タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

「法曹人口の拡大と法曹養成制度改革についての裁判官等の意見」判例時報2168号

司法制度改革についての議論がされていました。

p26
法科大学院は予備校化せざるをえず,法曹養成制度には制度的に致命的な欠陥がある。
文科省がそれを糊塗するために法科大学院を締め付ければ締め付けるほど制度として歪んでいく。
決して,良質の法曹は生まれない。

法科大学院は,司法試験に合格した人を法曹へ教育する場とするべきであり,早急に,法科大学院→司法試験ではなく,司法試験合格者→法科大学院というように順序を正すべきである
法科大学院の統廃合は社会資本を無駄にし,法曹への途をより狭くするだけで、良質の法曹を産むことにならない。(JOB)

これは,いい考えだと思いました。


結局,法曹志願者群から,弁護士をどうやって選抜するか,どの段階で数を減らすか,という話しだと思うのですが,

現在は,こんな感じ。

法曹志願者★★★★★
↓      
ロースクール★★★
↓      
弁護士★

ロースクール生(★★★)が弁護士(★)になるところで数を落としているので,弁護士になれなかったロースクール生(★★)にかかった税金が,まったく社会に還元されず,不可避的に膨大なロスが生じる設計になっています。



この提案のように,誰でも司法試験を受験できるようにして,司法試験段階で人数を絞れば(下図),上記のロスはなくなります。

法曹志願者★★★★★
↓      
弁護士★
↓      
ロースクール

もっとも,こうなると,司法試験だけ合格して,ローには行かず,弁護士にもならない人が出てくるかもしれません。
司法試験合格が一種のステータスとなって,自己の有能さを示せる一方,ローは学費が高いし,授業に意味がないので行かない,という人が出てきそうです。
そしてこうした人たちは,一般企業の法務関連の職に着きます。



ちなみに,ロースクール賛成派が判を押したように言うように,合格者を増やすと(下図),弁護士があぶれて価値が下がり,そもそも法曹志願者が激減するなど,法曹養成制度が根本的に壊れていくでしょう。
需給のバランスを無視しているので,この本質を何とかしない限り,どこかをいじっても別のどこかにひずみがでてくることになります。

法曹志願者★★★★★
↓      
ロースクール★★★
↓      
弁護士★★★


もう1つ,面白かったのが次の意見。

p26
資格試験に過ぎない司法試験の受験に,金のかかる法科大学院を経なければならないとする合理的理由はない
この制度では幅広い分野からの人材を確保できない。(JOB)

その通りすぎて,何も言えません。
ロースクール賛成派は,プロセスだと理念だといろいろ言いますが,司法試験は資格試験である,という本質に立ち返れば,その前に金のかかる関所を設ける合理的理由はありません。

ロー修了を受験要件とせず,ロースクールは任意機関として存続させて,行った方が司法試験を突破するのに有利と思った受験者が行く,というものにすればいいでしょう。

逆に,あれだけ手間暇のかかるロースクールを強制するというのであれば,卒業したら原則として(99%くらい)弁護士資格を与える,といったような,司法試験の資格試験という本質を否定するくらいの制度に変えなくては,その合理性が認められないと思います(それが妥当か否かは別として)。

資格試験であってもプロセスがうんぬんというのなら,そろそろ弁護士をいじめるのはこれくらいにして,ロースクール司法書士行政書士にも食指を伸ばしてくれないかと,個人的には思っています。