されて新しいことも書きますので,コメント欄に埋もれさせるともったいないからです。

それから,ブログ主が,コメントに対して返答するのは任意だと思っていますので,まるで返答義務があるかのような勢いで,返答を要求されると違和感があります。

仮に返答しなかったとして,それを読者が「不誠実だ」等と思えば,そのブログは評価されなくなるのであって,このように,そのやりとりの過程を見た読者の個々人が,発言の姿勢も含めて評価すれば足りると思います。
ブログ主は,何が何でも,質問に対する何らかの返答をしなければならない,ということはないと思います。

さらに,コメント自体が承認されないリスクは,書き込み時に承認制であることは分かっているはずですから,コメント書き込み者においてそれを承知で書いていただいていると考えています。

以下,頂いたコメントの全文です。

岡田和樹 2013/07/13 23:55
よく答えていただいてありがとう。あなたの考えはよく分かりました。最大の問題は、誰かが、需要を的確に予測できると考えていることだと思います。法曹人口抑制論者はみなそうです。どの程度の法律サービスの需要があるかを予測できると信じているのです。しかし、お上がしたそうした予測の多くは外れています。最近では、医者がいい例です。ましてや、弁護士が、自分で、法律サービスに対する需要を予測してどうするんですか。そんないい加減な予測で、他人の人生を決めていいのですか?あなたは、神様じゃありません。そんな権利はないでしょう。弁護士になりたいという人は、よほどひどい人以外は認めるしかないのです。食える食えないは、なった後で自分で決めることでしょう。
それであなたが答えていないことをもう一度聞きます。あなたがあった「困った人」は何人いるのですか?たまたま、一人か二人会ったからといって、「最近の弁護士はひどい」なんて言ってないでしょうね。それと、最近の弁護士で素晴らしい人にも会ってないです。私は、ロースクール出身ならではという人に、5人は会ってます。

「法曹人口抑制論者」という表現について

法曹人口抑制論者はみなそうです。

まず言葉の問題ですが,合格者を,その年に引退する弁護士数以下にいなければ,弁護士数は減りません。
ここ数年なら,引退見込みの弁護士は,年500人くらいでしょう。
ですので,合格者を500人以下にするという考えでなければ,「緩やかな弁護士増員論者」というのが正確でしょう。
これを,「法曹人口抑制論者」と言うと,まるで全体の弁護士数の減員を目指しているかのような印象操作されているみたいな気がしますので,念のためでした。


弁護士に対する需要予測について

次に,本題の,弁護士に対する需要予測です。

ごく単純に言うと,社会の需要の様子を見ながら,少しずつ弁護士を増やしていく道があったのではないか,と思います。

今後,予備試験を経由した弁護士が増えて,ロースクール経由の弁護士と,2種類の弁護士がいるようになります。

結果論ですが,このように法曹養成過程が不統一となってしまうのであれば,そもそも旧試験時代に,ロースクール(また,これ経由の弁護士)を実験的に少しずつ増やして,全体の弁護士数を漸増させて,需要とマッチするか,様子を見ていけば良かったのではないかと思います。

翻って現実に行われた司法制度改革を見ると,ロースクールを70以上も初めからドカンとぶち立てて,ハコモノを莫大な初期投資をして準備して,ということですので,もはや引き返すことができない,失敗は許されない,という体勢だったと思います。

(ところが大失敗して,ゼロベースで再設計しなおさなければならないのに,現行のロースクール制度に固執して,いずれ来たる大改革の時期を先延ばしにし,ロスが生じる期間を長くしているのが,ロースクール推進派なのですが,話がそれるのでここまでにします。)

これは過去の話でしたが将来の話に転じると,これも同じで,大まかな方向で言えば様子見をしながら少しずつ増減させていけばいいのではないでしょうか。

一定の時期に,今後5年,10年にわたる将来の弁護士需要について,「エイヤッ」とばかりに数字を決めるのに比べて,はるかに精度の高い需要の予測ができるでしょう。

なお,ここでも足かせになるのがロースクールです。
合格するかしないかも分からない段階で,補助金を投入し,また高い学費を徴収して学生を確保してしまっていますので,その卒業生の数=司法試験受験者数が固まってしまいます(というか責任が発生する)。
そうなると,何の投資も要らず,受験生の負担も軽い旧司法試験タイプの試験1本方式に比べて,合格者を増減させる調整が,やりにくくなってしまいます。

弁護士になりたいという人は、よほどひどい人以外は認めるしかないのです。
食える食えないは、なった後で自分で決めることでしょう。

ここで考える必要があるのが,弁護士増員論と,ロースクール制度との関係です。

単なる増員論であれば,ロースクールなどなくして,旧司法試験タイプの試験1本方式で,合格者を3000人にすればいいのではないでしょうか。
つまり,弁護士増員論は,必ずしもロースクール制度の必要性に結びつかないのです。

さらに極論すれば,資格試験などなくして,明日から誰でも「弁護士」と名乗れる制度にしてはどうでしょうか。
そうすれば,弁護士を飛躍的に増員させることができると思います。

このような「ロースクール不要論を前提とした弁護士(大幅)増員論」なら,なくはないかなあ,と思っています。
現在の「金はかかるが質は担保できない」という制度は,誰が見ても不合理だと思いますが,「金はかからず質も担保されない」というのなら,ある意味ではバランスがとれていると思います。

補助金,学費,と,いろいろな人から金を注ぎ込んで,やっとのことで弁護士を「製造」して,そのうちの少なくない人数が食えなくて淘汰されて消えてゆく,というのは,無駄と言うか,不経済でしょう。
ロースクール関係者は儲かるのかもしれませんが)

そんなことをするくらいであれば,司法試験で成績のふるわない下位の一部を,司法試験段階で「淘汰」すればいいのでは,と素朴に思います。
(どの順位をもって「下位」とするかと程度問題であり「エリート主義」を望むわけではありませんが。)

工場であれば,製造した品物が売れなければ,生産数を調整するは,普通のことだと思います。

製造に金のかからない,旧司法試験タイプの試験1本方式であれば,「大量製造」と「淘汰による自然減少」があっても,それなりに合理性はあるかな,と思います。

あなたがあった「困った人」は何人いるのですか?
たまたま、一人か二人会ったからといって、「最近の弁護士はひどい」なんて言ってないでしょうね。

私が会った「困った人」は,数百人とか,数十人という単位ではありません。
私も,仕事ではなくこのブログを書いているので,調査能力には限界があります。
だからといって,『「最近の弁護士はひどい」とは言ってはいけない』などど固いことは考えません。

そういう意味で,自分の主観を基にして気軽に発言しているわけですが,世の中に「最近の弁護士は素晴らしい」と思う人が多ければ,そういう人も,気軽に無料ブログを開設して,そのような発言ができますので,その意味ではフィフティーフィフティーだと思います。

また,このブログは特にアクセスを集める努力(例えば,twitterを開設して,「プログを更新しました」の告知をするなど)をしていませんので,このブログにたどりつくくらいの読者であれば,ネットリテラシーが高く,もっと多くの有名プログを読まれているでしょうから,このブログを読んだことで情報が偏る,という心配は無用かと思います。

私は、ロースクール出身ならではという人に、5人は会ってます。

それはそれで,素直に素晴らしいことだと思います。
国民にとって,良いことでしょう。

2000人も合格者がいれば,例外なく全員がダメなどということは当然なく,上位の者を中心に一部には良い人も少なからずいるでしょう。

もし,最近の弁護士の悪評について,一部の下位合格者が作り上げており,これが実態以上に拡大されて喧伝されている,というのであれば,それは増員賛成派が,そのようなアピールをして,誤解の訂正に努めるべき話かと思います。