タダスケの日記

ある弁護士の司法制度改革観察記録

法曹養成制度検討会議第6回,和田委員提出意見(平成24年12月25日開催)

和田委員提出意見です。

和田委員提出意見
http://www.moj.go.jp/content/000105359.pdf

中教審のワーキンググループが考えているような共通到達度確認試験を導入した場合には、教員も学生がその試験でよい点を取れるような授業を行わざるを得ないようになるであろうし、その限りで試験対策も行われるようになるであろうから、私としてはその案に賛成したいと思う。

「共通到達度確認試験」って,具体的にどういうものなんでしょうかね。
「到達度」というと,「アチーブテスト」を連想しますが,感覚的には,ものすごく簡単な択一でしょうか。

「過失により意思表示をした者は,錯誤無効を主張できる。・・・○」

こんな感じでしょうか。

レベルがあれなのはともかく,仮にこうした試験を設けるとしたら,この「共通到達度確認試験」で一定の成績を修めた者には,司法試験受験資格を与えるというようにすべき,つまり予備試験の代替とすべきということになるのではないでしょうか。

つまり,この試験で,法科大学院修了と同等の実力があると認められれば,そうした者に司法試験受験資格を与えることが理屈としておかしくはないことになります。

もっともそうなると,司法試験受験資格が容易に得られることになり,法科大学院制度が崩壊するのが必至なので,実際には抵抗に合って導入されないでしょうけれど。

しかし,プロセスによる教育と言いながら,結局「点」(試験)により学生の修得度をチェックする,という流れにはなるわけですね。

法曹養成制度検討会議 第4回会議 議事録,P11
○和田委員
他方で,学生としては,学者教員の科目の単位も取得しないといけませんので,司法試験対策や実務にも直結しないような中間試験,期末試験の過去問を研究して,何とか留年しないように気をつけなければならない,という状況にもあるわけです。
http://www.moj.go.jp/content/000104976.pdf

第4回の議事録の和田委員の発言部分ですが,ロースクールの実態について,皮肉と言うか,反論されにくい様な形でさりげなく言及されているな,と思っていました。

つまり,プロセスによる教育といっても,現状は,結局は中間試験,期末試験というペーパーテスト,「点」によって,習得度をチェックしているわけですし,学生はこれに対応して,「点」への対策のための努力をするわけです。

(レポート試験(自宅への持ち帰りの試験)によって,記憶ではなく理解をチェックするような試験もありますが,一般教養的な科目を中心として全単位の中の極一部です。)

ここだけを見れば,旧試験への対策のために勉強していた旧試験受験生と,やっていることの質としては変わらないわけです。

この点は,ロー反対派の論拠として明確に指摘しているのを私は見たことがありませんが,明確でなくとも皆さん薄々は感じていて,「言っている理念とやっていることが違う」という反感につながっているのだろうと思います。

そして,ペーパーテストという「点」が導入されるということになれば,その「点」さえクリアすればプロセスは省いてもいいだろう,という「コスト削減論」が,プロセスを経るのにコストがかかる以上は必然的に出てくると思うのです。

対するロー推進派としては,プロセスにコストがかかるというハンディキャップを負っている以上,同じだけの教育効果しか証明できなければ,一発試験制度に負けるわけでして,イーブン以上に教育効果が上がることを説得的に論じなければならないわけです。

それにも関わらず,「理念」だ,「本道」だと雲をつかむような抽象論を繰り返し,適性出願者9割減少には決して触れようとせず,あまつさえ弁護士を叩くという自らのところの卒業者の首を絞めるという「誰得」な暴挙を繰り返しているので,「今日の会場はここですか」とヲチ対象となっているのです。